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ヒューマン・ライツ・ウォッチ ギニアの虐殺裁判で検察が人道に対する罪に訴因変更を求める

ギニアの虐殺裁判で検察が人道に対する罪に訴因変更を求める

被告側の対応を待って裁判が停止

2024年3月15日 HRW国際司法プログラム、法律顧問 タマラ・アブラマダン

Earlier this month, in the landmark trial of Guinea’s former president and 10 others, including former ministers, who are accused of responsibility for a massacre and rapes in a stadium, the prosecution team requested the reclassification of charges to crimes against humanity. The trial is currently suspended until March 18, 2024, to allow for the defense’s response.

今月早く、競技場での虐殺とレイプにおける責任を問われている、ギニアの元大統領他複数の元大臣を含む10人に対する画期的な裁判で、検察側は人道に対する罪に訴因変更を求めた。被告側の対応を待って、裁判は2024年3月18日まで停止された。

The trial examines one of the most brutal events in Guinea’s history. On September 28, 2009, Guinean security forces opened fire on peaceful pro-democracy demonstrators who had gathered in a stadium in the country’s capital, Conakry. At least 150 people died and many more were injured. Security forces raped more than 100 women. Security forces later engaged in an organized cover-up, disposing of the bodies in mass graves.

ギニアの歴史上最も残虐な事件の1つを、裁判は審査している。2009年9月28日、ギニアの首都コナクリの競技場に集まった平和的な親民主デモ参加者に対して、ギニア治安部隊が発砲、少なくとも150人が死亡し、更に多数が負傷、100人超の女性をレイプした。その後に治安部隊は組織的な隠蔽工作を行い、遺体を大きな穴に埋めて処理した。

So far, judges have heard from each of the 11 accused, more than 100 victims, and just over a dozen witnesses, including high-level government officials, called by all parties in the trial. Judges have also considered video and audio evidence captured around the 2009 events.

これまでに裁判官たちは被告11人、被害者100人超、裁判の全当事者から呼び出された政府高官を含む証人、僅か12人強からそれぞれ話を聞くと共に、2009年の事件を巡って録画・録音されたビデオと音声の証拠を検討した。

It was in response to the video and audio evidence that the prosecutor’s representative, El Hadj Sidiki Camara, took the floor and requested reclassification of the charges. He has now made a formal submission to the court in writing. Though shared with the parties in the trial, this submission is not publicly available.

ビデオと音声の証拠に反応して、検察側代表のエル・ハジ・シディキ・カマラが起立、訴因変更を求めたのだ。彼は現在、書面で裁判所に正式に申請した。裁判の当事者にはシェアされているものの、その書類は公開されていない。

According to trial monitoring organized by Human Rights Watch and media reports, when making the reclassification request, the prosecutor invoked Guinean criminal procedure law, arguing that reclassification is permitted, and relied on crimes against humanity provisions incorporated in Guinea’s 2016 criminal code.

HRWによって組織化された裁判監視とメディア報道によれば、訴因変更の申請時に、当該検察官はギニアの刑事訴訟法を引き合いに出して、訴因変更は認められると主張、ギニアの2016年刑法に盛り込まれている人道に対する罪の規定に依拠した。

The civil parties, that is, victims who have joined the case as formal parties to the proceedings, supported the prosecution’s request in court.

裁判の民間人当事者、つまり訴訟手続きの正式当事者として裁判に参加した被害者は、法廷で検察の要求を支持した。

After hearing from the defense, the judges will decide whether the reclassification of the charges is appropriate. If they allow the reclassification, it would be the first time that crimes against humanity are prosecuted in Guinea.

裁判官たちは弁護側からの話を聞いた後に、訴因変更が適切かどうかを判断する。もし訴因変更が認められれば、人道に対する罪が起訴されるのはギニア初となる。

A Human Rights Watch investigation into the event indicated that the abuses surrounding the event rose to the level of crimes against humanity. An international commission of inquiry and the Office of the Prosecutor of the International Criminal Court reached similar conclusions. However, it will be up to the judges to rule on the reclassification request, addressing the specific allegations concerning the individuals on trial.

