キンゾー、と河さんがいった。
「オマエ、なんか天啓のようなものを感じるだろ?」
タミちゃんもだろな、と付け加えた。
そうなんだ。
なんかおかしい。
なにかが弾ける、いや違うな、ゆすっていたテーブルから、カタリと物がおちていく瞬間のゆくりなさといったらいいか。
天啓、あるいは福音に近いのだろうか。
掌をしっかり握っておかないと、一気にうちのめされひっくり返ってしまうような緊迫感が体中に充ちている。
オレのなにかにスイッチが入ったんじゃないか?
痒い、頭と背中が痒くてたまらぬ。
キンゾーさん、どうしたの、とタミちゃんが不審な声をだした。
「なんか、ヘンだよ、オレ。母の地だからなんだろうか、鼻から吸う空気にオレをなにかにいざなうようなアクセレーターを感じるんだ。なんだい、これ。タミちゃん、なんともないかい?」
「わたしもこの淵を見てからなにか感じる。ヘンってのはおかしいわね。うまくいえないけど、いてもたってもいられないような、切迫した焦燥感を感じるわ。せかされて、ワーッと走り出したくなるような…」
「トリガーさ。妖しのトリガーさ」
河さんが、滅多にないクソ真面目な顔つきでいった。
「え、なんです、トリガーって?」
「よし、説明してやろう。そこへ二人とも座れや」
河さんのいうとおり、オレとタミちゃんは適当な石に腰掛けた。
「いいかキンゾー、オマエはな、お母さんのサンカの血を色濃く継承しているんだ。今のオマエの違和感はな、お母さんの血と地がオマエのサンカDNAスイッチをオンにしたんだ。だからトリガー、引き金さ。サンカであることは、生活様式や出自を言うんじゃない。サンカもな、河童と同じ亜種の人間なんだ。今、まさにオマエは目覚めているんだよ。DNAの濃さからいったら、タミちゃんのオヤジ、中山なんかと比較にならないくらい濃いとオレは睨んでいる」
「オレがサンカ?」
「そうさ。最初に会ったときいったろ?妖しい匂いがしたって。それがあったからこそオレはオマエに声をかけた。でなきゃなんで河童でございと現れるかね。タミちゃんもそう思ったろ?」
「そうね。ああ、この人はわたしたちと同じ妖しの仲間だと直感したわ」
「ほらな。オマエは気付いていなかった。オマエ自身のなかにあるサンカDNAに気付いてなかった。どこかでそのDNAにスイッチが入れば、オマエはサンカであることに間違いなく覚醒すると思った。それがこの淵の持つトリガーさ」
ウー、クソ!ますます背中と頭が痒くなってきやがった!
「オマエ、なんか天啓のようなものを感じるだろ?」
タミちゃんもだろな、と付け加えた。
そうなんだ。
なんかおかしい。
なにかが弾ける、いや違うな、ゆすっていたテーブルから、カタリと物がおちていく瞬間のゆくりなさといったらいいか。
天啓、あるいは福音に近いのだろうか。
掌をしっかり握っておかないと、一気にうちのめされひっくり返ってしまうような緊迫感が体中に充ちている。
オレのなにかにスイッチが入ったんじゃないか?
痒い、頭と背中が痒くてたまらぬ。
キンゾーさん、どうしたの、とタミちゃんが不審な声をだした。
「なんか、ヘンだよ、オレ。母の地だからなんだろうか、鼻から吸う空気にオレをなにかにいざなうようなアクセレーターを感じるんだ。なんだい、これ。タミちゃん、なんともないかい?」
「わたしもこの淵を見てからなにか感じる。ヘンってのはおかしいわね。うまくいえないけど、いてもたってもいられないような、切迫した焦燥感を感じるわ。せかされて、ワーッと走り出したくなるような…」
「トリガーさ。妖しのトリガーさ」
河さんが、滅多にないクソ真面目な顔つきでいった。
「え、なんです、トリガーって?」
「よし、説明してやろう。そこへ二人とも座れや」
河さんのいうとおり、オレとタミちゃんは適当な石に腰掛けた。
「いいかキンゾー、オマエはな、お母さんのサンカの血を色濃く継承しているんだ。今のオマエの違和感はな、お母さんの血と地がオマエのサンカDNAスイッチをオンにしたんだ。だからトリガー、引き金さ。サンカであることは、生活様式や出自を言うんじゃない。サンカもな、河童と同じ亜種の人間なんだ。今、まさにオマエは目覚めているんだよ。DNAの濃さからいったら、タミちゃんのオヤジ、中山なんかと比較にならないくらい濃いとオレは睨んでいる」
「オレがサンカ?」
「そうさ。最初に会ったときいったろ?妖しい匂いがしたって。それがあったからこそオレはオマエに声をかけた。でなきゃなんで河童でございと現れるかね。タミちゃんもそう思ったろ?」
「そうね。ああ、この人はわたしたちと同じ妖しの仲間だと直感したわ」
「ほらな。オマエは気付いていなかった。オマエ自身のなかにあるサンカDNAに気付いてなかった。どこかでそのDNAにスイッチが入れば、オマエはサンカであることに間違いなく覚醒すると思った。それがこの淵の持つトリガーさ」
ウー、クソ!ますます背中と頭が痒くなってきやがった!