「大発明だ!」シュタークスミス博士は叫んだ。「これで完璧な整理整頓ができるぞ!」
博士の発明したものは、シルバーメタリックのボディがきらりと光るアンドロイドだった。以前作った掃除用アンドロイドに、物の位置や配置を記憶させる装置を付け加えた。
「掃除をして綺麗になっても、いざ使いたい物がいつもの所にないと、これはとても不便だ。これだと、掃除をしながら、記憶させた通りにきちんと片付けをしてくれる。しかも動力の音は全くしないから、気に障ることもなく、研究が続けられる」
博士はアンドロイドを起動させ、その動きを見て、満足そうに頷いた。
「何て滑らかで静かなんだ。五十年間ノンストップ機能をつけておいたが、問題はなさそうだぞ」
しばらくすると、博士はアンドロイドに改良を加え始めた。料理を作る機能、庭掃除をする機能、買い物をする機能などなど、自分が研究に没頭できるようにするため、一般雑事をこなせるように、より完璧になるようにと、次々と機能を付け加えて行った。
「うむ、これは完璧な、完全無欠なハウスメイド・アンドロイドだぞ!」博士は満足そうに頷いた。「今まで以上に研究に励む事ができるぞ!」
ある日、夜遅く外出から戻った来た博士は、家の中の様子を見て叫んだ。
「確かに出しっぱなしだったが、ここまでやるなんて!」
研究途中の資料が何冊もある分厚い資料ファイルの中に、参考にしていた本が膨大な書籍庫の中に、しまわれていた。喋りだすとうるさいからと、博士はわざと音声機能はつけていなかった。だから、聞いても答えないだろう。
「資料も本も、自分で探さなければならないか・・・」博士はふと気が付いた。「資料や本を持って来ても、あちこちに置いてしまったら、また片付けられてしまう。うかつに出せないじゃないか! しかも、向こう五十年間もだ!」
不意に博士の体が持ち上がった。アンドロイドが博士のからだを片手で高々と差し上げたからだ。
「おいおい、外から帰って、埃だらけだからって、ごみと同じ扱いをする事はないだろう!」
アンドロイドは空いている手でドアを開けると、博士を外へ放り出した。
「いたたたた・・・」ぶつけたお尻をなでながら立ち上がると、カチリと鍵を閉める音がした。「なんと、締め出しを食ってしまったぞ・・・」
窓にへばりつき、家の中を見ると、アンドロイドはぴたりと動きを止めていた。きっと、きちんと片付いたからなのだろう。
ひゅうと吹いてきた北風に、博士は大きなくしゃみをした。
完璧のものを相手にすると、排除されるのは不完全な人間の方に決まっている。
著者自註
と言うわけで、今年もお付き合いいただき感謝しております。「おい、あの話の続きはどうなっているんだ?」「うだうだうだうだ話を引っ張るんじゃない!」とのお叱りもあろうかと存じますが、ま、そこはそれ、諸般の事情と言うヤツでして・・・ 来年も温かく広いお心でお付き合い下さりませえ。
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博士の発明したものは、シルバーメタリックのボディがきらりと光るアンドロイドだった。以前作った掃除用アンドロイドに、物の位置や配置を記憶させる装置を付け加えた。
「掃除をして綺麗になっても、いざ使いたい物がいつもの所にないと、これはとても不便だ。これだと、掃除をしながら、記憶させた通りにきちんと片付けをしてくれる。しかも動力の音は全くしないから、気に障ることもなく、研究が続けられる」
博士はアンドロイドを起動させ、その動きを見て、満足そうに頷いた。
「何て滑らかで静かなんだ。五十年間ノンストップ機能をつけておいたが、問題はなさそうだぞ」
しばらくすると、博士はアンドロイドに改良を加え始めた。料理を作る機能、庭掃除をする機能、買い物をする機能などなど、自分が研究に没頭できるようにするため、一般雑事をこなせるように、より完璧になるようにと、次々と機能を付け加えて行った。
「うむ、これは完璧な、完全無欠なハウスメイド・アンドロイドだぞ!」博士は満足そうに頷いた。「今まで以上に研究に励む事ができるぞ!」
ある日、夜遅く外出から戻った来た博士は、家の中の様子を見て叫んだ。
「確かに出しっぱなしだったが、ここまでやるなんて!」
研究途中の資料が何冊もある分厚い資料ファイルの中に、参考にしていた本が膨大な書籍庫の中に、しまわれていた。喋りだすとうるさいからと、博士はわざと音声機能はつけていなかった。だから、聞いても答えないだろう。
「資料も本も、自分で探さなければならないか・・・」博士はふと気が付いた。「資料や本を持って来ても、あちこちに置いてしまったら、また片付けられてしまう。うかつに出せないじゃないか! しかも、向こう五十年間もだ!」
不意に博士の体が持ち上がった。アンドロイドが博士のからだを片手で高々と差し上げたからだ。
「おいおい、外から帰って、埃だらけだからって、ごみと同じ扱いをする事はないだろう!」
アンドロイドは空いている手でドアを開けると、博士を外へ放り出した。
「いたたたた・・・」ぶつけたお尻をなでながら立ち上がると、カチリと鍵を閉める音がした。「なんと、締め出しを食ってしまったぞ・・・」
窓にへばりつき、家の中を見ると、アンドロイドはぴたりと動きを止めていた。きっと、きちんと片付いたからなのだろう。
ひゅうと吹いてきた北風に、博士は大きなくしゃみをした。
完璧のものを相手にすると、排除されるのは不完全な人間の方に決まっている。
著者自註
と言うわけで、今年もお付き合いいただき感謝しております。「おい、あの話の続きはどうなっているんだ?」「うだうだうだうだ話を引っ張るんじゃない!」とのお叱りもあろうかと存じますが、ま、そこはそれ、諸般の事情と言うヤツでして・・・ 来年も温かく広いお心でお付き合い下さりませえ。
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