事件へのHRWによる調査は、事件を巡る人権侵害が人道に対する犯罪のレベルに達していたことを示した。国際調査委員会と国際刑事裁判所検察局も同様の結論に達している。ただし、裁判中の個人に関する具体的な申し立てを対応し、訴因申請へ裁定を下すのは裁判官たちである。

Reclassifying the charges could mean that the justice process will have greater impact, particularly in being seen to be responsive to the experience of victims, survivors, and the communities most affected by these crimes.

訴因変更は、被害者、生存者、それらの犯罪によって最も影響を受けた地域社会の経験に対応していると特に見られているので、司法手続きはより大きな影響を与えることを意味する可能性がある。

 

ギニア:9月28日の虐殺は計画的

詳細な調査が手当たり次第に行われたレイプを取りまとめている

(ニューヨーク、2009年10月27日)-2009年9月28日ギニアの首都コナクリで平和的集会参加者への大量殺人とレイプが行われたが、この事件に対する徹底的な調査は、虐殺と性的暴力が、“レッドベレー”として一般に知られている大統領護衛精鋭部隊によってほぼ計画・実行されたことを暴露した、と本日HRWは述べた。ギニアへ10日間の調査ミッションを行った後、HRWはまた、武装部隊がスタジアムや市の安置所から遺体を押収しそれを集団で埋葬して、犯罪の証拠を隠蔽しようと試みていたことも明らかにした。

 

HRWは、大統領護衛部隊が少なくとも150名を計画的に虐殺し、数十人の女性を残虐にレイプしたことを明らかにした。レッドベレーは銃弾が尽きるまで政府反対派の支持者に銃撃を加え、更に銃剣とナイフで殺害を続けた。

 

“死者が出たのは何らかの事故だったと、ほのめかすようなことを、最早政府は続けられない。”とジョルジェット・ギャグノン、HRW、アフリカ局長は語った。“これは政府反対派の声を沈黙させるためのあきらかに計画的な行動だった。”

 

“治安部隊はスタジアムを包囲・封鎖して、その後襲い掛かり、銃弾が尽きるまで冷酷に抗議運動参加者に銃撃を加え、又指揮官の眼前で女性たちを身の毛のよだつ方法でギャングレイプし殺害した。”とギャグノンと付け加えた。

 

2008年12月22日、自らを「民主主義と発展のための国民評議会(CNDD)」と呼ぶギニア軍将校の一団が、24年間ギニアの大統領だったランサナ・コンテ(Lansana Conté)の死亡数時間後に、政権を掌握した。CNDDは自らを大統領であると称するムサ・ダディス・カマラ(Moussa Dadis Camara)大尉に率いられている。

 

HRWは西アフリカ諸国経済共同体(ECOWAS)が提案する、虐殺・レイプ事件を調査する国際委員会を全面的に支援すること、調査を速やかに行うこと、調査はアフリカ連合が関与し国連が率いること、などの要求を改めて表明した。犯罪に対する公正で効果的な訴追につながる、刑事捜査(国内的努力が原則だが、それが出来ない場合は国際努力で)が必要不可欠である、とHRWは述べた。

 

HRW調査員4名のチームは、10月12日から22日までの間に、被害者及び目撃者150名以上に聞き取り調査を行った。聞き取りに応じた人々の中には、襲撃による負傷者、スタジアムでの目撃者、行方不明者の家族、弾圧・隠蔽に参加した軍将校、医療スタッフ、人道援助当局者、外交官、政府反対派指導者などがいた。

 

