〇 新型コロナウイルスの影響で企業の働き方は大きく変わった。感染防止対策としてテレワークが奨励され、必要な機材を揃えたり、ウェブ会議システムを導入したりと多くの企業がリモートワークに向けた環境整備に取り組んだ。働く場所がオフィスを前提としなくなり、大きな課題となっているのが各社員のPC環境だ。
各個人の住居から社内のイントラネットにアクセスするため、セキュリティや通信負荷などの問題に企業が頭を悩ませ、多くの課題が発生した。今も続くリモート環境下で発生した失敗事例からニューノーマル時代にふさわしいPC環境の在り方を探る。
テレワークへの転換の際に失敗する３つのケース。
新型コロナウイルスの感染拡大時に多くの企業が従来のオフィス通勤を控え、テレワークへと切り替えた。その際に大きな壁となったのは、自宅で作業をする場合に各社員の仕事用のPC環境をどう構築すべきかということだった。従来はオフィスに通勤して社内ネットワークに接続された端末で仕事をすることが当たり前だったため、回線やセキュリティは会社側で完全にコントロールできていた。しかし、各社員の自宅でそれらを担保して効率的に仕事をするには、多くの技術的課題を乗り越える必要がある。
失敗するケースの１つめは、既存のVPN回線で社内イントラネットと自宅PCの回線を結んで作業環境を確保しようとする方法だ。従来からの設備を用いるため、設備投資を節約できる点は大きなメリットとなる。しかし、多くの企業のVPN回線は出張者や地方支店との連絡といった限られた場合にだけ活用を想定している。テレワークで膨大なアクセスが集中すると帯域が不足してしまい、うまく接続ができずに仕事に支障をきたしてしまうケースも多い。設備投資をして増強することは可能だが、それでもセキュリティ面への懸念はつきまとう。社員の自宅回線がなんらかの形で攻撃されてしまうと、その後VPN接続された社内のイントラネットまで影響が波及してしまう。ある企業ではリモートワーク中の1人の社員の不注意で業務が一日止まってしまったケースもあった。
２つめは、複数の企業向けクラウドサービスを導入して乗り切ろうとするケースだ。ファイル共有や事務手続きなどをオンライン上で完結させることで、社内回線を通さずに、直接自宅回線から作業ができる。さまざまな事務手続きが簡素化されることで大幅な生産性向上が期待できる効果も大きい。ところが、社員の中には導入したサービスを使いこなせないものもある。社員個人の判断で自身の使いやすいSaaSを勝手に導入してしまってコントロールしきれなくなる事例も見受けられ、セキュリティ面で危険なクラウドサービスを導入する可能性もある。
３つめは、仮想デスクトップ（VDI）による作業環境を構築する手法だ。会社内にあるオンプレミスのパソコンやサーバーをコントロールできるため、セキュリティ面をクリアでき、通常のオフィスにあるパソコンと同じように作業できる。ただ、サーバーなどの設置に大幅な固定費がかかるため、先行きが見通せない状況下で設備投資に見合う導入メリットがあるかどうかは不透明だ。
では、どの企業も安心して扱えるソリューションとはどのようなものだろうか。
テレワーク下でのセキュリティを担保するソリューション「DaaS」。
従来のVDIの課題を解消したクラウド型の仮想デスクトップ「DaaS（Desktop as a Service）」が企業の注目を集めている。
シトリックス・システムズ・ジャパン ソリューションセールスエンジニアの白川 晃 氏は、「テレワークに必要なPC環境で考えるべきはセキュリティと運用面での柔軟性です。セキュリティのプロではない社員の方々が扱うことができ、会社の体制に合わせて柔軟に運用できるDaaSがソリューションとなります」と指摘する。DaaSとは、業務PCのデスクトップをクラウド上に構築し、ネットワークを通じてアクセスできるサービスを指す。ユーザーが手元で操作する個人端末には、キーボードやマウスの操作情報とクラウド上の業務PCからの画面情報だけが交換されるので、業務環境と自宅を安全に分離することができる。
従来のVDIではオンプレミスのサーバーを設置して社内で管理することになるため、大規模に導入をしなければ、1ユーザーあたりのコストがかなりかかる。一度設置してしまった場合に後から性能を足したり、引いたりすることも難しい。ある導入事例では4000人規模のシステムを構築したものの、100人程度しかユーザーが利用せず大幅なロスとなってしまったケースもある。利用環境にぴったりと合致した環境を構築・運営するのは難しいのだ。
