テトラクロロエチレン、トリクロロエチレン等の揮発性有機化合物質(VOC)で汚染された
地下水の改良工事について考えてみます。
地下水汚染改良工事とは、地下水に溶出したVOCを除去する工事である。
VOCを除去する工法には、
微生物で分解する工法、
地下水をくみ上げて地下水に溶け込んだVOCを気化させる工法があるが
今日まで実施された工法はVOCを地下水から気化させる曝気工法が主流となっている。
これらのVOCの主な用途は、クリーニング店や金属等の洗浄剤として使用されたもので
ある。
このVOCの主な特徴は、揮発性が高く水よりも重いという事である。水よりも重い為
このVOCが一旦地中に浸透していくと地下水中に波及する為、深くまで汚染が拡大する
事となる。さらに地下水の流れに伴い汚染が拡散されていく事となる。
この改良工事として、汚染された地下水をくみ上げてVOCの揮発性の特徴を利用した
VOCを曝気する工法が採られる。
このため、汚染された地下水を浄化する為には大量の地下水をくみ上げる事が必要とな
る。その結果、次の問題点を引き起こす事になる。
①地下水位の低下により広範囲に渡って地盤沈下現象を引き起こす。
②地下水を長期間くみ上げる事は、つまり遠く離れた汚染された地下水をも引き寄せて
汚染を拡散する結果となっている。
上記①について、もう少し詳細に考えてみよう。皆さん東京下町のゼロメートル地帯と言う
言葉を聞いた事があると思います。これは、地表面の標高が海水面より低い地域の
事を示します。この原因は、高度成長期に大量の地下水の汲み上げにより地盤沈下が
生じて海水面より低くなっているのです。
この沈下が生じた地盤に水を大量に注入しても地盤は隆起しません。すなわち、
一旦地盤が沈下しますとどんな事をしても元の地盤高には戻らないという事です。
くみ上げる量にもよりますが、広範囲に於いて沈下が起きる事により、建物
の傾斜、地下埋設物の切断等の悪影響を引き起こすのです。
次に②に付いて考えてみたいと思います。
何年か前に某ハム工場で使用履歴の無いVOCが確認され製品の出荷が
長期間停止された事は記憶に新しい事と思います。
これは、この工場が長期間井戸水を利用する事により、どこかの遠い所での
VOCにより汚染された地下水を引き寄せた結果と言えるのです。
すなわち、汚染を拡散させた結果と言えるのです。
以上、大量の地下水をくみ上げる改良工事については、事前検討及び
沈下、変位等監視モニターが最も必要である事を強く要望したいのです。
尚、沈下、変位等監視モニターにつきましては次回、詳細に説明いたします。