吹く風ネット

vs.何か

2003年2月9日の日記です。

1,
 昨日、日記を書いた後で、週刊文春に載っていた『八方クロス』というパズルをやっていた。
 解き終えたのは午前2時頃だった。それからすぐに布団に潜り込んだ。
 ところが、なかなか寝付けない。仰向けになってみたり、横になってみたり、いろいろ体勢を変えてみるが、目は冴えていくばかりだった。

 前に、寝付けない時に般若心経を唱えたら、快い眠りに落ちたことがある。それを思い出して、般若心経を唱えてみた。そのお経が何かを呼んだ。
 一瞬、場が変わったような気がした。部屋の中で「バシッ!」という音がする。
『もしかして、これはラップ音か?』
 そう思った時だった。急に体の力が抜け、何かが迫ってくる感じがした。途端、敷布団の感触が背中からなくなった。
 体がフワフワして、だんだん上に登っていく。
『このままいくと天井に当たってしまう。もうだめだ!』
 と思ったら、今度は下に降り始めた。だんだん体が降りていって、布団の感触が背中に戻ってきた。
『今のは何だったんだろう?』
 しばらく考えてみたが、結論は出なかった。

2,
 数分が経った。
 またラップ音がして、何かが迫ってきた。布団の感触がなくなり、体が宙に浮いた。そしてまた元に戻った。

3,
 その繰り返しだった。
 5度ほどその状態になった時、ついにぼくは頭に来て、
「いいかげんにしろ!お前たちの相手をするほど、おれは暇じゃない!」
 と声にならない声で怒鳴った。

 その途端、場が元に戻った。
 窓の外から、バイクが遠ざかっていく音が聞こえた。おそらく、新聞を配達するバイクだろう。
「いったい何時なんだ?」
 と時計を見ると、すでに4時半を回っていた。
 その頃には、早く寝ようという気持ちも萎えていたが、先ほどの体験で疲れたのか、いつの間にか眠ってしまっていた。

4,
 朝になった。
 眠気はないものの、頭の芯が痛い。もしかしたら、あの『何か』が頭の中に入り込んだのかも知れない。
 朝からこんな調子だと、一日が面白くない。
 結局、今日は一日頭痛に悩まされた。お客さんの相手をするのも億劫だった。
「早く帰って寝たい」
 頭の中はそれしかなかった。

5,
『何か』とは何だったんだろう。
 人の体を浮かび上がらせる妖力の持ち主。妖怪か、はたまた霊か。

 霊なら思い当たる節がある。
 以前、この部屋で寝ていた時に、金縛りにあったことがある。ぼくの枕元には、黄色い袈裟を身にまとったミイラ顔の坊さんがいた。もしかしたらあいつか。
 あの時は、ぼくの般若心経が勝っていたのか、サッと消えていった。ということは、夜中のはリベンジか。

 もしかしたら、今日また一戦交えることになるかもしれない。そしてもし、明日の日記が更新されていなかったら、ぼくが負けたということだ。ぼくは霊界あたりに飛ばされているのだろう。
 万が一そうなったら、この日記を恐怖新聞に投稿することにします。

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