9月28日スタジアムでの大量殺戮

多くの目撃者の説明によれば、9月28日午前11時30分頃、“レッドベレー”と呼ばれる大統領護衛部隊数百名と、対麻薬及び対組織犯罪部隊に協力する憲兵隊、機動隊の一部、数十人の私服非正規民兵の混成部隊が、機動隊のスタジアムへの催涙ガス発射の後、スタジアムに入り、殆どの出口を閉鎖したのだそうである。スタジアムは、軍事政権と近づいてきた大統領選挙にカマラが立候補するというウワサに抗議する、平和的な民主主義支持者数万人で満杯だった。

 

その朝の経過では政府反対派支持者と治安部隊の間に少々の衝突があった。死者を出した幾つかの事件では、治安部隊が政府反対派メンバーに発砲したのだが、それはスタジアムに政府反対派メンバーを近づけまいとしての行動だった。致命傷を与えるような発砲に怒った政府反対派支持者たちが、ベレブー(Bellevue)警察署に火をつけた事件も1つあった。

 

しかしながら目撃者の説明とHRWが入手した、発砲直前のスタジアムに集まった人々のビデオ映像は、平和的でお祝いムードに溢れるものだった。政府反対派の支持者たちが歌い、踊り、スタジアムの周辺をポスターやギニア国旗を手に行進し、中には祈っている者さえいる、そんな光景が写されていた。HRWは、政府反対派の支持者の誰かが武装していたという証拠を確認していないし、治安当局者は1人もスタジアムで政府反対派の支持者に負傷させられていない。このことは、続いて怒った虐殺やレイプもたらすような、政府反対派の支持者による正真正銘の脅威などなかったことを示唆している。

 

スタジアムに突入した直後、大統領護衛部隊員は抗議者の大きな集団に至近距離から直接発砲し始め、数十人を殺害しパニックを引き起こした、と目撃者は語った。襲撃者、とりわけ大統領護衛部隊員と対麻薬及び対組織犯罪部隊に所属する憲兵隊は、その多くが携行しているAK-47突撃銃の弾倉2本が空になるまで銃撃し続けた。襲撃者によって殆どの出口は閉鎖されスタジアムは包囲されていたので、閉じ込められた抗議者にとって脱出は極めて困難だったし、多くがパニックになった群集によって押しつぶされて死亡した。

 

ある政府反対派支持者(32歳男性)はHRWに、如何にレッドベレーがスタジアムに突入し抗議者に直接発砲し始めたのか、如何に彼が脱出しようとしていた際に殺害が続いたのかの様子を話してくれた。

 

“ヤツラはスタジアムの外から催涙ガスを撃ちはじめた。沢山のガス弾がスタジアムに撃ち込まれたんだ。それから直ぐ、レッドベレーが大きなゲートから突入してきた。突入してきた途端に、群集を狙って撃ち始めやがった。兵隊の1人が‘掃除に来た’って大声でわめくのを聞いたよ。一番奥のゲートまで逃げようとしたんだ。後ろを見たら、芝生に死体がいっぱい転がってた。スタジアムの外に出ようって決めた。奥のゲートのドアが1つ開いてたんだけど、あんまり沢山の人がそこから逃げようってしてたもんだから、閉まってるドアをよじ登ることにしたんだ。”

 

“周りにある壁に向かって走った。バスケットボール場の近くで、レッドベレーとティエグボロの憲兵[麻薬密輸及び重大犯罪との闘い担当国務大臣ムサ・ティエグボロ・カマラ大尉(Moussa Tiegboro Camara):CNDD総裁ダディス・カマラの親族ではない]の集団に追いかけられた。俺たち8人のグループにヤツラ撃ってきて、3人だけ生きて逃げられた。[ガマル・アブデル・ナセル:Gamal Abdel Nasser]大学に面した壁の近くで撃たれ、5人は殺された。”

 

“俺たちは外に出られなかったんで、ドンカ(Donka)道路の近くにある壊れた壁に走って戻った。そこでもトラック2台とレッドベレーの集団が待ち伏せしていた。銃剣を持っていて、俺は1人のレッドベレーが目の前で(銃剣を使って)3人殺すのを見たもんだから、戻ろうと思ったんだけど、友達が、‘俺たちは数が多いんだから、押し通ってみようぜ!’って言ったのさ。そしてそれが俺たちの逃げた方法だったのよ。”

