
自分の勤めている会社は食品製造業。
自社で食堂も営業している。
その食堂裏に溜まりに溜まったがらくたの山。
それを片づけるように指示された。
壊れたテーブルやイス,ついたて、ブラインド、
柄の部分だけになった、デッキブラシや箒、
使用済みのスプレー缶や、切れた蛍光灯、ボロボロの傘、朽ちたすのこ、
ポリタンクやら石油ストーブ、さらには冷凍室の重たい扉まで。
その都度、不燃ごみ資源ごみなど、きちんとやりゃあよかろうに・・・。
ブツクサ言いながら、それらを駐車場の隅に止めてある軽トラまで運ぶ。
まあ、厨房に入って皿洗いやらされるよりはマシか。
服を汚しながら、泥だらけカビだらけのがらくたをせっせと運ぶ。
食堂裏と軽トラを止めてある場所の途中にトイレがある。
客が用をたすため、頻繁に出入りしている。
そのトイレの向いは農道が通っており、食堂の敷地とは段差が生じていて、
その段差が傾斜のきつい法面、というか土手のようになっている。
こんな緩やかな傾斜ではない。
それにしてもgooブログ、画質が恐ろしく低下するようになったな・・・。
特にゲームの画像は酷過ぎる。
その土手で、トイレ待ちだろうか?
若いお母さんと小さな女の子が遊んでいた。
2歳くらいとおぼしき女の子の手を引いて、かけ声を上げながら、
その土手を登ったり下ったり。
土手の傾斜は45°くらいある。
あぶないなあ・・・そう思いながらそれを見ていた。
転ぶと下まで落っこちてしまうだろう。
実際の土手はここまで距離はないけれど。
しばらくして、女の子が二人になっていた。
さっきの2歳くらいの女の子に、小学校2年生くらいの女の子が加わり、
子ども二人だけで、土手を登ったり下ったりして遊んでいる。
うわぁ・・お母さんがトイレ入っちゃったのか?
小さい子どもだけだとますます危ないぞ・・・。
注意しようかすまいか・・・。
そう思いながら見ていた。
2歳くらいの子は、土手の上の方だけの狭い範囲で、ゆっくりと登ったり下ったりして遊んでいる。
あの程度ならいいけれど、足を滑らせたりして転んだら、一気に下まで落っこちちゃうな・・・。
上のお姉ちゃんとおぼしき、小学校2年生くらいの女の子は、
勢いよく土手を登っては、叫び声を上げながら一気に駆け降りるを繰り返す。
傾斜がきついとはいえ、高低差は1メートルちょっとの土手。
転んでも大したことはなかろうが、
心配してしまうのは、土手も下の地面もアスファルト舗装されているから。
転がり落ちても、つまづいて土手に打ち付けても、
そこが草の生えた土ならば、かすり傷程度で済むだろうが、
アスファルト舗装された固い面だと、それだけでは済まないかもしれない。
なにかあったらすぐに飛んで行こうと構えつつ、その場所を往来する。
これくらいの傾斜はあるはず。
そうしていると、それ見たことか!
お姉ちゃんとおぼしき、小学校2年生くらいの女の子、
土手を勢いよく駆け下りたはいいが、
そのまま野球のヘッドスライディングみたいなポーズで、前のめりに転んでしまった。
「大丈夫!?」
すぐに女の子に駆け寄る。
女の子は自力で立ち上がり、両手両膝の砂を払い落す。
「だいじょうぶ・・・。」
弱々しい声で答える。
「見せてごらん。」
地面に着いた両手のひらと、擦ったであろう両膝を確認する。
両手のひらは白っぽく汚れて砂が若干着いているが、擦りキズはない。
膝小僧、左側に擦り傷が!
「ああ、ここケガしとうね。」
左膝を指さして言うと、
「そこ前の・・・。」
と、女の子が答えた。
よく見ると、古いかさぶたになっていた。
以前にやったケガのようだ。
ふだんからわんぱくな女の子なのかな?
ひじや太ももなど、衣服で見えない箇所も心配だ。
「他は大丈夫?ひじとか、ももとか?」
「だいじょうぶ・・・。」
またも弱々しく答える女の子。
そして右手のひらを見つめる。
?
