月刊少年SoccerFan

宝塚発少年サッカーの記録と高校サッカー
Jリーグ・日本代表など

甲府の風がふいた。

2005年12月11日 | Weblog
甲府がJ2クラブとして史上初めて入れ替え戦を制し、悲願のJ1昇格を果たした。第1戦の2-1の先勝を受けて臨んだJ1柏との第2戦。序盤からエースFWバレー(23)が相手守備網を切り裂き、1人で全6得点をたたき出す暴れっぷり。6-2の圧勝でJ2・3位ながら確かな実力を証明した。99年~01年まで3年連続最下位を味わい、経営危機だったお荷物クラブが生まれ変わり、トップリーグに上り詰めた。柏は2年目の入れ替え戦で完敗し、初めてJ2に降格した。

 苦労を知る者の、涙がこぼれた。昇格を告げる終了のホイッスルの瞬間、万感の思いが頂点に達する。FW石原がユニホームで顔をぬぐい、GK阿部も地面にうずくまった。長年流し続けた敗者の涙ではなく、勝者だけが流せる涙。ようやく、この日が訪れた。

 主役はFWバレーだった。前半だけで2得点。圧巻は1点を返された直後の後半8分。ペナルティーエリア右に流れ、マークもお構いなしに右足を振り抜いた。ゴール右上方を突き刺すダメ押しの3点目で、柏の戦意を根こそぎ奪い取った。結局J史上最多の全6得点をマーク。「自分の過去最高は4得点。今日はいっぱいチャンスがあった」と興奮気味に話した。

 かつては弱さの象徴だった。保有しているグラウンドもなく、河川敷を使用することもあった。雨が降れば「ピッチが荒れる」と使用を断られることも日常茶飯事。00年には今もJリーグ記録の19連敗を喫した。在籍10年目の仲田は「街で飲んでいると『こんなところで飲んでいるから負けちまうんだ』と怒鳴られた」と振り返る。

 だが苦難の時代を支えた人がいた。J2参入後も町役場勤務の「公務員Jリーガー」としてプレーしたDF石原大助さんもいた。DF仲田も02年開幕戦の接触プレーで「物が二重に見える」と視覚に障害を負いながら懸命にプレーを続けた。フロントもお金がない分、知恵を使った。担架に年間100万円でスポンサー名を入れる画期的なアイデアも生み出した。入れ替え戦出場が決まると事務所には「こういう時こそチケットを高くして強化費に」と激励の電話も届いた。

 この日先発した5選手は他クラブを戦力外となった選手。MF藤田はブラジル留学、MF倉貫はバイエルン受験を経験した。曲折を経て、甲府に集い、創設40周年の節目の年にJ1にたどり着いた。月給5万円でプレーしていた過去もある山梨県出身のFW石原は「みんなに感謝の一言」と言葉に思いを込めた。胸を張ればいい。甲府は誰もが認める勝者となった。


以上新聞より おめでとう!

雑草軍団

2005年12月09日 | Weblog
 J1・J2入れ替え戦・第1戦(7日、小瀬スポーツ競技場)今季のJは何かが起こる! J2の3位甲府-J1の16位柏の入れ替え戦第1戦で、後半ロスタイム突入とほぼ同時にスタジアムが停電するアクシデントが起きた。J1は最終節まで5チームに優勝の可能性が残る史上空前の大混戦を招いたが、ここでも“蹴史”に残る死闘が刻まれた形。試合は甲府が2-1逆転勝ち。J除名危機を乗り越えてきた波瀾万丈の歴史が停電に凝縮され、ついにJ1昇格に王手をかけた。第2戦は10日、日立柏サッカー場で行われる。

 照明を取り戻したスタジアムにイレブンの雄たけびが響く。試合終了の笛に、全員が天にこぶしを突き上げた。小雨降る中で場内1周ウイニングラン。J2の中でも“お荷物”といわれた甲府が、まさに“暗闇”からJ1昇格に王手をかけた。

 「まずは停電になったことを申し訳なく思います。試合は必ず点が入ると信じていた。選手たちが普段通りのサッカーをしてくれた」。大木監督は硬い表情でまずトラブルを謝罪したが、すぐに笑顔で選手の奮闘をたたえた。

 雑草軍団らしい勝利かもしれない。2-1で後半ロスタイムに入った直後、スタジアムの明かりが消えた。「キャー!!」「何だ?」。観客がどよめき、勝利寸前で試合が中断する。約35分後に再開したが、選手は残り約5分間、歯を食いしばって耐え抜いた。

 99年にJ2加盟後、3年連続で最下位…。この間、わずか2年で累積赤字が4億円超となり、クラブ消滅、J除名のピンチに追い込まれた。当時のJリーグ・川淵チェアマン(現日本サッカー協会キャプテン)が視察に訪れ、自治体に支援を訴えたほどだった。

 今では危機を脱出。培われた精神力はすごい。J2最終節で優勝の京都に2-1で勝ち、4位から入れ替え戦出場権の3位に浮上した。つかんだビッグチャンス。10日の敵地決戦に引き分け以上でJ1昇格が決まる。同点弾のMF倉貫は「引き分けは考えない。アグレッシブにやる」と歓喜の瞬間をイメージした。

 思えば、甲府サッカークラブ時代の69年、関東リーグVで日本リーグ昇格をかけ、柏の前身である日立サッカークラブとの入れ替え戦に挑んだ。そこで味わった2戦2敗の屈辱…。その36年前の借りがある。地獄を味わった甲府が、夢舞台に向けてもうひと走りする。

 〔甲府は前半25分にMF倉貫(左から2人目)が同点弾。“ゆりかごダンス”で柏を飲み込んだ〕

とちょっと感動したので新聞切り抜きました。12/10は甲府の応援しよう!