 

政府反対派指導者の1人はHRWに、演壇の下で展開された殺戮の光景を、どのように信じられないような気持ちで見ていたかを説明した。

 

“私たちは演壇に上がった。人々が指導者の到着に気づき、更に多くの人がスタジアムに入ってきて、満杯になった・・。スタジアムを出ようと準備しながら、人々に家に帰ろうと呼びかけたちょうどその時だった。外で銃声が聞こえ、それから催涙ガスが撃ち込まれてきた。兵士が頭上の電線を切って金属のドアに電気を流し、スタジアムを包囲した。”

 

“それからスタジアムに突入してきて発砲した。スタジアムの大きな入場口から発砲し始めたんだ。私たちは演壇上にいたので、撃たれた人が倒れるのが見えた。本当に信じられない光景だった。みんなが逃げた後、そこら中に死体があって、私たちはまだ演壇の上にいた”

 

目撃者はまた、スタジアム周辺の2メートルの高さの壁に囲まれている場所で、大統領護衛部隊と他の治安部隊が更に多くの政府反対派支持者を殺害したと説明した。その壁をよじ登って逃げようとしている時に、抗議者たちは襲撃者によって撃ち殺された。政府反対派支持者はまた私服でナイフ、パンガス(ナタ)、先を尖らせた棒で武装した男たちにも襲撃されたと語った。

 

HRWが集めた証拠は、虐殺と手当たり次第に行われたレイプ(以下に取りまとめた)が組織化され計画されていたということを、強く示唆している。この結論は、治安部隊がスタジアムに突入して直ちに抗議者に発砲を開始しているということ、及び、政府反対派の抗議が平和的であり、激しい暴力で対応する必要のあるような脅威を与えていなかったという、目撃者とビデオ映像による両方の証拠によって裏づけられている。混成部隊が同時に到着し、出口とエスケープルートを封鎖、極めて多数の大統領護衛部隊が一斉にしかも執拗な激しい銃撃を加えて、虐殺は実行されたらしい。その方法が、虐殺が組織化され周到に計画されていたことを示している。

 

民族的側面

聞き取り調査の際多くのギニア人は、今回の暴力に明らかな民族的側面があることにショックを表していたが、それはギニアの状況を一層不安定にする恐れがある。犠牲者の大多数は、殆ど全部がイスラム教徒であるフーラ族(Peuhl)という民族グループ出身であり、一方スタジアムの指揮官の殆どは(支配政党CNDDの主要メンバーはクーデター指導者カマラを含めて実際は)、概してキリスト教か精霊を信仰する南東部森林地帯の民族グループに所属している。

 

多くの殺人者とレイピストが襲撃の際、政府反対派支持者内の多数派民族であるフーラ族(Peuhl)を、ターゲットにしているのを明らかにし侮辱しながら、民族的偏見に基づいた発言をし、「フーラ族(Peuhl)が権力を取ろうとしている。」、「フーラ族は“思い知らされる”必要がある。」などと言っていた、と目撃者は語っていた。HRWは又、南東部の町・フォレカリアー(Forécariah)近くにある基地で行われた、軍事訓練の目撃者の話を聞いた。それは、森林地帯出身民族の人々で多数派を構成する特殊部隊を作るための、同地帯出身の数千人の男に対する訓練だったらしい。

 

