◎ 2022年9月に電波法が改正され、Wi-Fi用の電波周波数帯として6GHz帯が認可された。それに伴い、ネットワーク機器ベンダー各社がWi-Fi 6Eに対応する無線LANルーターを発売している。
Wi-Fi 6Eは、Wi-Fi 6の拡張規格である。速度や通信の仕組みなどは従来のWi-Fi 6と変わらないが、新たに6GHz帯の周波数を利用できる。6GHz帯は5GHz帯や2.4GHz帯よりも多くのチャネルを確保できる。このため複数のチャネルを束ねて高速に通信するチャネルボンディングを活用しやすい。
今回、取り上げるバッファローの「WNR-5400XE6」もWi-Fi 6Eに対応する無線LANルーターの1つだ。5GHz帯と2.4GHz帯に加えて6GHz帯に対応し、3つの周波数帯を同時利用できる。最大通信速度は5GHz帯と6GHz帯は2401Mbps、2.4GHz帯は573Mbpsである。Wi-Fi 6やWi-Fi 6E対応のパソコンの多くは最大通信速度が2.4Gbpsなので、その性能をフルに生かせることになる。
WNR-5400XE6のきょう体の大きさは、幅75×奥行き140×高さ217mmだ。有線LAN端子は合計4個あり、すべて下向きである。端子部分にはカバーが付いている。端子や接続したケーブルを隠せるし、ケーブルが前後左右に出ることもない。ちょっとしたスペースに配置しやすいと感じた。有線LAN端子のうちWAN側の端子は2.5GBASE-Tの規格に対応する。IPv6 IPoEによる接続にも対応しており、対応プロバイダーでは回線接続の設定なしで接続できる。
Wi-Fi 6やWi-Fi 6Eに対応する無線LANルーターは比較的大型の製品が多い。しかしWNR-5400XE6はそれらと比べると小さいと感じた。またアンテナを内蔵することで突起がなく、小さい子供やペットがいるような家庭でも安心して使えそうだ。6GHz帯は波長が短いため、従来の2.4GHz帯や5GHz帯と比べると通信距離が短いという弱点がある。その弱点を内蔵アンテナの配置方法を工夫することで補っているという。
WNR-5400XE6はケーブルのコネクターを隠すので、周囲がすっきりする。本体色は白色なので、リビングや玄関などに設置しても目立たないのもよい。端子部分のカバーは壁掛け用の器具も兼ねており、背面に付け替えることで壁掛け設置も可能だ。
ルーターの移行も楽々。
WNR-5400XE6の設定画面はWebブラウザーで開ける。設定画面はシンプルで分かりやすく感じた。スマートフォンやタブレット向けの設定アプリである「StationRadar」もある。面倒な設定作業をスマートフォンアプリだけで完結できるのはうれしい。
StationRadarには「スマート引っ越し」という機能がある。これまでに使っていた無線LANルーターの設定を、クラウドサーバーを経由して新しく設置したルーターに移行する機能だ。従来の引っ越し機能ではWi-Fi設定しか移行できなかった。しかしStationRadarのスマート引っ越しはインターネットの接続設定やMACアドレス制限、ファイアウオールなどの設定などほとんどの設定を移行できる。購入時の再設定はほぼ不要だ。ただし引っ越し元として指定できる無線LANルーターはバッファロー製で、StationRadarに対応する機種に限られる。
WNR-5400XE6を複数台用意しメッシュネットワークを構築することで、電波の届く範囲を広げられる。無線LANでメッシュネットワークを構築するための標準規格「Wi-Fi EasyMesh」に対応し、同規格に対応する他社製ルーターと組み合わせた利用も可能だ。メッシュネットワークを組んだ状態で出荷する2台セットの「WNR-5400XE6/2S」も販売されている。メッシュネットワーク利用時は、各無線LANルーターと端末の接続でのみ6GHz帯を利用可能だ。無線LANルーター同士の接続は5GHz帯か2.4GHz帯のみ利用できる。ただしメッシュネットワークから中継器接続に切り替えれば、無線LANルーター同士の通信に6GHz帯を利用可能だ。
法整備は進んだものの2022年12月中旬現在、Wi-Fi 6Eの6GHz帯を利用できる子機は少ない。Wi-Fi 6Eに対応するパソコンやスマートフォンは2021年あたりから多くの製品が販売されているものの、それらは日本国内で6GHz帯に対して技術基準適合証明(技適)を新たに取得しなければならない。メーカーが既存の製品に対しても技適を取得し、ソフトウエア更新などでその機能を提供しない限り、6GHz帯は利用できない。Wi-Fi 6E対応をうたうパソコンやスマートフォン、タブレットでも、そのような機種だと6GHz帯のアクセスポイントは表示されないので注意したい。Wi-Fi 6Eを使うつもりで新たにパソコンやスマートフォン、タブレットを購入するときは、Wi-Fi 6Eで6GHz帯を利用できるかどうかをメーカーに確認したほうがよいだろう。
利用者が少ないうちは快適。
一般に無線LANの通信は、周囲の電波状況や利用者数の影響を受ける。現時点では6GHz帯を利用しているユーザーは少ないため、高速な通信速度が期待できる。では、どれだけの通信速度が出るのか測定してみた。
WNR-5400XE6/2S(WNR-5400XE6を2台)用意し、1台を中継器モードに設定して無線LANルーター同士を6GHz帯で接続。その間の通信速度を測定した。双方のWAN端子に2.5GBASE-Tの有線LANでパソコンを接続。片方のパソコンには簡易Webサーバーを構築し、「LibreSpeed」(https://librespeed.org/)で計測ページを設置した。もう一方のパソコンからWebブラウザーで開き、無線LANルーター間の速度を測定している。2台の無線LANルーターは日経BPオフィス内の見通しのよい場所に設置し、その距離は10mとした。比較対象として5GHz帯で計測した結果も掲載する。
測定の結果、6GHz帯の通信はとても高速だった。ダウンロードとアップロードのどちらも通信速度が1.5Gbpsを超えた。Wi-Fi EasyMeshを5GHz帯で構築した場合に比べ3~4割速かった。
WNR-5400XE6はWi-Fi 6Eに対応する無線LANルーターながら小型かつシンプルなデザインが魅力だ。ケーブルを目立たなく設置できるのもよい。設定画面もシンプルで設定しやすく、同社製の無線LANルーターであれば引っ越し機能も便利である。またWi-Fi 6Eの6GHz帯の通信速度も現時点では高速。Wi-Fi 6E対応の無線LANルーターを導入する価値は十分にあると思った。
ただ、気になるのは端末の6GHz帯の対応だ。現時点では利用できる端末が少ない。もしWi-Fi 6Eの6GHz帯を利用できる端末を所持しているなら、今すぐにでも導入する価値はあるだろう。