世田谷経営改革クラブ

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0.1秒の改革

2007年08月13日 | 活動日記
議員を辞めた後、最初の活動として、議員の頃から助言する等で関わりながら、状況が悪く公表を控えていた世田谷区の開票事務改革について、ご報告します。

 7月29日参議院議員選挙では、0.1秒の改革の名の下、日本各地で開票事務改革の試みが実施されていた。これは、単に開票を早く終わらせて、国民の知る権利の充足や予算の削減に寄与するだけでなく、開票事務を通して、公務員の意識改革を行い、行政のあり方を変えようとする試みの一環であった。

 私達の世田谷区においては、選挙管理委員会の努力で、結果の確定時間は前回の28:55から27:55への短縮に成功している。しかし、それでも足立区の26:05と比較すると2時間近く遅れている。この点、世田谷区の人口80万人、足立区の人口60万人と人口に20万の差があるとしても、2時間も開票時間に差があるという事は、まだ世田谷区の開票事務には改善の余地が十分にある証拠と考えられる。そこで、私が29日開票事務を世田谷の現場で見て気がついた改善点の中でも特に本質的な問題点を列挙し、その対策と世田谷の開票事務改革の本来の目的の達成度を考察してみることとする。

(1)目標設定が全職員に有効には周知されておらず、各職員の目標が設定されていない
 今回の開票作業では、28時までに作業を終了させるという目標を立てたはずであったが、その目標は終電までに帰る多くの職員には関係のない目標であった(世田谷区では、残業代節約の為、終電がなくなる職員から作業が終わり次第、早めに家に帰らせるようにしている)。
 終電の関係で早く帰らせる職員がいるならば、各職員にそれぞれの目標時間を提示しても良かったのではないか。目標のない活動はやる気を失わせる傾向がある。
また、会場に全員が見られる時計さえなかったのは、大きなマイナス。

(2)専門的な技術の不足、職員の努力や工夫が報われない
 足立区では、進行連絡係のプロ、審査係のプロが養成されており、彼らの技術によって正確で無駄のない開票事務が行われていた(部署が移動しても常に、足立区では、この事務を担当する職員がいるという事)。つまり、経験の蓄積が生かされる体制が作られているのである。しかし、世田谷区では開票事務の指示は2~3年毎に交代する選挙管理委員会職員によって行われていた。その差が足立区では、進行連絡係の指示により手の空いた職員がなくなり、迅速で確実な審査が行われるようになっている点に現れている。熟練の技術、専門家がいなければ効率的に出来ない作業がある事は当たり前なのだ。世田谷区でも、疑問票の審査に時間が掛かる事が判っているのだから、審査班の経験値を増やしたり、審査班の人数を増やす為の明確な努力をするべきではないか(足立区では審査班30人、世田谷区では14人)。

(3)職員の指示待ちの姿勢が目立つ
 手が空いた後、他の班を手伝うでもなく、何をしたら良いか分からないまま、指示を待っている職員が多くいた。

 公務員の仕事の多くは、このように目標不明で、努力が報われないから、規則どおりに働く指示待ちの体制がどうしても多くなる。また、色々な部署を廻る為、専門家を育成しにくい環境にある。そして、開票事務改革というのは、よく開票作業で使う経費を減らし、より早く結果を住民に知らせるだけではなく、本当の目的は、このような公務員の仕事のやり方に風穴を開けることにあるのだ。
 すなわち、結果の判りやすい開票事務は、目標設定も容易で、工夫すれば早く帰る事が出来るなど努力が報われやすく、職員の工夫、育まれた専門技術が生かされる可能性も十分にあることから、職員の意識改革の切掛けとして進められているのが、この0.1秒の改革なのである。
 開票事務は多くの職員が参加する作業である。だから、多くの職員の開票事務は深夜までかかるという思い込みを打ち破る事は職員の仕事のやり方、意識改革を行う大きなチャンスであると言える。すなわち、目標を判りやすく示し(普通の行政事務では、このような目標の明確化も簡単ではない)、専門家としての職員がいる事が大事である事を認識させ(効率的にやろうという意識がなければ専門家の重要性は認識されにくい)、指示待ちではなく自分で考えて行う仕事のやり方を変える、という職員の意識改革を行わせる事が本当の開票事務改革の目的なのであるから。
 従って、そういう意味では、世田谷区の開票事務改革は、まだ道半ばであると言わざるを得ないであろう。