フーラ族犠牲者の多くは民族性を理由にして、脅迫され虐待されてきたと報告している。例えば、制服を着てレッドベレーを被った男たちにギャングレイプされたある女性は、如何に襲撃者たちが繰り返し彼女の民族性に言い及んでいたかを、説明していた。:「今日俺たちはお前らに教えてやる。お前らの悪巧みにはウンザリだよ。フーラ族なんて皆殺しにしてやるぜ。」と言っていたそうだ。コウンダラ(Koundara)軍事基地に数日間拘束されていた、ある若い男性はレッドベレーにピストルを頭に押し当てられ、「お前ら俺たちをイヤダって言ってるんだってな。セロウ[フーラ族を率いている政府反対派候補者セロウ・ダレイン・ディアロウ(Cellou Dalein Diallo )のこと]”の方がイイって言ってるんだって。皆殺しにしてやるよ。俺たちがノシテ行くんだ。」と言ったと説明した。

 

殺害された者の数と政府の隠蔽

HRWの調査は、9月28日の虐殺で殺害された者の数が政府の公式発表である57名よりもはるかに多数であり、およそ150から200名になる可能性が高いことを確認している。病院での記録、目撃者と医療従事者への聞き取り調査、野党政党と地元人権保護団体が集めた記録によれば、少なくとも1000名の人々がスタジアムへの襲撃の際に負傷している。HRWは、政府が彼らの行った犯罪の証拠を組織的に隠蔽しようとしていることを示す、強力な証拠を発見した。9月28日の午後大統領護衛部隊はコナクリにある中心的死体安置所を支配下に治め、家族が親族の遺体を引き取りに来るのを妨げている。

 

その後数時間以内に、大方はレッドベレーを被った兵士たちが、市の安置所から遺体を持ち去り、スタジアムの遺体を収集して、それを軍基地へ持ち運び隠した、と目撃者と家族は語っていた。HRWは虐殺での死亡が確認された50ケース以上を調査し、主要な安置所のあるドンカ(Donka)病院に当初運ばれた、少なくとも6名の遺体を含む遺体の半数が、軍によって半分が持ち去られているのを明らかにした。

 

例えば、9月28日に殺害された学生ママドウ・“ママ”・バーの遺体は地元赤十字によってドンカ安置所に運ばれていた。しかし彼の遺体は消え回収されていない。バーの父親はその経験をHRWに以下のように語ってくれた。

 

“赤十字が遺体をドンカ病院安置所に運び、私は赤十字の後をついていった。病院で私は医者と話しをし、先生たちは遺体を引き取りに明日もう一度来なさいと言ったんだ。でも次の日安置所はレッドベレーに取り囲まれていて、誰も入れてくれなかった。交渉しようとしたけれど断られた。金曜日にグランド・ファイサル・モスク(Grand Fayçal Mosque)に行った、レッドベレーがドンカ安置所の遺体をそこで見せていたからだ。でもそこにも息子の遺体はなかった。消えてしまったんだ。”

 

26歳の靴のセールスマン、ハミドゥ・ディアロ(Hamidou Diallo)はスタジアムで頭部を撃たれ殺害された。負傷した親友の1人はレッドベレーが彼の遺体を何処かに運び去って行くのを見た。安置所や軍の基地を懸命に探したが、家族はディアロの遺体を見つけられなかった。

 

アルマミー・サモリー・トウレ(Almamy Samory Touré)軍基地内部の目撃者はHRWに、虐殺の数時間後に軍がスタジアムから47遺体を基地に運び込んだ様子と、その日の夜イガンス・ディーン(Ignace Deen)病院に行くよう彼が言われ、そこから更に18遺体を回収した様子を説明してくれた。その目撃者は更に、その夜中65遺体が基地から運び出され、まとめて埋められたらしい、とハッキリ述べていた。

 

広範囲に行われたレイプと性的暴力

大統領護衛部隊とそれより数の少ない憲兵はスタジアムで、数十名の少女や女性を手当たりしだいにレイプし又性的暴力を加えた。余りにも激しい残虐行為を多くの場合加えられたために、犠牲者はその傷が元で死亡した。

 

HRWの調査員が聞き取りを行った、性的暴力の犠牲者27名の大多数は1名を超える者にレイプされている。目撃者は、大統領護衛部隊員が少なくとも4名の女性をレイプした後に、性器に銃撃を加え又は銃剣を突き刺すなどして殺害したのを見たと説明した。犠牲者の一部は銃身、靴、木の棒などを性器に突き刺された。

