白い雨粒、透明な霧雪

気まぐれな物語
脳梗塞後の時間、漂う太陽と月に浮かぶシルエット

冬の終わり

2020-03-19 23:45:11 | 創作
  春の山を登る。上へ、上へ。上へ向かう。つま先に力を入れ、指先で掻きながら。
息は、徐々に荒く、肺にも負荷がかかる。
 途中、立ち止まり、野花に目をやる。スマホで、写真を撮る。小さな黄色い花びら。
4~5か所まとまって咲いている。
 ペットボトルを取り出し、一口水を含む。少しの水が、胸のあたりをひんやりと
濡らす。
 また、歩き出す。スタートして4時間、頂上が近くに見えてきた。
 もう春というのに、少し雪がところどころに残っている。白い綿が、点在している。
少し歩くと、雪が岩肌を覆い尽くしている。その岩のそばから、いくつかの枝が見えた。
 近づいて、よく見ると、梅の花であった。
 白い雪に埋もれながらも、薄いピンク色の花が、顔を出している。
 冷たい雪の中に、春が力強く息づいていた。
 それはまるで、白い衣装に覆われ、赤い口紅に切れ長の目をした女性のようであった。それはとても華やかで、しとやかな装いをした雪の華であった。

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