東京で観たフェルメールの絵画

昨年の秋に国立新美術館でフェルメールの本物の作品「牛乳を注ぐ女」を観た。
今年の秋は東京都美術館で7つの作品を観た。

ワイングラスを持つ娘

2008-10-31 07:13:02 | vermeerの絵画

オランダは風景画と並んで、風俗画の傑作を多く残している。
フェルメールもまた風俗画家として頂点を極めた画家である。
まばゆい光の点描の美しい作品は、観る人をひきつけてやまない。
今回の東京・上野の東京都美術館で開かれているフェルメール展~光の天才画家とデルフトの巨匠たちにも展示されている。

風俗画というのは、人々の談笑や家事など日常の点景を描写したもので、それほど大きな絵はない。

遅々として進まない人の列は、ようやく4枚目にたどり着いた。
なぜか列の人たちは、息を殺したようにすすむ。「ワイングラスを持つ娘」だ。



キラキラ光る朱のスカートをまとい、
絵を見る者に笑顔を向ける娘が圧倒的な存在感だ。
ワインを勧める男、部屋の隅には振られた男。

ワインと男女は、17世紀中葉期過ぎの、オランダの日常風景だという。
フェルメールの目指してきた風俗画としては、完成度の高い作品といわれている。


オランダではなぜ、風俗画が多く書かれたのか。
当時のヨーロッパでは、宗教的にはカソリックが主流で、
多くの教会、王侯貴族・富豪がスポンサーとなって、
神話・寓意を題材にした物語画が求められ、絵画市場を形成していた。

それに対し、オランダの宗教はプロスティタンティズムの宗教で、
聖像は否定されていた。
したがって物語画の需要は見込めない事情があった。

オランダでは、教会に飾るような大きな絵ではない、台所や市場で働く人々や書斎、室内での人々の日常を題材にした風俗画が多く描かれる様になった。
とくにデルフトのような地方都市では、一般家庭でも飾れる小さな絵が求められたのだろうと、小林教授はいう。

なお、このフェルメール鑑賞ブログを書くについては、昨年秋に国立新美術館で「牛乳を注ぐ女」を観たさい、幸運にもフェルメール研究の第一人者・小林頼子教授の講演を拝聴する機会に恵まれた。その後、氏の研究論考本を幾つか読ませていただき、そのメモを基にしていることを、お断りしておきます。


小路

2008-10-27 21:44:00 | vermeerの絵画

オランダは風景の美しい国として知られている。
東京・上野の東京都美術館で開かれているフェルメール展~光の天才画家とデルフトの巨匠たちにも、
ヤン・ファン・デル・ヘイデンの運河の作品など、いくつかの風景画が展示されている。

フェルメールはオランダの真珠と言われる古都・デルフトに1632年に生まれ、
1675年に43歳でなくなるまで、生涯ほとんどこのデルフトで過ごしたといわれる。

フェルメールの風景画は2点しか残されていない。
一つは最高の名品と言われる「デルフト眺望」。
そしてもう一つは、いま目の前にある「小路」。



絵の前には七重八重の人垣、この小さな絵は後ろからでは見えない。
ほとんど進まない最前列でわずかに絵に近づく。

前面の白い部分には、幾重にも絵具を塗り重ね光を描き出している。
赤レンガにも、近くで見なければわからない光の点描が施されている。
街が、歴史が一瞬、静止したような静謐が支配する作品だ。

10月26日の夜、テレビ東京の「美の巨人たち」では、この「小路」の特集をやっていた。
「小路」に描かれた場所はどこか、デルフトの町の歴史をたどりながら訪ねる。
実在した場所なのか?画家の心の景色なのか?
この絵にフェルメールが秘めた想いに迫る。

なお、このフェルメール鑑賞ブログを書くについては、昨年秋に国立新美術館で「牛乳を注ぐ女」を観たさい、幸運にもフェルメール研究の第一人者・小林頼子教授の講演を拝聴する機会に恵まれた。その後、氏の研究論考本を幾つか読ませていただき、そのメモを基にしていることを、お断りしておきます。

ディアナとニンフたち

2008-10-25 08:08:47 | vermeerの絵画

フェルメール展~光の天才画家とデルフトの巨匠たちが東京・上野の東京都美術館で開かれている。
一挙7点も展示された貴重なな展覧である。

この夏、吉永小百合さんのシャープの薄型TVのCM「世界の名画ギャラリー」で
鮮やかブルーととに映し出される「真珠の耳飾りの少女」の作家
ヨハネス・フェルメール(Johannes Vermeer1632年~1675年)は、
17世紀にオランダで活躍した風俗画家。

はじめは神話・物語画家として出発、やがて風俗画家へと転向していく。
風俗画といってもフーゾクではありません。
「オランダの風俗画」というのは、美術史の上で一定の地位を占めており、
今回の上野の展覧会にもいくつかの有名画家の作品が掲示されている。

絵の前の列はほとんど動かない。静かに息を殺してそろそろと進む。
ようやく次ぎの作品の前に来た。



「ディアナとニンフたち」--これも神話を基にした物語絵画である。
本格的に風俗画家に進む前の作品とされている。

なお、このフェルメール鑑賞ブログを書くについては、昨年秋に国立新美術館で「牛乳を注ぐ女」を観たさい、幸運にもフェルメール研究の第一人者・小林頼子教授の講演を拝聴する機会に恵まれた。
その後、氏の研究論考本を幾つか読ませていただき、そのメモを基にしていることを、お断りしておきます。


マリアとマルタの家のキリスト

2008-10-23 21:04:55 | vermeerの絵画

連休を使って東京・上野の東京都美術館に行ってきた。
昨年秋の国立新美術館で観た「牛乳を注ぐ女」、
今秋の東京都美術館で観た「小路」など、
7点のフェルメールの本物絵画を鑑賞した。

フェルメールの本物絵画は全部で32点しかない。
(この他真贋未定が4点)これらの作品が
世界中の美術館に点在している。
日本に居ながら8作品に逢えるなんて、
もう2度とないだろう。

フェルメール展~光の天才画家とデルフトの巨匠たち
が12月14日まで開かれている。
休日のせいもあって、会場は混んでいた。
入るころは待ち時間はなかったが、
出てみたら入り口は行列「待ち時間40分」の表示。

1階は17世紀オランダの風俗画家たちの作品が20数点あったが、
パスしてフェルメール作品展示の2階へ。
5重くらいに人の列が、作品の前に並びほとんど動かない。

ようやく最初の絵の前に来て、音声ガイドを操作しても音が出ない。
取り替えに戻ったらまた並び直しになる。
絵の脇にいた警備の女性に話し、係りに連絡し取り替えてもらい、
ようやく落ち着く。

始めの作品は「マルタとマリアの家のキリスト」
現存作品のうち、最も年代の古いとされる作品だ。



フェルメールの絵画的主題が風俗画に移行する前の、
時期の書かれた宗教を題材にした物語画である。
比較的大きな作品だった。

ひざまずく女性の赤い着衣の光、
パンを勧める婦人の黄色のスカートの光を強調し、
三人を鮮やかに描き出している。

なお、このフェルメール鑑賞ブログを書くについては、昨年秋に国立新美術館で「牛乳を注ぐ女」を観たさい、幸運にもフェルメール研究の第一人者・小林頼子教授の講演を拝聴する機会に恵まれた。その後、氏の研究論考本を幾つか読ませていただき、そのメモを基にしていることを、お断りしておきます。