今まで、気づいてはいたのだが、気にしなかったことがある。それはひげである。
何年か前の休みの日だった。鏡を見ている時に、ひげが所々白くなっているのに気がついた。ぼくは、休みの日にはあまりひげを剃らないでいることが多い。その日もひげを剃らないでいたのだが、それで目立ったわけだ。まあ、その頃は髪の方に神経が行っていたので、ひげをあまり気にすることはなかった。
ところが、最近つとにそのことが気にかかるようになってきた。ひげを剃ったあとに鏡を見ると、黒いひげはきれいに剃れているのだが、白いひげがうぶ毛状に残っているのだ。最初はそれをチキン肌か何かと思っていた。しかしよく見ると、それは紛れもなく白いひげである。
愕然とした。
「いよいよおれも終わりかなあ」と、年齢の重みを考えるようになった。
年齢の重み、そういえばこれも気がついていたが気にしてなかった。そうか、あと15年でぼくも60歳、すなわち老人の仲間入りである。
今から15年前というとぼくが30歳の時だが、それから今日までを振り返ってみると『あっ』という間だったと言える。それを思うと、60歳になった時、45歳からの15年を振り返る時は『あ』もないくらい早く感じることだろう。
そういえば、ぼくの30歳から45歳までというのは、いつも次の休みのことばかり考えている人生だった。
「45歳にはこうなっている!」などというビジョンも持たずに、ただのうのうと生きてきただけだ。その結果が、白ひげに悩むおっさんである。
さて、15年後のぼくは、どんなことに悩むじいさんになっているだろうか。まさか、下の毛が白くなったと言って、大騒ぎしてはないだろうなぁ。そのへんのことは、「頑張る60代!」に詳しく書くだろうから、15年後を楽しみにしておいて下さい。
ところで、最近は、黒いひげと白いひげの割合が逆転してしまっている。髪とひげを伸ばしたら、おそらく仙人みたいになるだろう。
そうだ!いっそ「60歳には仙人になっている!」というビジョンを描いてみることにするか。
しかし、その際、どういう自分の姿を想像したらいいんだろう。雲に乗っている自分は現実的ではないし、霞を食べている自分は飢えを意味しているようで嫌である。しかも、仙人というと、何か大変な修行を強いられそうだ。やはり、何ものにも束縛されず、飄々と生きている自分を想像するのが一番楽でいい。
ということで、これからは
「60歳には飄々じじいになっている!」というビジョンを描くことにする。そういうことなので、
「果たしてその時、職はあるのだろうか?」という野暮なことは、もう考えないことにする。
それから20年経って、飄々じじいにはなってないが、かろうじて職だけはある。
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