 

犠牲者や目撃者はスタジアム内部と同じく、スタジアム周辺近くの浴室エリア、バスケットコート、スタジアム別館など様々な場所で、レイプが公然と行われた様子を説明した。スタジアムで行われたレイプに加えて多くの女性はスタジアムや治療を求めて行っていた診療所から民家に連れて行かれ、そこで昼夜を問わず大統領護衛部隊によって残虐にレイプされ続けた。抗議の時とその後に起きた性的暴力のレベル・頻度・残虐性はそれが、ごろつき兵士の行き当たりばったりの行動ではなく、反政府派を恐怖に陥れ辱める組織的企ての一環であったことを、強く示唆している。

 

35歳の教師がHRWにスタジアムでギャングレイプされた様子を説明した。

 

“発砲が始まった後、逃げようとしたけれど、レッドベレーに捕まりグランドに引きずられていった。1人のレッドベレーにライフルの台尻で頭を2回殴られた。倒れたところに3人が襲い掛かってきた。1人がナイフを取り出し着ているものを引き裂いた。抵抗しようとしたけれど相手はとても強かった。2人に押さえつけられ1人にレイプされた。「俺たちがやりたいことをやらせないと殺す」って脅した。次に2番目の男がレイプしその後が3番目。ヤツラその間中殴って、私たちを皆殺しにするって言ってた。私はそれを信じたわ。だってほんの3mくらい離れたところでもう1人の女の人がレイプされていたんだけど、終わった途端に兵隊の1人が銃剣をその女の人の性器に突き刺して、ナイフについた血をなめてたのよ。私はそれを見たの、すぐ私の隣で・・・・ヤツラ私にもそうするって、ものすごく怖かった。”

 

3日間ある家に拘束されギャングレイプされた42歳の専門職の女性はその地獄のような経験をHRWに説明した。

 

“銃撃から逃げようとした時、数人のレッドベレーが若い女性をレイプしているのを見た。その内の1人が銃を彼女の性器に突っ込んで発砲した。その女性はもう動かなかった。あー神様、その女性が死んでいく様子を思い出す度に・・・耐えられなくなるのよ。それが起きた時、もう1人のレッドベレーが私を後ろから私を羽交い絞めにして言ったの。「一緒に来な。そうでないとお前に同じことするぜ。」って。そいつは私を窓のない軍用トラックに連れて行った。そこには25人くらいの若い男と、私を含めて6人くらいの女性がいた。少し走った後、トラックが止まって、兵士たちは3人だか4人だかの女性に降りるよう命じた。その後トラックは2軒目の家のところで止まり、残っていた女性に降りるよう命じた。すぐに部屋に連れ込まれて、ドアは後ろで鍵が掛けられた。”

 

“数時間後、3人の男が部屋に入って来た。みんな軍服を着てレッドベレーを被っていた。その内の1人は白い粉の入った小さな入れ物を持っていた。そいつは指をその入れ物に入れ、その指を私の鼻に突っ込んだ。それからその3人は全部私を使った。次の日も使った。でもしばらくして別の連中が2人ずつ来た。何回で誰だったなんてことは分からない。私の性器は焼けるようにヒリヒリと痛み、すりむけた。とても疲れ、正気を失ったわ。最初の3人は私をレイプするのをお互いに見物していた。”

 

“私はそこに3日間いた。ヤツラは「お前ここを生きて出られるなんてマジには考えてねんだろ?」’って言ってたし。時々は仲間内で口げんかしてた。「今ここでコイツを殺さなきゃなんねーのか?」「違うだろ・・・やりたいことやってそんで殺しゃいい。」 時々もう1人の女性が近くの部屋で泣き叫んでいるのを聞いた。「お願いします、どうか・・神様、これが私の一生のお願いです。」 最後の日の午前6時、兵隊たちが私の頭に覆いを被せて、少し車で走り、ある街角で私は解放された。完全に素っ裸だったのよ。”

