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自然はしぶとい

2010-09-08 20:05:31 | 日記


この映像は西表島、干立村で撮影したもの。珊瑚で作られた垣根になにげに置かれた湯飲みに植物の根がからみつき閉じ込められている。
湯飲みをおおった植物は「絞め殺しの木」といわれるもの。熱帯や亜熱帯の森によくみられる。でかい樹木に絡みつくツタ植物の総称で、単独の種類ではない。成長はめちゃくちゃ早い。
熱帯雨林は、温度が一定しており、水分がたっぷりある。だからさまざまな種類の生物が住んでいる。生物多様性の代表のような生態系。熱帯雨林はそういう多様な生命が仲良く暮らしているパラダイスかというと、これがそうとも言えない。
熱帯雨林においては、太陽の光をめぐる競争がある。早く成長して先に枝葉を伸ばしたものが光を独占する。その樹木の陰になったものは光を得ることができなくて成長ができず、枯れてしまう。
そういう環境においても生きるすべをもった生命もちゃんといる。日の光をそんなに必要としないシダ類や、直射日光を浴びると乾燥してしまうコケ類などは日陰で生きてゆく。
絞め殺しの木は光を求めるために自前で幹を高くすると言うことをしない。でかくなった木に巻き付き日の当たる場所にエネルギー生産ユニットである葉を持ってゆくのだ。
西表島などの亜熱帯ではそうでもないが、アマゾンの熱帯雨林では、絞め殺しの木におおわれた樹木が枯れてしまい、中ががらんどうになったものなんかがある。結果的に単独では光を得ることができないツタ植物がお互いにささえあって樹冠まで伸び、光をうけ生息しているのだ。

アンコールワットが象徴的だが、文明はそのダイナミズムを維持できなくなったらあっという間に自然に飲み込まれる。
グローバリズムのように地球を覆い尽くした文明とアンコールワットを同一に扱うことはできないが、自然の力はすごいよ。

もうひとつ
熱帯雨林はその内部にものすごい競争の世界があって自然淘汰が働きまくっているのだけれど、具体的な「共生」のかたちでもある。
森の中における光をめぐる競争はすごいが、いっぽう森という生態系全体で水分を保っている。光をめぐる競争に勝った植物だけが繁茂しても森という生態系は保てない。
たとえばコケ類は大木に日差しを遮ってもらっているので林床で生きているし、コケのような生命がいなければ、森全体の水分を保つことは難しい。
そもそも、海にいた植物が何億年か前、陸上に進出したのはいろんな植物が川辺に小さな森を作ったことが始まりである。競争をしながらも自分たちが生き延びてゆける環境をみんなで作った。それも共生である。「花」と「昆虫」のようなWin Winのような関係だけが共生ではない。熱帯雨林には競争、共棲、寄生などありとあらゆる生命同士の関係がある。
生命の過去の事実をたどれば競争と共生は矛盾していない。

「文明」あるいは「文化」=「人間の営み」と「自然」は対立項と考えられる傾向があるが決してそんなことはないようにおもう。
人間の営みは自然の一部だ。

宇宙に人格があるとしたら、その内部で起こっている新しい経験に打ち震えているかも知れない。

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