

定本宋斤句集 夏 4
梅 雨 いまごろの洛北思ふ梅雨椿
梅雨畳漁讀いちめんひろがりて
梅雨はれや河鹿の蠅を大漁す
喜 雨 喜雨のなか草のなか飛ぶ蛙かな
梅雨出水梅雨出水朝のこころを欄に置く
五月浪 さ浪原島かたむいて船を退く
夏の用 夏の川谺をわたる蝶々かな
夏川や船も我が家も白き干す
赤目の滝
瀧 瀧詣り蝉とんぼうのひやゝかに
泉 鳥啼いて雨中あふるゝ泉かな
夏の露 夏の露ひとの垣内をなつかしむ
植 田 植田空浮雲ひとつ大いなり
名張
青 田 青田中桔槹あげて家遠し
早乙女 早乙女やこもこも立ちてまぶしがる
雨なめて早乙女の唇さめ居たる
水中花 あさはかの夏を見するや水中花
蚊 帳 蚊帳賣の浮世ぬからぬ口甞めり
山暮れて青きは蚊帳の燈りけり
ふるさとにまこと歸りぬ㡡の中
早春社移転
蚊 火 去り来れば蚊火の大物なつかしも