日本中央競馬会(JRA)は来年、指定された5レースの1着を当てると払戻金が100円あたり最高2億円になる「5重勝単勝式」の新馬券を導入する。JRAの年間総売り上げは平成9年の4兆円をピークに減り続け、グランプリレースの有馬記念(中山競馬場)が行われる26日に全日程が終了する今年も前年の2兆5900億円を下回るのはほぼ確実。サッカーくじの「toto」、競輪の「チャリロト」などに続き、億万長者の夢を提供することでV字回復を期待するが、新たなファン獲得の呼び水になるか疑問視する声もある。(松本恵司) ◆最高200万倍 新馬券の愛称は「WIN5」で、来年4月24日から導入される。インターネット投票でのみ購入可能(1票100円)とし、対象レースは原則として日曜開催のメーン、準メーンなどが設定される予定。方式は購入者が予想する「完全セレクト」、コンピューターが選ぶ「ランダム」、この2方式を利用する「一部セレクト」で、3方式の発売票数を合算した上で払戻金を算出する。的中票がなければ次回に繰り越されるため、最高200万倍の高配当が実現することになる。 ◆手本はサッカーくじ 的中の確率は、全5レースが最多の18頭立てのケースで188万9568分の1。JRAの小畠薫理事は「少ない額で大きな配当が得られる宝くじの感覚で買ってもらえれば」と新たなファンの参入に期待する。 JRAが手本とするのは、サッカーくじのような劇的な回復だ。サッカーくじは平成13年度に642億円以上を売り上げたが、18年には134億円まで落ち込んだ。ところが、試合予想を必要としないビッグを導入したところ、最高当せん金が6億円とあって人気を集め、20年度には約897億円を記録した。うち、8割以上を「宝くじ系」のビッグが占めている。 JRAはこれまでも、1レースの上位3着までを着順通りに予想する3連単など、高配当となる新式の馬券を増やしてきた。競馬本来の魅力である「予想」の枠を外さずに売り上げの回復をもくろんできたが、今回は「宝くじ」の感覚を前面に打ち出した。 ◆新規ファン獲得期待 「競馬は予想することが楽しみ」と位置付けるファンが少なくなく、「宝くじ系馬券」の導入がファンに受け入れられるかは未知数だが、競馬評論家の須田鷹雄氏は「3連単の導入で売り上げの単価を減らした経緯はあるが、新規のファンを増やし、全体のパイを大きくするには効果があると思う」と評価する。 ギャンブルは不況に強いといわれてきたが、長引く不況によって「消費者の財布のひもは固く、余計なおカネを使おうとしなくなった」と第一生命経済研究所の永浜利広主席エコノミスト。9月までのデータで、公営ギャンブル全体の売り上げは前年を6?1%も下回り、競馬は7?6%減と厳しい現状が浮き彫りに。最近のギャンブルの主流世代は40代以上と高齢化しつつあり、永浜氏は「競馬は斜陽産業に変わりはない」と断じるが、「2億円馬券」が競馬人気回復の起爆剤になるかが注目される。【関連記事】ディープ産駒が重賞初制覇 ラジオNIKKEI杯 ダノンバラード差し切りV ラジオNIKKEI杯 磯山さやか「お正月は川崎競馬に来て!」 ブエナビスタは1?7倍 有馬記念オッズ ローズキングダムが有馬記念を回避 課題先送りの「日米同盟」 来年はどうなる?
日本中央競馬会(JRA)は来年、指定された5レースの1着を当てると払戻金が100円あたり最高2億円になる「5重勝単勝式」の新馬券を導入する。JRAの年間総売り上げは平成9年の4兆円をピークに減り続け、グランプリレースの有馬記念(中山競馬場)が行われる26日に全日程が終了する今年も前年の2兆5900億円を下回るのはほぼ確実。サッカーくじの「toto」、競輪の「チャリロト」などに続き、億万長者の夢を提供することでV字回復を期待するが、新たなファン獲得の呼び水になるか疑問視する声もある。(松本恵司) ◆最高200万倍 新馬券の愛称は「WIN5」で、来年4月24日から導入される。インターネット投票でのみ購入可能(1票100円)とし、対象レースは原則として日曜開催のメーン、準メーンなどが設定される予定。方式は購入者が予想する「完全セレクト」、コンピューターが選ぶ「ランダム」、この2方式を利用する「一部セレクト」で、3方式の発売票数を合算した上で払戻金を算出する。的中票がなければ次回に繰り越されるため、最高200万倍の高配当が実現することになる。 ◆手本はサッカーくじ 的中の確率は、全5レースが最多の18頭立てのケースで188万9568分の1。JRAの小畠薫理事は「少ない額で大きな配当が得られる宝くじの感覚で買ってもらえれば」と新たなファンの参入に期待する。 JRAが手本とするのは、サッカーくじのような劇的な回復だ。サッカーくじは平成13年度に642億円以上を売り上げたが、18年には134億円まで落ち込んだ。ところが、試合予想を必要としないビッグを導入したところ、最高当せん金が6億円とあって人気を集め、20年度には約897億円を記録した。うち、8割以上を「宝くじ系」のビッグが占めている。 JRAはこれまでも、1レースの上位3着までを着順通りに予想する3連単など、高配当となる新式の馬券を増やしてきた。競馬本来の魅力である「予想」の枠を外さずに売り上げの回復をもくろんできたが、今回は「宝くじ」の感覚を前面に打ち出した。 ◆新規ファン獲得期待 「競馬は予想することが楽しみ」と位置付けるファンが少なくなく、「宝くじ系馬券」の導入がファンに受け入れられるかは未知数だが、競馬評論家の須田鷹雄氏は「3連単の導入で売り上げの単価を減らした経緯はあるが、新規のファンを増やし、全体のパイを大きくするには効果があると思う」と評価する。 ギャンブルは不況に強いといわれてきたが、長引く不況によって「消費者の財布のひもは固く、余計なおカネを使おうとしなくなった」と第一生命経済研究所の永浜利広主席エコノミスト。9月までのデータで、公営ギャンブル全体の売り上げは前年を6?1%も下回り、競馬は7?6%減と厳しい現状が浮き彫りに。最近のギャンブルの主流世代は40代以上と高齢化しつつあり、永浜氏は「競馬は斜陽産業に変わりはない」と断じるが、「2億円馬券」が競馬人気回復の起爆剤になるかが注目される。【関連記事】ディープ産駒が重賞初制覇 ラジオNIKKEI杯 ダノンバラード差し切りV ラジオNIKKEI杯 磯山さやか「お正月は川崎競馬に来て!」 ブエナビスタは1?7倍 有馬記念オッズ ローズキングダムが有馬記念を回避 課題先送りの「日米同盟」 来年はどうなる?