日本三大カルストのひとつで、北九州国定公園である、“平尾台”へ行ってきた。
国の天然記念物でもある。
わりと近所にあるため、馴染みのある観光スポットではあるものの、
ちゃんと行ったのは今回が初めて。
太古の昔、赤道付近で海底だったといわれる平尾台。
久遠の時をかけての地殻変動の末、石灰質の山が形成された。
その石灰質の山と大地が雨や地下水等によって浸食され、
ピナクル(石灰岩柱)や、ドリーネ(すり鉢穴),鍾乳洞などが形成されて、
他に見ない特異な景観のカルスト地形となる。
大平山山頂から
休日の昼下がり。
遅く起きてしまったが、ススキでも見に行こうと思い立つ。
このブログの記事に、今が見頃のススキを取り上げようと考えた。
近場では隣の添田町の英彦山(ひこさん)のキャンプ場近くの原っぱが有名らしいが、
隣町とはいえ、英彦山はちょっと面倒・・・。
他に県内にススキの名所は無いだろうかと探し、
出てきたのが、ほど近い小倉南区のこの平尾台だった。
しかも福岡県内のみならず、全国的にみても有名なススキの名所らしい。
ススキに加え、平尾台でも記事が書けるじゃない!
これは平尾台に行くっきゃない!と思い立ち、
急いで支度して一路平尾台へと向かった。
国道322号線を小倉方面へと走る。
同じ田川郡の香春町(かわらまち)を通り抜け、金辺峠(きべとうげ)にさしかかる。
この峠(トンネル)を抜ければ、北九州市小倉南区。
トンネルの脇には、チラホラと石灰岩が露出する山が見える。
“平尾台”を地名として広義に捉えると、
この金辺峠も香春町の採銅所(さいどうしょ)も、平尾台に含まれる。
トンネルを抜けて間もなく、前方に大きく削られた石灰の山が見える。
セメントの原料となる石灰岩の大規模な採掘が行われている。
深緑の山が大きく削られて、真っ白な石灰岩の塊が露呈している。
その表面には削り取られた痕が、幾筋も見える。
山の中腹には、物々しい採掘施設が点在しており、
大きなコンベアー?のダクトが山と施設を結んでいる。
文明、産業・・・こうやって山をも削ってしまう、ヒトの営みって何なんだろうと、
その光景を見て、しばし考え込んだりする。
鉱山地帯を通り過ぎると、自然のままの山が連なりだす。
ここからは平尾台の国定公園地域。
南部は古くから鉱山として石灰の採掘がなされ、
近代には財閥企業によって、さらに大規模な採掘がなされ、
その開発は北部にまで至ろうとしていたが、
その自然の大地を保護しようとする北九州市の反対で、
北部は国定公園・天然記念物に制定され、鉱山としての開発が禁止された。
322号線を北上していく。
標識に平尾台の文字が現れる。
右折して、平尾台方面へ―。
ほどなくして険しい峠道(吹上峠)にさしかかる。
この峠道が本当に険しい。
ショウケ峠や八丁峠なんか比にならないほど険しい。
吹上峠を過ぎると、やっとこさ開けた場所に出てきた。
のどかでさわやかな高原。
南に馬の背台というなだらかな丘陵。
北に大平山という、荒々しいカルストの丘陵。
峠を抜けてすぐの場所にあった駐車場に車を止めた。
駐車場の隅にトイレと休憩所があった。
休憩所の脇に杖の貸し出しがあった。
杖って、これただの竹竿じゃん・・・。
しかも2本しかないし、うち1本は折られたのか?
使い物にならないくらい短いし・・・。
“ご使用後は元に戻してください。”の文章がむなしい・・・。
杖なんか要らない!
当然、そんなものは借りずに登山に挑む。
ススキの群生がどこで見られるのか判らないが、
とりあえず大平山の方へ向かう。
九州登山道なるものが整備されていて、これを利用して平尾台をぐるりと散策できる。
まず出迎えてくれたのは、大小様々な仏像さんやお地蔵さん。
“平尾百仏”と呼ばれているもので、
平尾台のあちこちに祭られていたものを、ここに集めて祭ってあるのだとか。
写真に写っている仏像はけっこう古い年代のもの。
この後方に比較的新しい年代の仏像が、
一列に並んで祭られているらしいのだが、気付かなかった。
目の前の大平山の山肌を見る。
わりと最近に野焼きが行われたのか?
