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吹く風ネット

沖縄ベイブルー(2)

 その店に入ってまず気づいたことは、全然賑やかさがないということだった。お客もそこそこ入っているし、それ以上にホステスもいるのだが、何かひっそりとしている。BGMも鳴っていることは鳴っているが、全体に音が小さい。「変な店だなあ」と思いながらも、ぼくらは席に着いた。

 ほどなく三人のホステスがやってきた。
「いらっしゃーい」
 その声には明るさがなかった。
「私、○○でーす。よろしくお願いしまーす」  と、各自自己紹介を始めた。
 若作りはしているものの、ぼくたちよりは歳がいっている。
 しばらく談笑していたが、盛り上がらない。いっしょに行っていたメンバーの一人であるGさんが、
「よーし、おれが景気付けに歌ってくる」と席を立ち、ステージに上がった。
 Gさんは調子に乗って3曲ばかり歌った。しかし、拍手の一つもない。こちらのパブなら、いくら下手でも拍手くらいはある。
 Gさんは首をかしげながら戻ってきた。そしてぼくに
「しんちゃん、この店変やねえ」と耳打ちした。ぼくは
「うん」と言ったきり黙っていた。

 あまり静かになったので、ホステスの一人が、
「大人しいですねえ。いつもこうなんですか?」と言った。
 もう一人のメンバーKさんが、
「いや、初めてだから緊張してるんですよ」と答えた。
 すると、他のホステスが、
「まあ、緊張してるなんてかわいい。抱かれてみたいわー」などと言い出した。
 その時、ぼくの隣にいたホステスが、ぼくの腕を触った。
「へえ、腕太いねえ。何かやってるの?」
「むかしちょっとね」と言って、ぼくは力こぶを出して見せた。
「わあ、たくましい。抱かれてみたーい」
 いよいよ変だ。

 もう一人のホステスが、
「ねえねえ、ここを出てどこか行かない?」と言い出した。
 どういうわけか、KさんとGさんは乗り気である。しかし、ぼくは気が進まなかった。そこで、「おれは行かん」と言った。
 どうしても民謡酒場に行きたかったのだ。
「しんた、いいやないか。ちょっと付き合え」と、二人が声をそろえて言うので、ぼくはしぶしぶ付き合うことにした。

「じゃあ、OKね」とホステスは、従業員を呼んで「精算してきて」と言った。
 従業員が持ってきた勘定票を見て驚いた。一人1万円になっている。
「これ、おかしいんやない?」
「ああ、これね。チャージが5千円で、連出し料が5千円なの。ごめんね」
 それほど飲んでないのに1万円の出費である。

 店を出ると、そこに2台のタクシーが停まっていた。どうやらぼくたちを待っていた様子だった。
 タクシーに分かれて乗り込むと、ホステスの一人が「例の所に行って」と言った。3分ほど走って、タクシーは止まった。タクシー代も、こちら持ちである。

 ホステスたちはタクシーを降りると、ぼくたちの腕を掴み、建物の中に連れ込んだ。慌てて入ったので、そこがどこかわからなかったが、中の雰囲気からすると、どうやらそこはホテルのようだった。
 ホステスは「ここから分かれるのよ」と言って、ぼくたちをそれぞれの部屋に連れて行った。

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