吹く風ネット

赤い糸の話

 嫁さんと恋愛関係にあった頃、ぼくたちは何度か別れたことがある。その別れ際のセリフは決まって、「ふざけるな!!」だった。『二度とこんな奴と付き合うものか』と思いながら、ぼくは嫁さんとの距離を置いたのだった。
 だけど、それで終わることはなかった。何度別れても、ぼくたちはよりを戻し、最終的に結婚まで至ったのだった。
 運命の赤い糸なるものがあるらしいが、おそらくぼくたちはその糸に結ばれていて、何度別れたとしても、どんな別れ方をしたとしても、結局はよりを戻すことになるのだろう。

 さて、赤い糸で結ばれた人と出会い、運命に引きずられるように結婚する。フィクションでもノンフィクションでも、語られるのはいつもここまでだが、ではいったい、その後の二人はどうなるのだろうか?人も羨むような幸せな家庭を築くのだろうか?愛情いっぱいの生活を送るのだろうか?
 経験から言わせてもらえば、決してそんなことはない。どこにでもあるような家庭を築き、どこにでもあるような生活をするだけだ。もし赤い糸の影響があるとするなら、それは愛情の有無などということではなく、窮屈ではないということだと思う。

   赤いエプロンを着けて、
   台所の向こう側で、
   笑顔でうなずきながら、
   料理している彼女の姿。

  今もぼくたちは二人で、
  ありふれた生活をしてる。
  テーブルのイスにさりげなく、
  かかる赤いエプロン。
  (『赤いエプロン』より) 

 と、まあこんな具合だ。とにかく、ほどこうにもほどけない糸で結ばれている二人なのだから、この先も今日が終わって明日が来るというありふれた生活を、二人で続けていくに違いない。

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