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実機テストで分かった「Wi-Fi 7」の実力、制限付きでも驚異のスピード。

〇 Wi-Fiの次世代規格であるWi-Fi 7ことIEEE 802.11beは現在、2024年12月の規格制定を目指している。

規格案(ドラフト)は既に公開されており、それに準拠したWi-Fi 7対応のWi-Fiルーター「Deco BE85」(ティーピーリンクジャパン)が2023年9月末に発売された。先日このDeco BE85を使用してWi-Fi 7接続時の速度テストをしたので、今回はその結果を紹介する。

ティーピーリンクジャパンの「Deco BE85」(実売価格は税込み7万500円程度)は、Wi-Fi 7に対応するWi-Fiルーター。2個パックもある(実売価格は税込み12万9300円程度)。今回は2個パックを利用してWi-Fi 7の速度を測定した
画1、ティーピーリンクジャパンの「Deco BE85」(実売価格は税込み7万500円程度)は、Wi-Fi 7に対応するWi-Fiルーター。2個パックもある(実売価格は税込み12万9300円程度)。今回は2個パックを利用してWi-Fi 7の速度を測定した。

法規制があり国内ではまだフルスピードを出せない。

Wi-Fi 7はWi-Fi 6Eをベースに、通信の変調方式に4096-QAMを採用し、Wi-Fi 6Eの1024-QAMより高密度化。最大帯域幅をWi-Fi 6Eの最大160MHzから最大320MHzに拡大し、通信速度の大幅向上を図っている。

Wi-Fi 7の規格上の最大速度は46Gbpsで、9.6GbpsのWi-Fi 6EやWi-Fi 6の4倍以上となる。またWi-Fi 7ではMU-MIMOの同時接続台数が増え、1ユーザーに複数のRU(ResourceUnit)を割り当てる「Multi-MU」を採用することで、複数台接続時の通信効率も向上している。

Wi-Fi 7の新機能のうち、注目すべきは「マルチリンクオペレーション」(以下、MLO)という機能だろう。Wi-Fi 6Eまでは、6GHz帯、5GHz帯、2.4GHz帯の3つの周波数帯を利用できる環境でも、どれか1つを選んで接続する仕組みだった。これに対してMLOは、複数の周波数帯に同時接続することで速度や安定性の向上を狙う。

Deco BE85を販売中のティーピーリンクジャパンは、Wi-Fi 7の解説ページを開設している
画2、Deco BE85を販売中のティーピーリンクジャパンは、Wi-Fi 7の解説ページを開設している。

今回テストしたティーピーリンクジャパンの「Deco BE85」は、Wi-Fi 7が利用する6GHz帯、5GHz帯、2.4GHz帯の3つの周波数帯を利用でき、製品仕様によると最大速度は6GHz帯が11520Mbps、5GHz帯は8640Mbps、2.4GHz帯は1376Mbpsとなる。

ただし日本国内では現在、法律の都合で320MHzと240MHzといった160MHz超えの帯域幅を利用できない。そのため、現在国内で販売中のDeco BE85は、ファームウエアで帯域幅が最大160MHzに制限されている。この場合の最高速度は、6GHz帯が5760Mbps、5GHz帯が5760Mbps、2.4GHz帯は1376Mbpsとなる。Deco BE85は、日本の法整備が完了後、ファームウエアの更新で160MHz超えの帯域幅に対応する予定としている。

搭載している有線LANポートがかなり豪華。

Wi-Fi 7の速度を生かすためか、Deco BE85が搭載している有線LANポートはかなり豪華だ。10GBASE-Tに対応のものが2つ(うち1つはインターネット側のポートや後述するSFP+ポートと兼用)、2.5GBASE-Tに対応するものを2つ備えている。上記のSFP+ポートは、通信モジュールを挿して使うもので、別途モジュールを用意すると光ファイバーを使った通信が可能だ。

またDeco BE85は、メッシュネットワークに対応している。従来のメッシュネットワークの場合、各Wi-Fiルーター間の接続は有線またはWi-Fiのどちらかに限定されていたが、同社のWi-Fi 7対応の「Decoユニット」間の機器同士に限り、Wi-Fiと有線を束ねて高速化もできるとしている。メッシュネットワークの構築は、初期設定中に2台目以降のWi-Fiルーターの電源を入れるだけで簡単に済ますことができ、今回のテスト環境も簡単に構築できた。

(撮影:スタジオキャスパー)
画3、Deco BE85の背面。Wi-FiルーターでSFP+モジュールを利用できるのは目新しい。

実測で4Gbps超をマーク、新機能MLOの効果は絶大だった。

新しいWi-Fiの規格が登場すると気になるのはやはり速度だろう。今回は、ティーピーリンクジャパンからDeco BE85を2台借用し、Wi-Fiルーター2台によるメッシュネットワーク環境下で、Wi-Fi 7の通信速度を測定した。

