吹く風ネット

迷惑電話

2002年4月16日
「しろげ、しんたさんですか?」
「はい」
「初めまして。私、株式会社××の○○と申します。今、お時間のほうよろしいですか?」
「はい」
「今日は、英会話の件で、お電話さしあげたんですけど、しんたさんは英会話に興味はありますか?」

 高校を卒業した頃から、こういう電話が頻繁にかかるようになった。いつも若い女性からだった。英会話だけではなく、他に海外旅行やスポーツ器具などもあったが、ぼくはこういう商売には引っかかったことがない。こういう話には、勘のようなものが働くのだ。

 最初の頃は、そういう応対になれてなかったので、
「まったく興味がありません!」
 と言って電話を切っていたのだが、そのうちそういう電話に慣れてきて、応対に余裕が出てきた。
「しろげ、しんたさんですか?」
 この時点で、相手がわかるようになった。
「そうですが」
「初めまして」
「はい、初めまして」
 彼らも馬鹿ではないから、パターンを替えてやってくる。
「おめでとうございます。私、××商事の○○と言いますが、今回しんたさんが、△△という企画の、◇◇に選ばれました」
「へえ、そうなんですか」
「まず、企画から御説明しますと、・・・」
 延々と彼女の話は続く。ぼくは受話器を机などの上に置き、他の作業をしている。頃合を見計り、受話器を取って、
「よくわかりました」
 と言って、そのまま電話を切るのである。

 だいたい、この手の電話、相手はいつもマニュアル通りに話しているものだ。そこで、マニュアルに書いてないようなことを、こちらが答えればいいということに気が付いた。
 5、6年前だったか、『財テク』に関しての電話を受けたことがある。
「はじめまして、私、××社の○○というものですが、本日は『財テク』の件で、ぜひしんた様にお知らせしたいことがありまして、電話いたしました。お時間のほうはよろしいですか?」
「はい、いいですよ」
「ありがとうございます。ところで、しんた様は『財テク』という言葉を聞いて、何を思い浮かべますか?」
「あなたは、何を思い浮かべますか?」
「えっ?」

 相手はここで途切れてしまう。こちらがマニュアルにないことを言ったからだ。
 それからは、こちらのペースである。戸惑っている相手に、こちらの持論を展開する。
「・・・ということで、あなたも早くこんな仕事から手を引いたほうがいいと思いますよ」
「・・はい、わかりました。本日はありがとうございました」
 相手は早く切りたかっただろうが、充分にこちらの意思を伝えなければならないから、最低3分程度はお付き合いいただくことになる。
 こちらの意思とは何か。それは
「こんな電話かけてくるなっ!!」
 である。ぼくは人がいいから、ストレートに「電話をかけるな」などと言えないのだ。

 最近はこういう電話が少なくなったような気がする。おそらく、電話よりもメールのほうが安くつくという判断からだろうが、そのおかげで、『迷惑メール』というやつが毎日何十通も来るようになった。

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