 

現場の指揮官は手当たり次第に行われているレイプを明確に認識していた。しかし指揮官がそれを止めさせようとして何か試みたという証拠は皆無である。ある政府反対派指導者は、どのように大統領護衛部隊の指揮官であるアブバカル・“トンバ”・ディアキテ(Abubakar “Toumba” Diakité)中尉にスタジアムから連れ出されたのか、どのようにレッドベレーに性的暴行を受けている少なくとも12名の女性の傍らを通り過ぎたのか、その様子をHRWに説明した。その指導者はトンバがレイプを止めさせようと何一つしなかった様子に言及した。

 

“沢山のレイプを目撃しましたよ。政府反対派の指導者はスタジアムの外にゆっくりと連れ出されたので、その分私たちは多くを見ることになったのです。演壇から降りた時、グランドの上に5人のレッドベレーに取り囲まれた裸の女性がいるのを見ました。兵隊は彼女を芝生の上でレイプしていました。他にも裸の女性たちがレッドベレーに[レイプのために]連れ去られていくのも見ました。スタジアムの外でももっと多くのレイプがありました。スタジアムのすぐ外に、そこにはシャワー室があるんですけれども、そこの地面にも裸の女性が1人いました。頭の方に3人か4人のレッドベレーがいて、1人がライフルをその女性に[性器]突っ込んでいた。その女性は痛みで大きな悲鳴を上げたので、私たちも見ざるを得なかった。道すがらのありとあらゆるところで、おおよそ12人くらいの女性がレイプされていた。トンバ中尉は私たちのすぐ横にいて全てを見ていたのですが、レイプを止めさせようとは何1つしなかったのです。”

 

虐殺、性的暴力その他の虐待の責任

収集した証拠を根拠として、HRWは9月28日に行われた虐殺と性的暴力が組織化され事前に計画されていた可能性がある、ということに明らかにした。命令を下した者も含めて全ての責任者は自分たちの行為に対して刑事責任を問われなければならない。犯罪を隠蔽しようとした者、証拠を処分しようとした者も同じである。民族性を根拠にした大量殺害、性的暴力、迫害が組織的であったようであるが、それはこの犯罪が人道に反する罪である可能性を示唆している。そのため“指揮命令系統上の責任”の原則も適用する。犯罪(若しくは計画)について知っていなければならない者、それを阻止しなかった者、若しくは責任ある者を訴追しなかった者で、責任ある地位にいる者は刑事責任を問われなければならない。

 

指揮命令系統上の責任を負うべき者を含む責任者の特定と訴追につながる、中立な刑事的捜査が緊急に必要であるとHRWは考えている。虐殺と性的暴力に対する刑事責任の容疑で捜査されるべき者には以下に掲げる者がいる。

 

ムサ・ダディス・カマラ大尉、CNDD総裁:カマラは9月28日にスタジアムにはいなかったと考えられているが、彼は抗議運動を阻止する企てに関与していた。目撃者全ての証言は大量殺害が大統領護衛部隊によって行われたと言っている。同部隊の指揮カはマラが最終的にとっている。しかもスタジアムでレッドベレーを指揮していたのはカマラの側近であり、個人的ボディーガード責任者のアブバカル・“トンバ”・ディアキテ中尉だった。スタジアムにいた大統領護衛部隊はアルファ・ヤヤ・ディアロ(Alpha Yaya Diallo)軍基地から派遣されており、同基地をカマラは本拠地としている。更に虐殺とレイプに直接に関与していた部下の誰に対しても、カマラは懲戒処分若しくは責任を問う手続きを開始していない。

 