Wi-Fi 7のスピードを測定するためには、10Gbpsのネットワークカードを搭載したPCも必要になる。今回は、10GBASE-Tのネットワークカード「LGY-PCIE-MG2」(バッファロー、実売価格は税込み9160円程度)を装備した2台のデスクトップPCを、2台のDeco BE85にそれぞれ接続。うち1台に、Webサーバーの「Apache HTTP Server」を導入し、そのWebサーバー上に「LibreSpeed」というベンチマークページを構築した。このベンチマークページを、もう1台のデスクトップPCのWebブラウザーから開き、通信速度を測定している。Wi-Fiルーター間の距離は約7mとした。

比較対象としてスピードを測定したWi-Fi 6Eは、上記で説明した2台のPCのうちベンチマークページにアクセスする方のPCとして「ThinkPad X1 Extreme Gen 5」(レノボ・ジャパン)を使用し、これをWi-Fi 6EでDeco BE85に接続した。Wi-Fi 5に関しては「ThinkPad X1 Carbon Gen 7」(レノボ・ジャパン、IEEE 802.11ac Wave2に対応)を同様の形で使って測定している。有線LANに関しては、2台のデスクトップPCをカテゴリー8ケーブルで直接つなぎ、設定で通信に用いる規格を変えて測定した。

テスト方法の概要
画3、テスト方法の概要。

以下のグラフはスピードテストの結果である。Wi-Fi 7はLibreSpeedのテストだと最大4027Mbpsの速度が出ており、同環境下で5GBASE-Tの有線LANよりも高速だった。Wi-Fiでこの速度は驚異的だと言える。Wi-Fi 6E(6GHz帯)は2012Mbps、Wi-Fi 5(5GHz帯)は1383Mbpsだったので、前者からは約2倍、後者からは3倍以上の速さという結果だった。

MLOの効果を調べるために機能をオフにして測定したところ、速度は低下したがそれでも3011Mbpsが出ており、Wi-Fi 6E(6GHz帯)よりも高速だった。MLOをオンにすることで3割以上も速度が向上したことになり、その効果は絶大と言えるだろう。

Webサーバー上に「LibreSpeed」というベンチマークページを構築し、そこにもう1台のデスクトップPCからアクセスして速度を計測した結果
画4、Webサーバー上に「LibreSpeed」というベンチマークページを構築し、そこにもう1台のデスクトップPCからアクセスして速度を計測した結果。

ファイルコピー時間も大幅短縮。

次に、ファイルコピーにかかる時間を調べた。M.2接続のSSD上に共有フォルダーを作り、デジタルカメラで撮影した300個のRAWファイル、総容量約9.25GBのファイルを用意し、共有フォルダーにコピーしたときの作業時間を計測した。

Wi-Fi 7の環境下でファイルコピーにかかった時間は46秒で、こちらも5GBASE-Tの有線LANよりも高速。Wi-Fi 6Eから20秒以上、Gigabit Ethernetの有線LANと比べると40秒以上も速い。こちらもMLOをオンにすると8秒短縮したことから、効果はかなりあるとみられる。複数ファイルのコピーによる速度低下も、テスト結果からは観測できなかった。

300個、総容量9.25GBのファイルコピーにかかる時間を調べた結果
画5、300個、総容量9.25GBのファイルコピーにかかる時間を調べた結果。

そのあと、ストレージのベンチマークソフト「CrystalDiskMark」(hiyohiyo氏作)を使い、共有フォルダーのシーケンシャル読み出しの速度を測定した。その結果、MLOありで576MB/秒、MLOなしでも467MB/秒を記録した。Wi-Fi 7だと、PCの内蔵でSerial ATA接続のSSDを読み出すのとあまり変わらない速度で通信できてしまう。

「CrystalDiskMark」を使って、共有フォルダーのシーケンシャル読み出しの速度を測定した結果
画6、「CrystalDiskMark」を使って、共有フォルダーのシーケンシャル読み出しの速度を測定した結果。

これでまだ最高速度ではないところがすごい

ここまで紹介したように、Wi-Fi 7はWi-Fi6EやWi-Fi 6よりも圧倒的に速いというテスト結果になった。今回はテスト環境の都合で距離は7mと近い状況だったが、5GBASE-Tの有線LANより高速だった。日本の法律の都合で帯域幅が半分になっていることを考慮すると、この制限が無くなると10GBASE-Tの有線LAN並みの速度が出るのでは?と思ってしまう。

ここまで高速であれば、10Gbpsのインターネット回線を利用している家庭や職場には、先行投資として導入するのもありだろう。ただし高速過ぎるゆえに、Wi-Fi 7の速度を生かせる状況はかなり限られる。また、家庭内においてファイルコピーで活用するにも双方に高速なSSDが必要になるなど、敷居はかなり高いと感じた。

なお2023年10月下旬現在、Wi-Fi 7に対応するPCやスマートフォンは日本国内では販売されていない。そのため、現状でWi-Fi 7を利用できるのは、Wi-Fi7対応のWi-Fiルーター同士の接続に限られる。テスト結果を眺めていると、Wi-Fi 7に対応するPCやスマートフォンが無いのが悔しいとすら感じてしまう。それらが市場に出回り、Wi-Fi 7の速度を生かせる環境が数年後にやってくると思うと今から楽しみだ。


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