この絵が、好きなんです
この画家が、好きなんです
この画家を知ったのは
まだ、子どもの頃で
学校帰りに、父の書斎に
潜り込んでいた時です
まんが本は、だめ
買って貰えないから
テレビも、昼間は
休みだったりした時代
テストパターンってやつ❓
まあ、そんな時は
放送再開の合図だけど
その前には
ざあ〜っざあ〜っ
雑音、雑画面👎
仕方ないな
でも、とうさんが帰って来るまで
まだ、時間がある
にいちゃん、ねえちゃんも
いないからね
かあさんは、和裁の内職
さあ、潜り込むか
百科事典は、端から読んだ
子ども向けの日本史
それぞれ、冊数はいっぱい
たまに、文庫本
小説とか、詩集とか
ちょっと、字がむずい
古典は、もちろんむずい
いちばん、好きなのは
世界地図だったな
世界を覚える
まだ、植民地だらけだった
そんな世界地図だ
でも、次は美術全集
結構、立派なやつ
とうさんは
画家になりたかったらしい
手先の不器用なおまえには
縁のない話だけど
でも、絵を観るのは
好きだったな
字が、無いのが
何と言っても、良い❣️
面倒く無い👍
結構、夢中で見たな
それで、隅っこの隅っこ
この画家の絵だ
「大工ヨセフ」ではない
少年が、ひとりで
蝋燭の炎に
手をかざしている
血管迄、透き通るような
指、指先
ただの写真だから
しかも、小品の写真だから
凄く、小ちゃかった思う
でも、魅かれてしまった
魅入られたと言う、感じ❓
ずっと、忘れられなくなった
なんでか、分からない
蝋燭の炎に
吸い込まれそうな
おまえがね
何度も、何度も
小ちゃな写真を
見返していた
来る日も、来る日も
見返したかも知れない
ずっと、ずっと
忘れなくなった
もちろん、行ったよ
その絵じゃ無いけど
「大工ヨセフ」が
日本に来た時にはね
それで、おまえは
少年だったイエスに並んで
蝋燭の炎に
呑み込まれていた
かも知れないな…