昨日からショックだ! コーイチは思った。
思えば昨日、変なノートを拾い、それに吉田課長の名を書いたら、浮かび上がって消えてしまい、妙な夢を見て、ビクビクしていたら、なんと吉田課長が部長になってしまった。しかし、薄~く書いたせいなのか、存在も内容も薄~い部長になってしまった。それだけじゃなく、清水さんの呪いの化学反応とやらで、引き出しに女の人が浮かんでくるし(ちょっと可愛い人だったなぁ……)、あわや引きずり込まれそうになるし…… みんなはそんなに気にしてないみたいだけど、どうなんだろう。
「あのう、林谷さん……」
コーイチは林谷を見た。
昼食時、行き付けの食堂『座長』のスペシャルランチを上手そうに頬張っていた林谷が手を止めた。
「なんだい、コーイチ君。さてはライスのお代わりかい?」
すでに食べ終わっているコーイチの膳を見ながら林谷は言った。
「いえ、そうじゃなくて、今日の突然の吉田課長の昇進の件なんですが、社長や役員が全員同時にビビッと来るなんて、少し変だと思いませんか?」
「なるほど、確かに言えるねぇ」
コーイチの隣の席にいつの間にか印旛沼が座っていて、お茶をすすりながら頷いた。コーイチは驚いて反対側へ身をずらす。
「あれは多分、作用したのよ……」
清水がコーイチの背後に立っていた。コーイチは驚いて前方へ身をずらす。腹をテーブルにぶつけ軽くうめいた。
「吉田元課長の引き出しの中に顔が見えたのと同じ、呪いの作用なのよ」
清水は言いながら林谷の隣に座った。林谷が頼んでいたコーヒーを勝手に飲み干した。途端に涙を流し始めた。
「呪いだとすれば、私のせいなんだわ。あんな情けない部長職なんて、呪いの化学反応以外には考えられないわ」
「まあまあ、そんなの自分を責めるもんじゃないよ」
印旛沼が閉じていた手を開くとハンカチが五、六枚出てきた。それらを清水に渡す。
「どんな内容だろうと、部長は部長、出世した事には変わりない。だから呪いだとしても良い方に転がったんだから、全然気にする事はないさ」
「そうそう、あの課長と岡島ちゃんが同時にいなくなったんだよ。これは大手柄だよ。泣く事は無い、むしろ誇りに思うべきだね」
林谷は楽しそうに言う。清水も涙を拭い笑みを浮かべた。
みんな、原因よりも結果を重視しているんだ。でも、原因はやはりあのノートだと思うんだけどなぁ……
「コーイチ君、何か思い当たる事でもあるのかい?」
印旛沼がコーイチの表情を見ながら言った。
「なんとなく、何か言いたそうに見えるんだがねぇ」
「なんだい? どこかの秘密組織の陰謀との証拠でもつかんだのかい?」
「それとも、新たな魔王の復活のための生贄だったとでも言うのかしら?」
林谷と清水の目がキラキラと輝いた。二人してコーイチの方へ身を乗り出す。
「あ、いえ、やっぱり人には言えないっす……」
圧倒されたコーイチは下を向いてしまった。
つづく
思えば昨日、変なノートを拾い、それに吉田課長の名を書いたら、浮かび上がって消えてしまい、妙な夢を見て、ビクビクしていたら、なんと吉田課長が部長になってしまった。しかし、薄~く書いたせいなのか、存在も内容も薄~い部長になってしまった。それだけじゃなく、清水さんの呪いの化学反応とやらで、引き出しに女の人が浮かんでくるし(ちょっと可愛い人だったなぁ……)、あわや引きずり込まれそうになるし…… みんなはそんなに気にしてないみたいだけど、どうなんだろう。
「あのう、林谷さん……」
コーイチは林谷を見た。
昼食時、行き付けの食堂『座長』のスペシャルランチを上手そうに頬張っていた林谷が手を止めた。
「なんだい、コーイチ君。さてはライスのお代わりかい?」
すでに食べ終わっているコーイチの膳を見ながら林谷は言った。
「いえ、そうじゃなくて、今日の突然の吉田課長の昇進の件なんですが、社長や役員が全員同時にビビッと来るなんて、少し変だと思いませんか?」
「なるほど、確かに言えるねぇ」
コーイチの隣の席にいつの間にか印旛沼が座っていて、お茶をすすりながら頷いた。コーイチは驚いて反対側へ身をずらす。
「あれは多分、作用したのよ……」
清水がコーイチの背後に立っていた。コーイチは驚いて前方へ身をずらす。腹をテーブルにぶつけ軽くうめいた。
「吉田元課長の引き出しの中に顔が見えたのと同じ、呪いの作用なのよ」
清水は言いながら林谷の隣に座った。林谷が頼んでいたコーヒーを勝手に飲み干した。途端に涙を流し始めた。
「呪いだとすれば、私のせいなんだわ。あんな情けない部長職なんて、呪いの化学反応以外には考えられないわ」
「まあまあ、そんなの自分を責めるもんじゃないよ」
印旛沼が閉じていた手を開くとハンカチが五、六枚出てきた。それらを清水に渡す。
「どんな内容だろうと、部長は部長、出世した事には変わりない。だから呪いだとしても良い方に転がったんだから、全然気にする事はないさ」
「そうそう、あの課長と岡島ちゃんが同時にいなくなったんだよ。これは大手柄だよ。泣く事は無い、むしろ誇りに思うべきだね」
林谷は楽しそうに言う。清水も涙を拭い笑みを浮かべた。
みんな、原因よりも結果を重視しているんだ。でも、原因はやはりあのノートだと思うんだけどなぁ……
「コーイチ君、何か思い当たる事でもあるのかい?」
印旛沼がコーイチの表情を見ながら言った。
「なんとなく、何か言いたそうに見えるんだがねぇ」
「なんだい? どこかの秘密組織の陰謀との証拠でもつかんだのかい?」
「それとも、新たな魔王の復活のための生贄だったとでも言うのかしら?」
林谷と清水の目がキラキラと輝いた。二人してコーイチの方へ身を乗り出す。
「あ、いえ、やっぱり人には言えないっす……」
圧倒されたコーイチは下を向いてしまった。
つづく
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます