たまたま立ち寄った書店で、茨木のり子の詩集『倚りかからず』を手にとる。
表題作を引いてみる。
もはや
できあいの思想には倚りかかりたくない
もはや
できあいの宗教には倚りかかりたくない
もはや
できあいの学問には倚りかかりたくない
もはや
いかなる権威にも倚りかかりたくない
ながく生きて
心底学んだのはそれぐらい
じぶんの耳目
じぶんの二本足のみで立っていて
なに不都合のことやある
倚りかかるとすれば
それは
椅子の背もたれだけ
言い古されたことでも、大事なことは大事。
いまさら言うまでもあるまい、というのもひとつの判断だけれど、
いまいちど、
各々の内臓に響くような言葉で語りなおさくちゃいけないことだってある。
――そういう思いを年々強める私にとって、
この詩人のきっぱりと背筋の伸びた物言いと、
その伸びた背筋に対する若干の照れとが心地いい。
(サイト内関連記事 →「ドグマ」)
あるいは、こんな一節。
人間には
行方不明の時間が必要です
なぜかはわからないけれど
そんなふうに囁くものがあるのです (「行方不明の時間」より)
魯迅が引用して有名になったという、ハンガリーの詩人の言葉を教えてくれたのも、
個人的にはありがたかった。
絶望の虚妄なること まさに希望に相同じい
(絶望は虚妄だ 希望がそうであるように)
お薦めしたい一冊、であります。
… 茨木のり子 『倚りかからず』 ちくま文庫、2007年。
posted by 堀マサヒコ
表題作を引いてみる。
もはや
できあいの思想には倚りかかりたくない
もはや
できあいの宗教には倚りかかりたくない
もはや
できあいの学問には倚りかかりたくない
もはや
いかなる権威にも倚りかかりたくない
ながく生きて
心底学んだのはそれぐらい
じぶんの耳目
じぶんの二本足のみで立っていて
なに不都合のことやある
倚りかかるとすれば
それは
椅子の背もたれだけ
言い古されたことでも、大事なことは大事。
いまさら言うまでもあるまい、というのもひとつの判断だけれど、
いまいちど、
各々の内臓に響くような言葉で語りなおさくちゃいけないことだってある。
――そういう思いを年々強める私にとって、
この詩人のきっぱりと背筋の伸びた物言いと、
その伸びた背筋に対する若干の照れとが心地いい。
(サイト内関連記事 →「ドグマ」)
あるいは、こんな一節。
人間には
行方不明の時間が必要です
なぜかはわからないけれど
そんなふうに囁くものがあるのです (「行方不明の時間」より)
魯迅が引用して有名になったという、ハンガリーの詩人の言葉を教えてくれたのも、
個人的にはありがたかった。
絶望の虚妄なること まさに希望に相同じい
(絶望は虚妄だ 希望がそうであるように)
お薦めしたい一冊、であります。
… 茨木のり子 『倚りかからず』 ちくま文庫、2007年。
posted by 堀マサヒコ