一部黒く焦げた山肌に、ピナクルが見える。
かなりの急斜面で登っていくのはかなりキツそうだ。
だが、その急斜面を数人の年配グループが登ってるのが見えた。
すごいな・・・。
しかし自分はススキを写真に収めるのが目的。
登山が目的ではない。
平尾百仏の手前から、急斜面から大きく逸れた、
なだらかで楽そうなルートを選ぶ。
こっちの登山道は、野焼きがされておらず、草もたくさん生えている。
ススキやセイタカアワダチソウ、クマザサが生い茂っている。
お目当てのススキの群生も、こっち側だろう。
迷わず、そのルートで登ることにした。
立派なススキが見えてきた。
が、セイタカアワダチソウやクマザサの方が多く、
とてもススキの名所という感じではない。
いや、一面ススキの場所があるはずだ!
そう思い、登山道を進む。
ススキよりも・・・
セイタカアワダチソウの方がきれい・・・。
ススキやセイタカアワダチソウが、1m以上丈があるので、
あまりよく見えないが、ここも立派なピナクルが点在している。
足下の登山道も、土に混ざってところどころ、白い石灰岩がむき出しになっている。
しばらく歩くと・・・自分の進んでいた登山道が、
さっき下から見た急斜面の登山道へと合流していた。
けっきょく山頂を目指すには、この急斜面を登らなければいけない。
自分はただ、遠回りをしただけだった・・・。
写真では伝わりにくいが、かなりの傾斜。
登ってて見覚えのある光景だと思っていたが、
どうやらドラクエⅩのカルデア山道だな。
さっきの年配グループが登頂を諦めて下山していた。
ふふん、アンタらが諦めた登頂をワシが果たしてやんよ!
意を決してこの急斜面を登る。
汗だくだ・・・ポケットからハンカチを出す。
この日に限って、薄っぺらの小さなハンカチ。
ちくしょう・・・タオル持ってくるべきだった。
これと同じ後悔、前に耶馬渓の古羅漢探勝道を登ったときにもしたな・・・。
学習能力のない自分・・・。
というか・・・喉乾いてきたぞ、これ水筒も要っただろ。
そういや朝から缶コーヒー一本しか飲んでいない。
というか、朝飯も昼飯も食べていない。
生八ッ橋とのど飴しか食べていない。
転んだら危険!
汗だくになり、ハァハァ言いながら踏みしめる。
足下は岩がゴツゴツしていて転ぶと危険。
さらに岩と岩の狭い空間が通路になっている箇所もあり、
おデブちゃんは、ここを通過できないだろう。
いや、おデブちゃんはそもそも、ここまで登っては来れまい。
幅50cmもなかったと思う。
自分は干渉せずに通り抜けられたぜ!
いや、腹引っ込めましたけどね。
しかし・・・頂上が見えて来ない。
諦めて下山するか・・・いや、もう少しで頂上なハズ!
頂上だと思ったとこまでたどり着けば、まだその先があり・・・。
それを繰り返しながら、登り進む。
息が切れる。
体力衰えたな~。
ハンカチはとうにびしょびしょで、もうこれ以上汗を拭いきれない。
先が見えない・・・。
くたくたになりながら、とうとうたどり着いた頂上!
40分ほどかかったろうか。
「大平山 山頂」の看板がまばゆい。
達成感とほどよい疲れ。
山の反対側には、さぞ絶景が拝めるだろうと思えば、生い茂った木が視界を遮る。
なんという達成感。
なんという絶景・・・
だが登山中にも見えていた南部は絶景が広がっていた。
広大なカルスト台地に、無数のピナクル。
群羊原(ぐんようばる)と呼ばれるその光景は、
まさに羊が群れをなしているように見える。
石灰質の溶解によって、地面がくぼんだドリーネも見える。
頂上付近のピナクルに腰掛け、
自然の不思議な景観を楽しみながら、しばし休息する。
山頂に吹く秋の山風が、汗だくの体を冷ましてくれて心地いい。
ミネラルウォーターでもあれば最高なのだが・・・。
奥に見えるのは海だろうか?
だとすると苅田港あたりか?
