子どもをもって初めてわかったことの1つに
料理を作ることの幸せがあります。
母は調理師の資格を持ち、料理の仕事の傍ら家でも3食全て手作りする人でした。
梅酒、梅干し、味噌を毎年仕込み、ぬか床も毎日手入れ。
ある時には玄関でうどんを踏んでいたことも。何故母がそこまでするのか全く理解出来ませんでしたが、そんな家庭で育った私は文字通り「美味しい生活」を送っておりました。
褒め上手な母のおかげで料理の基本を教わっていた私は、体を壊した母の代わりにずっと家族のために料理を作ることになります。
まだまだ遊びたい盛りの学生時代。
時には文化祭の打ち上げを中抜けして帰宅し台所に立つことも。
自分の時間を削って義務的に料理をしていたので楽しいはずがありません。
その日その日のノルマとしての料理をどうこなすか。
そればかりを考えていました。
結婚してからも料理はいかに早く作るかという作業でしかありませんでした。
どれだけ工夫しても食べたら一緒でしょと考え、出来る限り台所に立つ時間を減らすことを目的としていました。
幸いにも夫は料理が趣味という人。
これまたどうして作るのが楽しいのか理解は出来ませんでしたが、夫のおかげで料理から少しでも解放されると安堵したのを覚えています。
そして息子が生まれ、生後6ヶ月から離乳食がスタート。
最初はただでさえ慣れない育児に離乳食のための料理が増えるなんて考えただけでも気が滅入りました。
せっかく作ってもブーっと吐き出されたり手でぐちゃぐちゃに遊ばれたり…。息子も生まれて初めて固形のモノを口にするのですから興味をもって遊んでしまうのは当たり前だと今ならわかるのですが、当時は辛かったです。
来る日も来る日もめげずに向き合った結果今では毎回完食してくれるように。
息子のためを思って作った料理を、ひと匙ひと匙大きな口を開けて食べてくれる…そんな何でもないことの中に幸せがあったんだとビックリしました。何故母があそこまで手作りにこだわっていたのか今になって少しわかった気がします。
あんなに嫌いだった料理でも誰かの為を思って作り、喜んでいる姿を目にするだけで喜びに変わるんだと身をもって体験しました。
苦労を苦労だと思わないこと、メンターの言葉の1つです。
きっとそれは料理だけでなく日常の様々なところにあるのかもしれません。もちろんビジネスの中にも。