二百米にも満たない
低山だけどね
もう、小学校六年生だ
低学年みたいには
しょぼい道は辿らない
まあ、おまえは
しょぼい子どもだったけど
友だちは、足も速い
運動も得意
勉強も出来る
何もかも出来る
性格も温厚
転校して来たばかりで
まだ、馴染めてなかったはず
それでも、みんなとそれなり
おまえとは、違うね
おまえは、何もかも
だめのオンパレード
ただ、そうなると
余計に、負けたくない
しょぼいおまえが
しょぼくないおまえ
そうなるには
しょぼくない友だちに
勝つしかなかった
いや、勝てる訳ないけど
せめて負けない
それだな、それしかない
おとこ坂とおんな坂
おんな坂は、普通の山道
山をループして登る
でも、おとこ坂は
坂じゃなかったな
いくら、チンケな
地元のど低山でも
崖だからね
山道じゃなくて
ただの崖
ずっとじゃないけど
かなり、這うように登る
友だちは、徒競走は
いつも一番タイプ
おまえは、と言うと
びりににはならない
要は、その他大勢
優等生、かけっこ一番を
しょぼいその他大勢が
必死で追い縋る
崖を這い上る
友だちは、余裕で
おまえ、ただ必死
そんな山登りだったけど
何とか、頂上に辿り着く
まだ、午前中だった
水筒で、ほっと一息
赤松の巨木が覆う
そんな頂上には
社があった
上社と言うやつか
麓の神社ほどじゃないけど
それなりの社
麓の辺りには
大昔に
渡来人が住んでいたらしい
そんな名前がつく
狭い頂上を巡って
故郷の海や
背景にある故郷の霊峰
林間から、覗いて回る
友だちは、引っ越して来たばかり
何もかも、珍しい
おまえが
偉そうに説明して
見て回ったはずだ
さあ、もうひと山超えて
次が、目的地だ
二人で始めた
毎週の里山巡り
おんな坂で、一回
おとこ坂で、一回
ぞんな感じで
もうひと山、ふた山…
本当のこと言うと
正直、ちょっとここで
とは、言えないよな
確か、前年だか
この先の道を
初めて、歩いた
学校の遠足でね
それまでは
この山で終わり
一番奥の頂上が公園の山は
バスで大回りして行く
大回りしても
頂上に連れて行ってくれる
やっぱり、バスは楽ちん
でも、おまえが
言い出したんだ
この道で歩こうと
頑張るしかないけど
頑張るとか
おまえに、いちばん
向いてない考えた方😣
でも、頑張るしかない
まだ、遠足以来
二度目の道だ
でも、あの時は
みんなと一緒
大丈夫だったけど
よく考えたら
最初、おんな坂だったんだ…
to be continued