さっそくスピンアウト。あるぇー?
2
ピロリロリロリン♪
どこからかケータイのなる音が聞こえる。
あたしは無意識のうちにそれを探した。目の前は暗くにじんでいて、よく見えない。だけど、あたしの意識はそれを探している。ポケットの中、鞄の中、手に持っているのかも。ただ、いくら探しても見つからない。いったいあたしのケータイはどこに行ってしまったんだろう。夜明け前の朝靄のような闇の中、あたしはケータイを探す。心の奥底で、そんなものはないと知りながら。
いや、あるはずなどないのだ。あたしは今裸だ。ケータイなんてどこを探しても出てくるはずがない。ポケットもなければ鞄もない。手はそんなものをもてるほどに大きくない。
いや、おかしい。何故あたしは裸なのだ。そんなわけがない。あたしは今まで――何をしていた? 何を探していたのか……そうだ、ケータイだ。ケータイがなっているんだ。でも、ケータイってなんだ? そもそもそんなものなってたっけ? というかなるって何? あたし今何を考えているの? あたしって誰――?
暖かい海の中を、独りで漂っている。あたしはあたしよりもっと大きな世界の一部で、でも同時にあたしという個人でもあった。どこにもいけないかわりに、どこまでもあたたかい。ずっといたいけれど、すぐにここから出て行きたい。少しずつ、世界の力が強くなっていく。ここは、おまえにはもう狭いんだよ、と優しく語り掛けてくる。もうすこしだけ、ここにいたけれど。ああ、でも――。
そして、世界が開ける。
朝靄の中の夜明け。世界が白く滲んでいく。狭く暗い、どこか暖かい隧道を抜けて、冷たく、寒く、それでも光の溢れる世界へ。
ずるり、と最初に頭が抜けたら後は簡単だった。あたしの身体には頭より大きい場所なんて一箇所もなくて、すとんと落ちるようにあたしはこの世に現れた。
どこからか、泣き声が聞こえた。
「真由美。あなたの名前は真由美よ――」
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ピロリロリロリン♪
どこからかケータイのなる音が聞こえる。
あたしは無意識のうちにそれを探した。目の前は暗くにじんでいて、よく見えない。だけど、あたしの意識はそれを探している。ポケットの中、鞄の中、手に持っているのかも。ただ、いくら探しても見つからない。いったいあたしのケータイはどこに行ってしまったんだろう。夜明け前の朝靄のような闇の中、あたしはケータイを探す。心の奥底で、そんなものはないと知りながら。
いや、あるはずなどないのだ。あたしは今裸だ。ケータイなんてどこを探しても出てくるはずがない。ポケットもなければ鞄もない。手はそんなものをもてるほどに大きくない。
いや、おかしい。何故あたしは裸なのだ。そんなわけがない。あたしは今まで――何をしていた? 何を探していたのか……そうだ、ケータイだ。ケータイがなっているんだ。でも、ケータイってなんだ? そもそもそんなものなってたっけ? というかなるって何? あたし今何を考えているの? あたしって誰――?
暖かい海の中を、独りで漂っている。あたしはあたしよりもっと大きな世界の一部で、でも同時にあたしという個人でもあった。どこにもいけないかわりに、どこまでもあたたかい。ずっといたいけれど、すぐにここから出て行きたい。少しずつ、世界の力が強くなっていく。ここは、おまえにはもう狭いんだよ、と優しく語り掛けてくる。もうすこしだけ、ここにいたけれど。ああ、でも――。
そして、世界が開ける。
朝靄の中の夜明け。世界が白く滲んでいく。狭く暗い、どこか暖かい隧道を抜けて、冷たく、寒く、それでも光の溢れる世界へ。
ずるり、と最初に頭が抜けたら後は簡単だった。あたしの身体には頭より大きい場所なんて一箇所もなくて、すとんと落ちるようにあたしはこの世に現れた。
どこからか、泣き声が聞こえた。
「真由美。あなたの名前は真由美よ――」