手前の草原、ゴロゴロしたくなるが、
草丈1mくらいの固いクマザサの群生なので、ゴロゴロは不可能。
10分ほど休んだろうか。
立ち上がり、再び元来た登山道を戻る。
ここから下山。
車を止めた駐車場がずっと先に見える。
少し降りたところで、年配の夫婦とすれ違う。
疲労困憊している姿に、「もう少しで頂上ですよ!」と声をかける。
またしばらくして、自分と同じ歳くらいの男性とすれ違う。
「もうすぐ頂上ですかね?」
「あの木が生えている先の方ですよ!」
みんな頂上が見えてこないで不安なんだな。
ついさっき自分も体験した、解る、解るぞ。
そして、半分くらい下ったところで女性三人組とすれ違う。
うち年配の二人は、あろうことか日傘を差していた。
しかも靴は女性用の一般的な靴(かかとの高くないヒールみたいなヤツ)。
おいおい・・・日傘で登山かよ!
山をナメてんじゃねーぞ!
・・・と自分のことを棚に上げて心の中で思う。
この日傘一行は頂上まで行けたのだろうか?
さらに下山していくと、タンクトップ姿の若者二人。
大学生くらいだろうか、いいカラダしていて明らかに体育会系だが、
それでもバテ気味に、一歩一歩登り進めていた。
すれ違って挨拶。
うちひとりが、「キツいっす・・・。」と漏らす。
頑張れ若人、キミらならば頂上へたどり着ける!
そうやって降りていくと、ススキの群生を発見。
さっきは別ルートを通っていたから気が付かなかったのだ。
うーん・・でもイマイチかな?
野焼きが行われていなければ、まだ見応えあったやも。
またちょっとして、登山道脇の草むらに、竹竿を発見する。
これって、駐車場のトコの休憩所で貸し出されていた杖?
こんなとこに竹竿なんて不自然・・・間違いなく杖だろう。
ちゃんと元の場所に戻さんかい!
どこの糞ジジイだよ? いやババアかもしれんが・・・。
いや、ひょっとしたら若いヤツかもしれん。
元の場所に戻そうと思ってその杖を拾ったが、
途中、すれ違う人に、「コイツ若いクセに杖なんて持ってやがんぜ!」
なんて見られちゃ嫌なので、そっと杖をその場に置いた・・・。
ちゃんと元に戻せよ、まったく・・・。
あと少し・・・!
そして、ようやっと登山道のスタートが見えてきた。
もう少しで下山完了。
そこで奇妙な二人組とすれ違う。
作業着姿の初老の男性と、若いOLさん。
なんだこの組み合わせ?
作業着の男性が上司で、OLさんが部下だろうか?
なんで仕事着姿で登山を?
ここから妄想が始まる。
・・・・・
二人は建設会社か土木会社の社員。
今日は取引先との商談だった。
男性が課長クラスで、OLさんはその部下で補佐として同伴。
しかし商談は成立せず・・・帰社して部長に報告しなければならない。
すぐに会社へ戻りたくない・・・。
「そうだ、平尾台にでも行って、雄大な景色を見て癒されよう・・・
そこで部長への言い訳・・いや報告を考えよう・・・。」
逃避する課長と、それに付き合わされるOLさん。
・・・・そんなくだらない妄想が頭に浮かぶ。
この地点で作業着男性とOLさんは登山を諦めて下り始めた。
奥に居るのはタンクトップの若者二人組のひとり。
下山してマップなどを眺めていると、斜面の方から奇声が聞こえてくる。
さっきすれ違ったタンクトップの若者二人組が、あのゴツゴツした足場の悪い傾斜を、
あろうことか、駆けて下りてくる。
「ヒョ~~~ッ!」
「恐ェ~~~!」
「やべェ! 止まら~~~ッン!!」
おいおい、転ぶんじゃねーぞ!
お前ら転んで怪我したら、助けに行かなきゃなんねえだろ!?
俺はまたそこまで登りたくねえぞ!
トイレの洗面所で、びしょびしょになったハンカチを洗って絞る。
水でひんやりしたハンカチで、あらためて汗を拭う。
タックトップの若者二人組が、トイレの前でヘタって地べたに座り込んでいた。
頂上まで登って、一気に駆け下りて来たようだ。
まったく若者は羨ましいな。
車に戻ってシートに座る。
尻のポケットに違和感。
そうだった、コイツを入れていた。
ニンテンドー3DS。
タオルも水筒も持っていなかったくせに、
こんなトコですれ違いなんて発生するわけないのに律儀にこれを携帯していた。
パネルを開いて歩数を確認。
5,000歩ちょっとか・・・登山は疲れる割に歩数は稼げないのだな。
山火事を防ぐために、タバコのポイ捨てを注意する看板。
野焼きされて地面の焦げた場所にあったので、なんとなくシュールに映った。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます