諏訪山岳会公式ブログ

諏訪地域の山好き、クライミング好きが集まって、ウラヤマからヒマラヤまで四季を通じてオールラウンドに活動しています。

年越し山行

2022年01月25日 | 雪山
2021 年越し山行
ルート:穂高 明神岳 西南尾根
日時:12月30~1月3日
メンバー:Y田、U山
 
年末年始に明神から奥穂を目指して入山しましたが、ラッセルと悪天に阻まれ明神のピストンにとどまりました。しかし、自分たちなりにベストを尽くした悔いの無い山行ができました


<明神主峰>

 

12月30日 雪

4時半に諏訪を出発。沢渡で共同装備分けとパッキングを済ませたところ、Y田君のモンベル100リットルザックがやけにでかい。中身を確認し、ギア類を半分ほど減らしてもらう。出発前の打ち合わせで衣類の確認はしたが、登攀具や食料まで目が届かず、出発直前の調整となってしまった。
6:30 にタクシー(予約)に乗り釜トン入り口へ。補導所で女性の県警救助隊員から土日(1、2日)は荒れそうだとの情報をもらう。
 
釜トンを抜け、くるぶし程度の雪道を歩き8時半過ぎに上高地着。



河童橋を渡ってワカンを履き、そこから小1時間で岳沢入口。登山道にトレースは無く本日は我々の一番乗り。


<岳沢入口>

赤布を追ってひざ下程度のラッセルで進む。



途中、倒木帯で道を失って時間をロスし、予定時刻を1時間以上オーバーして西南尾根取り付きの7番標識に到着した。


<西南尾根取り付き>

西南尾根は急な斜面が続くのでアイゼン+ワカンのコンビネーションで出発。が、雪が少ない所ではワカンが固い雪面にあたって歩きづらいので途中からワカンを脱ぐ。



15:30に尾根中の数少ない平坦地に着いたところで行動終了。標高は2000mを少し超えたところで初日のテン場予定地の遥か手前だがこのラッセル状況では致し方ないところ。また、期待していた後続パーティーもなく、どうやら明日以降も二人で地道に登路を切り拓くしかなさそうだ。

 
今回、食料は完全に個別の個人任せにしたが(火器も個人持ち)、この晩は若く体力みなぎるY田くんの100リットルザックから巨大(?)なSPAM缶が出てきたのには驚いた。それどころか、この日以降もイナバのカレー缶をはじめとする缶詰が続き、自分の冬山食糧の常識はすっかり覆されてしまった。

 
諏訪 4:30-沢渡 5:45- タクシー乗車 6:30- 釜トン入り口 6:50~ 上高地 8:43~ 岳沢登山道入り口 9:46~ 7番標識 11:56~ 2000m テン場 15:30
 
 
12月31日 雪 風強し
 
空が白み始めると同時にラッセルを開始、2300m手前の傾斜が強い疎林帯は雪崩を警戒して念の為ロープを出す。


出発後約1時間半でFixロープが張られた痩せた岩稜帯が始まる。ここには数十年前と同様にダンラインやトラロープが張られているが、中にはそれほど古く見えないものもある。一体誰が張り替えているのだろうか?


<Fix帯>

Fix帯の先は再び雪が増え、ワカンを履く。標高を上げるにつれ、積雪量は減るがそれに反比例して風が強まる。

13:00にほぼ森林限界と思われる地点に到着。そこには、今夜のねぐらにどうぞと言わんばかりの整地(テン場跡)があるのだが、風が強くて、テントを張る気になれない。空身で少し上の様子も見に行ってみたが、どこもかしこも強風で次のテン場候補地(5峰台地)も似たような状況だろうと前進を断念。かといって、下るにしてもFix帯の終点付近まで下らないとテン場はなく、そこまで下るのはもったいない
そんなわけで、少し強引だったが近くの風がやや弱い斜面に入って斜面を切り崩し、床の拡張工事を行ってテントを設営。テントに転がり込んでようやく一息をついた。


<森林限界付近のテン場>

この夜は強風が続き、谷側に寝ていたY田くんは何度か体が浮き上がったとか。 山側に寝た自分は、斜面とテントの間に吹き溜まった雪に押される程度だったが、闇の稜線を吹き抜ける風の唸りにしばしば眠りを覚まされた。

テン場 6:45~ 初日のテン場予定地 8:15~ 森林限界 2400m 付近 13:00~ テン場造成開始 13:30~ テント設営完了 15:00
 
 
1月1日 雪 後 一時晴れ
 
この日も4時に起床。今日は元旦なのだが霜に覆われたテントの中ではそんな実感は全く湧かない。
食事を済ませ、いろいろ片づけ始めたが、相変わらずの強風でテントを撤収する踏ん切りがつかない。するとネットでSCWを見ていたY田君から、昼ぐらいから降水確率が下がって風も弱まりそうとの情報。そういうことなら昼までテントで様子を見るかと畳んだ寝袋を再度広げた。

昨日段階では、この日は最悪でも明神近辺までテントを前進させ、奥穂まで抜けられずとも、前穂を踏んで帰りたいと思っていたが、その前進も怪しくなったので寝袋の中でプランを練り直す。
いくつかの案が浮上したが、テントの設営撤収や最終下山日の悪天予報をあわせ考えると、前穂まで足を伸ばすには時間が少々タイト。最終的にはテントを進めずに現在地から明神主峰をピストンするという確実性重視のプランに切り替えた。
 
10時を過ぎると風の息の間隔も長くなり、空も少し明るくなってきたので寝袋から抜け出す。 Y田君に計画の変更内容を伝え、軽い昼食を取って、5峰台地付近までの偵察に出発。
 
テン場から5峰台地は思ったより近く、30分ほどで到着。この頃から時折ガスが切れて視界が効くようになってきた。


<5峰台地>

それならばと、さらに5峰ピークを目指すと登るにつれて次第に天気は良くなり、ピークでは青空の下、明日歩く明神の稜線や上高地方面の展望を得ることができた。


<5峰ピークから明神主稜を望む>
 
2時間ほどでテントに戻り、一息ついたところで会に計画変更のメールを送信。ほどなくしてH松さんやF倉さんから返信が入り、お二人とも、明日の午後から天気が下り坂であることを教えてくれる。どうやら、天気の崩れが半日ほど前倒しになっている模様。そうすると、明日もここに泊まったらまた強風の晩を過ごすことになるので、明日はピストンから帰ってきたらテントを畳んで一気に上高地まで下ってしまおうということになった。
 
それにしても冬の穂高で、こんなに良い電波状態でメールをやり取りしたり天気予報を見たりということが信じられない。少なくとも10年前は主稜線であってもところどころに電波が通じる場所があるという程度だったし2年前の入山時もこれほど電波状況が良かった記憶が無い。そんな電波状況に驚いて、初めて冬の穂高からメールを送信をしてみたのだが、ごくごく普通につながり、下界と変わらずやり取りができる。冬の穂高も様変わりしたものだ。
 
寝袋に入る時点では静かだった山にも、夜半を過ぎてから再び風が吹き出した。
 
テン場 11:15~ 5峰台地11:45~ 5峰ピーク12:30~ テン場13:15
 
 
1月2日 晴れ 風強し 後 雪
 
昨日ほどではないが、再び強風がテントを揺らす。だけど、空を見上げれば満天の星。出発をためらう理由はない。
昨日のトレースの終了点付近で夜明けを迎えられるようにと5:40出発 。ほぼ目論見通りに4峰への登りで夜明けを迎える。風が強いことを除けば絶好のアタック日和で展望は抜群。富士山、南ア、白山 まで一望のもと。

<4峰への登り>

前回来たときは4峰、5峰は稜線から随分下をトラバースした記憶があるのだが、現在は夏道がほぼ稜線通しにつけられていてその痕跡をつなげて歩く。各峰間のコルの宮川側はいずれも風を避けられる日だまりになっていて、3峰取り付き(3、4峰のコル)でポカポカの小休止をとる。


<3峰~主峰>
 
3峰をY田君のルーファイで超え、2峰のピーク手前の懸垂ポイントに到着。


<2峰、主峰>

そこから2回の懸垂で1, 2峰のコルへ。ここは帰りに登り返すので、2回目の懸垂ロープは回収せずにトップロープ状態にしておいた。(我々の2回目の懸垂支点は昔のものだったようで、現在の支点より10mほど上だった)。


<2峰を懸垂下降する>

コルから岩がぐずぐずの歩きにくい斜面を一登りして、9時40分に明神主峰に到着。
目の前には本来歩くはずだった前穂~吊尾根~奥穂のスカイラインが空を切り少し悔しい思いをするが、あまり良いとは言えないコンディションの中、なんとか一つでもピークを踏めたことは素直に喜ぶべべきことだろう。

 
<明神主峰から 吊尾根(左) 焼岳方面(右)>
 
帰りの2峰の登り返し1P目はトップロープにも関わらずけっこう苦労してしまう。本当に自分は何十年も前にここを全装背負ってリードしたのだろうか?。


<2峰登り返し 1P目>

2P目のリードは山田君にお願いする。車に置いてきてもよかったボールナッツが良く効いていました。


<2峰登り返し 2P目>

ロープを畳んで3峰に向かう頃には早くも雲が広がりだして天気は下り坂。
3峰の下りは懸垂でロープが回収できなくなった苦い思い出があるので、スタッカットでクライムダウン。 日が射さない強風の稜線のビレイで体が冷えてしまい、自分の番では体がこわばって時間がかかってしまった。
4峰から先は、先行するY田君にどんどん引き離されて追いかけるのに必死。 律儀なY田君はちょっと歩いてはU山を待ち、またちょっと歩いては・・・の繰り返しになってしまい申し訳ないことをした。

 
13時過ぎにテントに戻り、大休止後、テントを撤収。小雪が舞い始める中、14:30に下山開始、来た道をひたすら下る。

下りは登りに比べて積雪量がかなり増えていて数割増しから所によっては倍はある。この二日間、強風の上部では分かりにくかったが、結構降ったんだなと実感する。
下りもY田君が先行といえば聞こえはいいが、すなわち下りのラッセルの大半はY田君にやってもらってなんとかヘッデン無しで歩けるギリギリの17時前に岳沢登山道に合流。

 
ここから先は傾斜もなくなり雪も深くなるのでワカンを履き、ヘッデンを点けてラッセル再開。しかし、太ももまで潜る雪のラッセルは容易ではなく、おまけにヘッデンが照らし出す空間は雪面が白く光るばかりで赤布は容易に見つからない。
こんな状態なので ”あと5分も動いたらテント設営を切り出そう” と決め、形ばかりに足を前に出していたら倒木の先に大型の獣の足跡が見える。動物のトレースは往々にして合理的なラインをとるので、しばらくそれを追ってみようと足跡に合流しそのまましばらく足跡を辿ると足跡の脇に規則的に10cmφぐらいの丸い跡があることに気がついた。やがてそれがストックで突いた跡で、足跡はヒトのもの、すなわちトレースであることを確信。ラッキー!これで今夜は上高地で寝られる。


<希望のトレース>

そこから2時間弱、Y田君が踏み固めてくれたトレースを足元だけ見つめてひたすらたどり、19時に雪降りしきる上高地に無事到着。
疲れた体に鞭打って、最後の晩を過ごすテントを設営。あとは水作って、食って、寝るだけ。明日は時間を気にせず寝ていよう。
 
テントに入って一息ついたところでふと思う。もしもいつもののんびりパターンでこの日も森林限界に泊まったとしたら、この降り方では雪も増えるし、岳沢登山道のトレースも跡形もなくなってしまい、テン場から上高地までこの日の倍、あるいはそれ以上の時間がかかってしまったかも。すると、下手をすると明日中の下山はきわどかったのでは。そのことに気づいて、即、 H松さん、F倉さんへのお礼のメールを打ち始めた。
 
テン場 5:40~ 4峰 7:30~ 明神主峰 9:40~ テン場 13:15~ 撤収出発 14:30~ 岳沢登山道合流 16:50~ 岳沢登山道入口 18:30~ 上高地 19:00
 
 
1月3日 雪

 
テントの外は雪がけっこう強く降っていて、昨日のうちに上高地まで降りてきて大正解。
 
帰りのバス(松本-高山線)の時間を確認し、それに合わせて10時に上高地を出発。
出発後間もなくして先行するY田君の姿は見えなくなり、いつもならダラダラ歩きになってしまうところだがこの日はタイムリミットがあるのでそれなりに頑張って歩く。
 
釜トン入り口に12時前に到着し、年越し山行は無事終了。バスには余裕で間に合った。
 
正月の帰省客でそこそこ混んでいるバスに乗り込んで沢渡まで¥1,000/人。
バス待ちの時間を考えると、3人パーティーなら釜トン入口で待機しているタクシーに乗った方がお得です。
 
 
上高地 10:00~ 釜トン 入り口11:55
 
 
以上

 


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