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お話

日々思いついた「お話」を思いついたまま書く

コーイチ物語 「秘密のノート」21

2022年08月26日 | コーイチ物語 1 2) 悪夢  
 漆黒の闇に落ちて行くコーイチの脳裏に様々なものが浮かんでは消えた。
 お父さん、お母さん、先立つ不幸をお許し下さい…… あぁ、観たかったなぁ……『大怪獣オチラ対宇宙怪獣モヘラ』…… 吉田課長、ボクのせいでこんな事になってしまって…… でもすぐ逢えますね、いや、この場合は遭えますかな…… 幼なじみの京子さん、本当は好きでした。とうとう手も握れなかったなぁ…… おばあちゃん、おばあちゃんの握った梅干入りのおにぎりが大好物でした…… あれ、何か聞こえるぞ、電話かな…… もしもし、もしもし、変だな、鳴り止まないぞ……
 …………く、苦しいぃぃぃ ………………
「ぶわっ!」
 コーイチはもがき続け、やっとかぶっていたマントを払い除けた。
 肩ではあはあはあと荒い呼吸を繰り返していた。
 ……ここはどこだ。殺し屋も死神も手品師も清水さんも林谷さんも印旛沼さんもいないし、会社の廊下もないし、えらい事になった吉田課長もいない…… あの世かな…… それにしちゃあ見慣れた感じがする……
 まるでボクの部屋のようだが……
 いいや、ここはまさしくボクの部屋だ! 
 コーイチは我に返った。
 ぼさぼさ頭のまま寝呆け眼であたりを見回す。
 敷布団の上に座り込んでいる。傍らに掛け布団が団子状態で乱雑に置かれている。
 目覚まし時計が座卓の上で鳴っている。
 カーテンを閉め忘れた窓からいつも通りにまぶしい朝日が遠慮なく注いでいる。
 何のことは無い、夢を見ていたのだ。心配が嵩じて、とんでもない夢を見てしまっていたのだ。
 しばし、ぼーっとしたまま天井を見つめていたコーイチはぽつりと言った。
「また行き過ぎた……」

      つづく

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