吹く風ネット

ロングホームルーム

2001年11月27日

1、
 高校の頃、ロングホームルーム(LHR)という時間があった。生徒主体の時間で、下らんことをやっていた。
 よく憶えているのは、2年の時にやったN君について語るものだった。N君とは同級生で、学校はよく休むし、女たらしだし、クラスでは浮いた存在の男だった。
 主旨は『N君の姿勢を正す』といったようなもので、要は吊るし上げだった。

「N君はどうしてクラスに溶け込まないのですか?」
「N君、学校に来て下さい」
「N君は、いつもこうじゃないですか!」
「N君は、こういうところが悪いから直してください」
 N君を嫌っていた人が中心になって発言していた。中には、
「ぼくは友だちとして言うけど」と前置きして、散々悪口を言っている奴もいた。
 ただ、一方的にN君が攻められていたわけではなく、彼も応戦をしていた。

 この『N君の姿勢を正す』は2週続けてやったが、結局はただ悪口を言い合うだけの中途半端なものに終わった。

2、
 LHRの定番に『Xへの手紙』というのがあった。クラスのある人の名前が書かれた紙をランダムに渡され、その紙に書かれた名前の人に匿名で手紙を書いていくものだった。
 ぼくがもらった手紙で印象に残っているのは、1年の時にもらった手紙だった。
「しんた君は変わってますね。人は付き合ってみないとわからないと言うけど、実際はどういう人なんだろう?・・・今彼女を探しているみたいですね。頑張って下さい」と書かれていた。

 書いた人はだいたいわかっていた。ぼくはその人を彼女にしたかったから、何かピンとくるものがあったのだ。友人もその手紙を見て「きっとあの子やろうね」と言っていた。でも、そこから何も始まらなかったのが、今となっては悔やまれる。

3、
 2年の時にもらった手紙は、スキャンダルまがいのものだった。
「以前Yちゃん(当時ちょっと付き合った人。上の人とは違う)と一緒に帰るのを見かけましたが、その後Yちゃんとはどうなりましたか?」などと書かれていた。
Yちゃんと別れて、けっこう時間がたってからもらった手紙だった。
「馬鹿が。何を今頃言いよるんか」とあきれたものだった。

4、
 2年の時、実に下らんことをやった。タイトルは『男と女、どちらが偉いか?』だった。
 こういう内容になると、俄然張り切る女子がいた。男子が発言するたびに、
「それは違う!」と反論する。
 最後には男子対俄然張り切る女の戦いになった。

 あまりに馬鹿馬鹿しいものだったので、ぼくは議論に参加せず居眠りをしていた。すると議長が突然、
「しんた君はこのことについて、どう思いますか?」と聞いてきた。
 ぼくは「おれにふるな」と思いながら、
「こんなの、止めろうや」と言った。
 議長もそう思っていたらしい。結局この議論は、そこで打ち切りになった。

5、
 2年の初めに『このクラスをどういうクラスにしていきたいか?』というのがあった。
 ぼくは、
「そんな計画立てても面白くない。行き当たりばったりだから面白いんやん」と言った。
 この発言について、担任や議長は反論していた。議長はぼくの意見を踏まえて、無理やり
「みんなで意見を出し合い、計画性を持って楽しいクラスにしていきましょう」と言った。
 実際2年の3学期が終わった時点で、議長の言ったようなクラスになったかといえばそうではなく、ぼくが言ったように、
「計画性のない行き当たりばったりの楽しいクラス」になった。

6、
 そんな下らんロングホームルームだったが、ぼくは別に嫌いなわけではなかった。なぜなら、その時間だけは授業がないからだ。生徒主体だから、居眠りしても咎められない。ぼくは授業はよくサボったが、LHRだけはサボったことがなかった。
 今でもあの『Xへの手紙』だけはやりたいと思っている。
 


 

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