春の山を登る。上へ、上へ。上へ向かう。つま先に力を入れ、指先で掻きながら。
息は、徐々に荒く、肺にも負荷がかかる。
途中、立ち止まり、野花に目をやる。スマホで、写真を撮る。小さな黄色い花びら。
4~5か所まとまって咲いている。
ペットボトルを取り出し、一口水を含む。少しの水が、胸のあたりをひんやりと
濡らす。
また、歩き出す。スタートして4時間、頂上が近くに見えてきた。
もう春というのに、少し雪がところどころに残っている。白い綿が、点在している。
少し歩くと、雪が岩肌を覆い尽くしている。その岩のそばから、いくつかの枝が見えた。
近づいて、よく見ると、梅の花であった。
白い雪に埋もれながらも、薄いピンク色の花が、顔を出している。
冷たい雪の中に、春が力強く息づいていた。
それはまるで、白い衣装に覆われ、赤い口紅に切れ長の目をした女性のようであった。それはとても華やかで、しとやかな装いをした雪の華であった。
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