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霊感少女 さとみ 2  学校七不思議の怪  第六章 備品飛び交う校長室の怪 11

2022年04月25日 | 霊感少女 さとみ 2 第六章 備品飛び交う校長室の怪
 ベッドに寝転がって、ぼうっと天井を見つめていた松原先生が起き上がったのは、玄関チャイムが鳴ったからだった。壁に取り付けてある電話の受話器の様なインターホンを取り上げた。古いマンションなので、映像が見えるタイプのものでは無かった。
「……はい?」松原先生は気の無い声で応対する。「どちら様?」
『あ、先生! わたしです、栗田です!』声はしのぶだった。『今、みんなと来たんです。お話があります』
「みんなって、『百合恵会』か?」
『そうです!』
「じゃあ。百合恵さんも一緒かな?」
『百合恵特別顧問はいません』
「そうか……」松原先生はため息をつく。「じゃあ、今開けるから、待っていてくれ」
 松原先生は玄関ドアを開ける。松原先生は青いTシャツにジーンズ姿だった。教師には全然見えない。
「松原先生……」先頭にいたさとみが言ってぺこりと頭を下げた。他の四人のメンバー(麗子もいた!)も頭を下げた。「話を聞きました……」
「ああ、そうかい……」松原先生は力なく笑む。「まあ。立ち話もなんだ。入りなさい」
「では、失礼します」
 さとみは言うと入って行く。皆がそれに続く。

 広めのフローリングのリビングだったが、あまりにも殺風景で、余計広く見えた。
 小さな座卓が部屋の真ん中にあり、座布団が一枚あるきりだ。部屋の隅には雑誌や本が山積みになっている。麗子が何気なくそれらの背表紙を見ていたが、麗子の苦手な分野の本ばかりのようで、イヤな顔をして目を逸らしていた。
「まあ、座れ…… って言っても、椅子も座布団も無いけどな」松原先生は言うと座布団に座った。「床、そんなに汚れていないと思うから、大丈夫だぞ」
「はい……」さとみは答えると座った。皆も座る。「……それで、先生は謹慎になったって……」
「ははは、全く勝手なもんだよ、あの教頭は」松原先生は言って、ぽりぽりと頭を掻く。「こっちの弁明を聞こうともしなくってね。校長に危害を加えたって、一方的に言い張ってさ、それで、謹慎を食らった」
「実際はどうなんですか?」さとみが心配そうに訊く。「わたしたちは、松原先生はそんな事は絶対しないって信じていますけど……」
「そりゃ嬉しいねぇ」松原先生は笑む。「実際、口論はしたけど、暴力は振るってはいないよ」
「でも、校長先生は怪我して入院したって……」
「うん、そうだってね。谷山先生が発見者だったそうだ」
「じゃあ、谷山先生がやったんじゃねぇのか?」アイが言う。「それを松原先生のせいにして……」
「まあ、アイ君くらいの力と技があれば出来そうだけど」松原先生は言って、鼻で笑う。「あのおばさんじゃ、無理だなぁ」
 おばさんとの言葉に、皆が笑った。皆思っていた事だったようだ。
「じゃあ、誰がやったと?」ひとしきり笑った後、さとみは訊く。「松原先生でも谷山先生でもないとすると……」
「その前に、だ」松原先生が言う。「普通サイズの楯で殴られて、気を失ったって聞いたんだけど、そんな事ってあるかなぁ?」
「アイはそんな事は出来ないって言っています」さとみが答える。アイはうなずく。「もし出来たんなら、物凄い勢いが無きゃダメなんじゃないでしょうか?」
「そうだよなぁ……」松原先生は腕組みをする。「ボクもさっきから、その点を考えていたんだよ」
「と言う事は……」しのぶが割って入って来た。目が「心霊モード」になっている。「例の黒い影の仕業じゃないでしょうか?」
「ほう……」松原先生が驚いた顔をする。「だとして、何故、校長を?」
「『百合恵会』が邪魔だから、潰そうって考えたんです」しのぶが鼻息を荒くする。「ずっと、学校の怪奇現象を解決してきたじゃないですか? 怪奇現象の裏には、黒い影がいます。その影が動いたんですよ」
「ふむ……」松原先生はうなずくと、さとみを見る。「綾部はどう思う? 何か心霊的なものを感じないか?」
「はい……」さとみは申し訳無さそうな顔をする。「校長室に入っていないので、何とも言えません。もしあの影が絡んでいるのなら、校長室に入っても感じ取れないようにしちゃうかもしれませんし……」
「そうだよなぁ……」
 皆は黙り込んでしまった。皆考えを巡らせている(麗子だけは早く帰りたいと思っていた)。
「あ、そうだ!」朱音が大きな声を出す。「それも大切ですけど、もっと大切な事を忘れていました!」
「何だい?」
「教頭先生が『百合恵会』は解散だって言いました」朱音が言う。「顧問の松原先生が謹慎だからって……」
「そんな事を言ったのかい?」松原先生はむっとする。「そいつはひどいなぁ。そんな事になったら、百合恵さんに顔向けできないじゃないか」
「その事は、今日バイトなんで、わたしから姐さんに報告します」アイが言って、にやりと笑う。「……にしても、先生、姐さんにぞっこんですね」
「おいおい、大人をからかうもんじゃないぞ」
 松原先生はアイに注意するが、照れくさそうにして、にやけている。


つづく

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