アブバカル・“トンバ”・ディアキテ中尉:HRWの聞き取り調査に応じた多くの目撃者は、トンバがスタジアムに物理的に存在し、そこで虐殺と手当たりしだいのレイプを実行した大統領防衛部隊の直接の指揮に当たっていた、と言明していた。部隊が大量殺人や手当たりしだいの性的暴力を実行するのを止めさせようとして、トンバが何か試みた証拠は全くない。

 

マルセル・クブギ中尉(Lieutenant Marcel Kuvug):クブギはディアキテの副官であり、時折カマラの個人的運転手をつとめている。政府反対派指導者数人を含めた目撃者は、クブキがスタジアムにいた政治的政府反対派指導者を襲撃し、繰り返し殺すと脅したと言っている。政治的指導者たちはスタジアムから応急処置のため診療所に連れられて行った時、車の外に出たら発砲して手榴弾を投げつけると、クブキが脅し治療を受けさせないようにした、と語った。

 

クラウデ・“コプラン”・ピヴィ大尉、大統領警護担当大臣:虐殺当時ピヴィがスタジアムにいたかどうかについては相反する報道がされている。目撃者はピヴィが、9月28日夜の政府反対派指導者の自宅に対する襲撃、そして翌日以降の政府反対派が多数派である近郊への暴力的襲撃に参加した、と申し立てている。

 

ムサ・ティエグボロ・カマラ大尉:麻薬密輸及び重大犯罪との闘い担当国務大臣として、ティエグボロはスタジアムで虐殺に参加した精鋭憲兵部隊を指揮している。目撃者はティエグボロがいたと言明しているし、また憲兵がスタジアムへたどり着こうとする抗議者を止めようとして、群集に向かって2~3回で発砲し少なくとも3名の抗議者を殺害するなど、様々な事を行っていたとも述べている。大統領護衛部隊に比べれば殺人とレイプへの関与の度合いが低いものの、憲兵部隊はその後スタジアムの虐殺に参加した、と目撃者は述べた。少なくとも72名の抗議者が憲兵部隊に拘束され、拘束された者は激しい虐待に遭ったと語っている。

 

国際調査委員会と刑事的説明責任の必要

9月28日とその翌日以降、ギニア治安部隊、とりわけ大統領防衛隊が行った犯罪の質の重大性を鑑み、国際社会は強い対応をとるべきである。HRWはアフリカ連合、西アフリカ諸国経済共同体(ECOWAS)、EU、国連などに以下のことを求めた。

 

ECOWASが提案し、国連事務総長・潘基文が既に設立した、9月28日の事件に対する国際調査委員会が、その調査を実行し速やかにその結果を公表するための資金を直ちに獲得できるよう、全面的に支援すること、及びギアナ当局のその調査に全面的に協力するよう強く求めること。

 

ギニア当局が行った犯罪とその隠蔽工作の命令を下した者、若しくは指揮命令系統上の責任を負うべき者を含む容疑者に対する、国際的基準に沿った公正で効果的な訴追に結びつく、速やかで中立かつ公正で公開された刑事捜査が行われるよう保証することを、ギニア当局に特に強く求めること。ギニア当局がそのような捜査や訴追を保証しない場合、ギニア政府、アフリカ連合、西アフリカ諸国経済共同体、欧州共同体、国際連合は、国際刑事裁判所(ICC)規定の必要条件に該当するならICCによって行われることを含めた、国際的捜査と訴追を全面的に支持するべきである。ギニアはICCの締約国であり、ICCは締約国領土内で起きた虐殺・人道に反する罪・戦争犯罪に関して裁判権を持っている。9月28日の虐殺と手当たり次第に行われたレイプを受けてICC検察官は、ギニアが検察官事務所によって予備調査されているということを明らかにした。予備調査は捜査開始に先行している可能性のある局面である。

 

HRWは明らかにした事実に関する全面的なレポートを公表する計画である。しかし行われた人権侵害の重大性と、人権侵害を行った者たちを裁判に掛ける国際的な行動が緊急に必要であることから、HRWは現在調査での中心的な発見事実の要約を公表している。

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