いま、私の眼の前に、2冊の本が置かれている。
主に文芸批評などで活動している荒木優太氏の「これからのエリック・ホッファーのために」と、グーブログでも活躍中の礫川全次氏の「独学の冒険」の2冊である。どちらも面白い。お2人とも、在野研究者である。
荒木氏の本では、総勢16人の在野研究者が紹介されている。谷川健一・小室直樹・南方熊楠といったメジャーな人たちから、野村隈畔(哲学者)といった埋もれた独学者まで。軽快かつユーモア溢れる文章で読ませる。附録として「在野研究の心得」までついていて、参考になる。ただ、出来れば独学者に向けてのブックガイドもほしかった。
礫川氏の本は、どうか。冒頭のQ&Aが非常に親切である。そしてこの本、随所に独学者への名言がちりばめられている。一部、紹介する。
「独学者は、学問の世界においては、まさにズブの素人です。そのズブの素人が、学問の世界で「強み」を発揮しようとすれば、ほとんど唯一の武器は、大胆な発想、ユニークな発想だといっても過言ではないでしょう」。P64
「そうです、どんな人間にも、文学や学問を目指そうとするときがあるのです」。P151
そして驚かされたのは、第6章「独学者にすすめる百冊の本」だ。谷崎潤一郎「文章読本」や吉本隆明「共同幻想論」、三島由紀夫「文化防衛論」といったメジャーなものもあるが、山上八郎、福田定良、後藤興善、綿谷雪などなど、取り上げられている人物が、ユニークなのだ!とにかく紹介されている人たちの分野が幅広い。この百冊のリストから異様なパワーを感じ、圧倒された。礫川氏はグーブログで活躍中だから、お世辞で書いているのだろう、と疑う人もいるかもしれない。でもお世辞なんかではない。本当に怪しい光を放つ名著なのだ。