吹く風ネット

タッチおじさん(2002年6月2日付)

1,
 うちの店のワークステーションは、富士通製を使用している。マウスパッドにはタッチおじさんの絵が描かれている。
 うちの店長は、そのタッチおじさんによく似ている。

 ぼくのいる売場は、店の入り口の近くに位置している。ぼくがよく行っている事務所や倉庫やトイレは、一番奥の売場のさらに奥に位置している。そこにたどり着くためには、いくつかの売場通り抜けなければならない。

 その途中、お客さんから「あれはどこにあるんですか?」とか「この商品の在庫はありますか」とか、中には「この商品を説明して下さい」といった質問をよく受ける。自分で答えられる範囲であれば応対するのだが、わからないことであれば下手に知ったかぶりなどをせず、すぐに店内放送で係の人を呼ぶことにしている。

 一人終わったら、また他のお客さんに声をかけられることもしばしばで、結局トイレにたどり着くまでに20分を要した経験もある。

2,
 さて、今日の話。
 夕方トイレに行きたくなって、いつものようにいくつかの売場を抜けていった。珍しく、誰にも声をかけられずに最後の売場に来た。が、そこでつかまった。

「すいません。○○という商品はどこにありますか?」
 幸い、その商品のある場所をぼくは知っていたので、お客さんをそこまで案内しようとした。
「こちらです」と、その商品の置いてあるところに目をやると、運良くそこに店長が立っていた。ぼくはラッキーと思いながら、「あっ、あそこに店ちょ・・」と言って詰まった。

 そうである。このお客さんに、「店長」などと言ってもわからないだろう。そこで、何と言ったらわかってもらえるだろうか、と考えを巡らせた。
「ネクタイをしている人」と言っても、そのへんにネクタイをしている人は何人かいる。
「めがねをかけている人」も同様である。

 どう言おうかと迷っている時、口が勝手に動き出した。
「あそこに『タッチおじさん』が立っとるでしょう。そこにありますよ。わからんかったら、あの『タッチおじさん』に聞いて下さい」

 お客さんは急に笑い出した。
「ああ、あの『タッチおじさん』の立っている所にあるんですね」
「そうです。あの『タッチおじさん』が立っている所です」
「ありがとうございました。よくわかりました」と、お客さんは笑いながら、『タッチおじさん』の立っている所に向かって行った。
 やはり、何か特徴を持っている人は得である。いざという時に役に立つ。

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