吹く風ネット

隣の町の話

 福岡県に芦屋という地名がある。兵庫県の芦屋と違って、ここは市ではなく町である。
 歴史や茶の好きな人は「芦屋釜発祥の地」、ギャンブルの好きな人は「芦屋競艇」のある所、と言えばお分かりいただけるだろう。

 ここは昔から異質な場所であったと聞いている。古くは、陰陽師「芦屋道満」と密接な関係があったと言われているし、当時兵庫県の芦屋は、筑前芦屋の出先であったとも言われている。
 また、ここには「芦屋念仏」なるものがあったと伝えられている。そういえば、今でも芦屋は人口のわりにお寺が多くある。これもその言い伝えの裏づけになるのだろうか。

 さて、その芦屋には城山という小高い山がある。高貴な方の陵だとか、古戦場だったとか、いろいろな説がある。霊能力のある人は、そこに行くと「何かを感じる」と言う。地元の年寄りの話によると、そこに家を建てたりすると、その家は必ず滅びるらしい。とにかく、芦屋は、その歴史の古さから、いろいろな伝説を抱えている場所である。

 ぼくが小学6年生の頃だった。ある話題が学校中を駆け巡った。その話題とは、芦屋で起きたある事件の話である。
 ある雨の降っている夜のこと、バス停でバスを待っている一人の女性がいた。運転手はそれを見つけバスを停めた。女性が乗ってきた。バスには他に2人のお客がいた。つまり、女性を含めると、お客は計3人になる。そのバスは「芦屋行き」だった。途中で2人が降りた。「残りはあと一人、あの女性だな」と思って、運転手がミラーを見ると、バスの中には誰も乗ってなかった。そのせいで、そのバスの運転手はノイローゼになった。というものだ。

 この話は有名な話で、ぼくが高校に上がった時、友人にこの話をしたのだが、みなその話を知っていた。まあ、地域によって、天候やお客の人数やその後の運転手がどうなったかというのは違っていたのだが、その行き先はみな一様に、芦屋であった。

 ぼくは社会に出てから、頻繁に芦屋を訪れている。が、行くたびにその話が蘇ってきてしまう。バス停を通り過ぎる時には、いつも「誰も立っていませんように」と祈っている。

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