「ちゃんと見せてみて。」
あらためて手のひらを確認すると、右手の中指と薬指の間付近の下、
1cmくらい、べろんと皮がむけてしまっていた!
皮の向けた下からは、かすかに血が滲みだしていた。
これは痛そうだ!
「ここ皮剥けてるじゃん、痛いやろ?」
「・・・。」
無言で首を振る女の子。
「そこちゃんと洗ってから、絆創膏貼った方がいいよ。」
とりあえず親御さんに知らせないと・・・。
「お母さんは?」
「・・・。」
右手を押さえて黙ったままの女の子。
「どこから来たの?」
「・・・くる・・。」
「久留米?」
「くるま。」
いや、車から降りて店に来たんだろうが、そんなこと訊いてるんじゃなくて・・・。
少し待っていたが母親の姿がない。
待っていてもしょうがないので、自分が応急処置することに。
大したことのないケガだけど、小さい子にとっちゃ痛くて怖いに決まっている。
「しみるけど我慢してね。」
水道で怪我した場所に付着した砂をざっと洗い流す。
きれいに取り切れず、そこをこすってきれいに取り払いたいけれど、
それやるとたぶん痛いだろう。
ある程度にして、財布に入れていた絆創膏を貼る。
マキロンとかオロナインとか、消毒液や軟膏の類があればいいが、
とりあえず絆創膏だけで本当の応急処置。
子どもって、絆創膏貼ってもらうだけでグッと安心するからね。
持ってて良かった絆創膏。
今思えば店に救急箱備えられていて消毒薬のひとつやふたつあったかも。
「おうちに帰ったら、お母さんに、もう一回きれいに洗ってもらって、
ちゃんと薬を塗ってから、また絆創膏貼ってもらってね。」
女の子にそう説明していると、ようやっとお母さん登場。
「今、そこで転んでしまって、高校球児みたいに見事なこけ方で、手のひらの皮がむけてしまって・・・。」
20代後半とおぼしきお母さんに、事情を説明する。
「一応、さっと水で洗って絆創膏貼ってるんですが、まだ泥が少し残ってますんで、
もう一回きれいにして、そこのコンビニでマキロンか何か買ってから、
絆創膏貼り直した方がいいと思います。」
事情を説明していたら、女の子がお母さんにしがみついた。
スカートをぎゅっと握りしめて、顔をうずめている。
声はあげないけれど、両肩と頭が揺れている。
お母さんにしがみついて泣いているようだ。
「褒めてあげてくださいね、全然泣かなかったんですよ。」
「ね、おねえちゃん、強かったね、偉かったね。」
そう言うと、一層激しく肩を揺らしているように見えた。
その姿が健気でいじらしくて、頭を強く撫でてやりたい衝動に駆られた。
いや、知らんおっさんが、そんなことしたら怖がるだろう。
なにより母親が拒絶するだろう。
なので、その衝動をグッと我慢した。
!
もしかしたら知らんおっさんが怖くって、泣きたくても泣けなかったとか?
痛みすら感じないくらいにおびえていたとか?
子どもってそういうところあるから、もしかしたら・・・。
だからって、怪我した子を放ってはおけないしな。
その背格好も少し無愛想な喋り方もそっくり。
わんぱくなのもそっくり。
マスク姿なので顔全体は判らないが、
目だけで見ると、このくらいのときの自分の娘にそっくりだった。
娘とだぶって、この頑張った女の子が見えてしまった。
自分の娘もそうだったっけ。
あれは小学校一年生のときだったかな。
手を繋いで歩いていたら、車輪止めか何かにつまづいて転んでしまい、
膝をすりむいて、「いたい~!」って叫びながら泣いてたっけ。
あのときも、とりあえず絆創膏を貼って必死になぐさめ、
そばにあったお店でたい焼きを買ってあげて・・・。
ついこないだのように思い出す。
そんな娘ももうすぐ18歳。
つい先日、高校卒業も待たず、突然 福岡を離れ、ひとり暮らしを始めた。
自分も18で実家を出たし、就職するにせよ進学するにせよ、
この歳で実家を離れるのは、ごく普通のことなんだろうが、
だが心配でたまらない。
時が経つのが早い。
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