2005年4月5日
かつてぼくがいた会社は、毎週土曜日が主任会議、日曜日は部門会議、月曜日は課長会議、というふうに週に三度の会議をやっていて、それらはいつも早朝行われた。
それとは別に、緊急会議というのがあった。ちょっとでも売上げが落ち込んだりすると、責任者を招集し、付け焼き刃的な会議をするのだ。それは営業時間後に行われた。
ぼくがその会社を辞めた年は、ほとんど毎朝毎晩会議をやっていたものだ。
その毎朝毎晩の会議で何をやっていたのかというと、売れない原因の究明と、それに対する施策の検討だ。
まず、売れない部門の担当者が、現状を述べ、施策を発表する。その後で、それについて意見交換するわけだ。
ぼくは、売れても売れなくても体制に影響のない部門にいたため、いつも蚊帳の外だったが、そこに座っているだけというのも辛いものがあった。
会議では、最初の現状を述べるところで、いつも時間を食っていた。担当者に現状から施策を述べさせ、それから質疑をやればいいものを、現状を述べている途中に、トップがその言葉尻を取って何度も口を挟んでくるのだ。
「商品の上にホコリが被っている。だから売れんのだ」とか、
「いらっしゃいませの声が小さい。そんなことで売れると思っとるんか!」などと、
売上げの低迷とは直接関係ないようなことを言ってケチを付ける。そのために、なかなか会議が進まない。
次の施策。彼らは会議になるとちゃんと施策を立てきた。しかし、内容は実にくだらないものだった。トップの突っ込みを避けるために、彼らは「トップ様がいつもおっしゃっているとおり・・」とトップが朝礼などで語った言葉をダラダラと並べ、最後に「頑張ります」で締めくくるのだ。
そんな単純なことに騙されるのだから、つくづくトップはバカである。どうしてそれが中身のないものだとわからなかったのだろうか。その『トップ様のおっしゃるとおり』という言葉を聞いたとたん、現状報告時の威勢のいい突っ込みは、どこかに行ってしまう。聞き心地のよい言葉と「頑張ります」に満足して、最後は決まって「よし、頑張ってくれよ」だった。
そう、担当者は販売に対する施策ではなく、会議に対する施策を立ててきたわけだ。『いつもトップ様がおっしゃっている』ような施策で、売上低迷は改善されるわけもなく、またしても同じような会議が繰り返される。
こういう会議こそ、時間の無駄である。朝からこういった会議を行い、夜また似たような会議を行っている。当然帰りは遅くなる。翌日はまた早朝会議である。
売れない原因は、ホコリや声の大きさにあったのではない。そういった時間の無駄遣いからくる、社員の疲れにあったのだ。つまり度重なる朝晩の会議が、売上低迷を招いていたわけだ。
なぜトップは、そういうことに気づかなかったのだろうか。