DaaSの場合、企業側が仮想デスクトップに必要なサーバーなどを自社で用意する必要がないため、高度な技術や大規模なコストがかからない点が大きなメリットとなる。企業側は社員の増減であったり、テレワーク体制の変化であったりといった社内事情に合わせて、サービスを継続するかどうかを決めることができる。クラウド上にデータがあるため、セキュリティ面でも各社員のミスなどでランサムウェアなどに侵される危険性も抑えることができる。
しっかりとサービスを提供する企業を選べば、PC環境を取り巻くさまざまな危険性やコストを抑えることができる。ただ、多くの企業がサービス提供を始めており、企業側は慎重な選定が求められる。
「DaaSのサービスを提供する事業者は増えつつあります。長短があるため、その中でいかに自社に合ったソリューションを探すかが重要です」と、白川氏は警鐘を鳴らす。
セキュリティ面で安心できるシトリックス・システムズの「Citrix DaaS」。
DaaSを提供する事業者は近年、拡大傾向にある。ただ、DaaSを導入するときに注意すべき点はユーザーである企業の細やかなニーズにどう応えることができるかにある。企業ごとに違うセキュリティ環境やほかのサービスとの連携などに応えてオフィスと同等の環境を用意できなければ、テレワークでの生産性向上は実現できない。
世界中でサービスを展開するシトリックス・システムズはオンプレミスVDIを含めると、30年以上前から仮想デスクトップのサービス提供に取り組んできた実績がある。ユーザー企業がどこで躓き、何を求めているのかを時代の変化に合わせてノウハウを蓄えてきた。
「我々が提供するクラウド型仮想デスクトップ『Citrix DaaS』は、長年の経験に基づいてセキュリティ面で安心して扱えるサービスをきめ細やかに用意しています。ユーザーの操作性にも気を配ってオフィスと同じように仕事ができる環境を構築しています」
Citrix DaaSは、各企業がこれまでに構築してきたPC環境を踏まえて、新たに導入してもスムーズに仕事ができる体制を提供する。社内で設置しているデータセンターや外部のクラウドサービスなど様々な場所にあるデータに、DaaSでそれぞれアクセスできるかどうかを調整することができ、各企業の秘密保持対策などに合わせて対応可能だ。
セキュリティ面でも自宅にある端末からコピーしたクリップボードのデータを業務アプリケーションにペーストはできるが、業務PCのデータをコピーして、自宅のパソコンにペーストすることはできないなどといった細かいポリシーを選択できる。オフィス内の社用PCと同じ緻密さで情報漏洩を防ぐことができる。マルウェア対策にも気を配り、自動検出するだけでなく、社員がリスクの高い操作をしたり、日常と違う端末やアプリの使い方を自動検出したりして人的ミスによる侵入も防ぐ。
「こういったサービスをうまくコントロールすれば、職場や喫茶店、自宅とどんな環境からであっても、セキュリティを万全にして業務に臨むことができます」（白川氏）
スモールスタートで、素早くテレワーク環境を整備可能。
Citrix DaaSの導入には手間がかからないため、素早く業務効率が大幅に向上した事例が数多い。
例えば、新型コロナウイルスの流行時に米国のある信販会社のコールセンターでは感染症対策で人がオフィスに来られない上に、電力障害で施設がダウンして業務ができなくなるという状況に追い込まれた。米国のシトリックス・システムズは相談を受け、問い合わせの窓口などをリモート化する仕事にとりかかった。DaaSを導入し、それぞれのスタッフが自宅で対応できるようになるまで1ヶ月以内で構築できた。
「Citrix DaaSはすぐに活用ができ、誰もが扱えることができるテレワークに適したソリューションです。社内のIT担当者や経営者らが苦労せずに、誰もがリモートワークのメリットを享受できるようになります」（白川氏）
数十人程度のチーム単位でもCitrix DaaSは導入でき、徐々に全体の組織に広げていくスモールスタートも可能になる。セキュアに生産性を高めながら、柔軟に働ける組織づくりにおいて有力な選択肢の一つとなるだろう。
