ああ、医者になりたかった。
将来のことなんて何も考えず、とにかく私は医者になりたかった。
入って目の前に置かれたことをひたすらこなして、それでいいって。
結婚なんてしなくても医者は忙しいから仕方ないって。
意識をやけに高くしなくても年収は一千万円はもらえる。
そんな医者になりたかった。
薬剤師の何がダメとかじゃない。
医者になってから他の何かをつづけられなかったとしても医者だけは何としてでも続けて、それだけで存在価値が欲しかった。
医学部に入るまで努力して、それからはただ与えられたものを頑張るだけでもう十分になりたかった。
私は医者になることをあきらめてからどうも省エネで生きている気がする。
あれは諦めちゃいけなかったのか?
昔は挫折なんて珍しかったけど今じゃ挫折だらけだ。
成功したのいつだろう?思い通りに事が運んだのっていつだろう?
むなしくて仕方ない。
大人になるって苦しいことだと初めて気づいた。
もしかしたら時間はあるが経験のない今だからこそこんなに苦しいのかもしれない。
慣れていく、ともっと楽になるのかもしれない。
分からない。
とりあえずわかるのは、今は極上の幸せじゃないってことだけだ。
でも私に今できることなんてレポートを仕上げて明日一限に間に合うってことだけだ。
今私はネガティブモンスターに襲われているのか?
わからないけど、今じゃ若林でさえ敵に見えるのだ。