後始末

　朝の記事に、酔っ払いのおいちゃんのオシッコの後始末をしたと書いているが、実はアレ、素手でやったのだ。
　オシッコの後始末するのにはバケツとゾウキンとゴム手袋が必要だ。そこでバックヤードにそれを取りに行った。ところがそこにはバケツとゾウキンはあったものの、ゴム手袋が見当たらなかった。
「どうしようか」と迷ったものの、「しょせん小便だ。大したことない」ということで、ぼくは素手で掃除することにした。

　掃除をやっている際中のこと、様子を見に来たパートさんが、
「しんちゃん、素手でしよると？」と聞いた。
「うん」
「汚いねえ」
「汚いと言ったって、たかだか小便やないね。別に毒薬を触るわけじゃないんやし」
「臭いもつくよ」
「臭い？」
「おいちゃんのオシッコ、すごく臭いよ」
　ぼくは勢いでやっていたので気がつかなかったが、パートさんには臭うらしい。
「ゴム手袋持ってきてやろうか？」
「もういいよ。ここまでやったんやけ」

　掃除が終わり、おいちゃんが帰ってから、その辺を臭ってみると、なるほど臭い。酒飲みの小便の臭いだ。床はともかく、ベンチは木製なので臭いが染み付いてしまうかもしれない。
「明日、また掃除しよう」と、ぼくは手を臭いながら、その場を離れたのだった。


　ところで朝の記事だが、元のタイトルは『おいちゃん、しかぶる』だった。
　九州の人ならわかると思うが、『しかぶる』というのは『漏らす』という意味の方言だ。『まりかぶる』とか『ばりかぶる』などとも言う。