とある科学者の密かなつぶやき

化学、物理などの自然科学から、政治経済などの社会科学、たまに書評などの人文科学について、語ります。

A2/ADを少しだけ勉強してエア・シー・バトル戦略と、日本の役割を直視する。

2012-02-04 09:23:26 | ホットトピックス
 国会中継を見ていても、田中防衛大臣がいじめられているのを見るだけで、あまり楽しくないです。しかし、小池百合子(元防衛大臣)が質問した「QDR」とか「A2/AD」は非常に大切なことです。ところが、メディアなどはこの件については「いろはのい質問」質問とか報道されてます。それよりも田中大臣が大臣席から姿を消したことの方が大きく報道されてしまっている始末です。確かに前代未聞の出来事ではありましたが…。
 

 まずQDRの話ですが、Quadrennial Defense Reviewです。Quadrennialは四年かとか四年ごとの意味です。Defense Reviewは説明しなくても分かると思います。なので、QDRというのは、アメリカ国防総省による防衛計画で、4年ごとに見直されています。最近では2010年に報告されています。で、2010年発表のQDRのテーマが「A2/AD対策」です。小池元大臣が、「QDRは読んだのか?」「A2/ADに日本としてどのように対応するのか?」「エア・シー・バトル戦略は?」と質問していたような記憶があるんですが、日本の国防に関わるかなり根本的な事象です。
 
 「A2/AD」というのは中国の戦略で、A2というのはAnti Accessです。基地などへのAccess拒否のことです。ADはAreal Denialで、空母などの海上を移動する艦船を標的とした接近拒否です。
 
 日本の場合、重要になるのはAD(Areal Denial)の方です。中国の艦船に接近されるのを防ぎたいわけですから、米空母が寄港する日本の米軍基地である、横須賀、佐世保、沖縄などを攻撃することにより、艦載機への燃料補給、弾薬補給ができなくなり、主力戦力である空母の戦闘力を大きく削ぐことができるわけです。つまり、在日米軍基地は先制攻撃を受ける恐れがあると言うことです。中国としては、これにより米空母の活動領域を大幅に制限する。東シナ海、南シナ海に米空母が進行できないようにするというわけです。
 
 この中国のA2/AD戦略に対抗するためのものがエア・シー・バトル(Air Sea Battle)です。これはややこしいんですが、エア・シー・バトルの戦略目的は、西太平洋地域での軍事バランスを安定化させることであって、これにより中国との軍事バランスの均衡化を図ることです。
 
 冷静状態崩壊依頼、軍備というのは戦争(侵略)を行うためのものではなく、軍事バランスを均衡させることによる抑止力なんですが、抑止力を維持するのが目的で合って、開戦や戦争に勝利することを目的としているわけではないと言うことです。
 
 で、ポイントなんですが、1)中国が、日本の米軍基地を攻撃する前に、米海軍&空軍の連係により、ステルス爆撃機や無人爆撃機で中国のレーダーシステムを破壊する。2)同盟国と連係して海上封鎖を実施し西太平洋のシーレーンを確保するの2つです。
 
 1)は良いです。問題は2)なんですが、冒頭の「同盟国と連係して」の同盟国とは、どう考えても日のんです。従って、「日本と連解して海上封鎖を行う」と言うことに等しい内容です。で、「海上封鎖」ってどこを封鎖するのかですが、バジー海峡、ルソン海峡、マラッカ海峡、スンダ海峡、ロンボク海峡でしょう。多分…。
 
 中国のA2/AD戦略に対抗するためのアメリカの戦略がエアー・シー・バトル戦略な訳です。ここで、日本は立場を明確にしないといけません。同盟国である米国を指示し、同盟国として軍事的に連係できるかどうかということになります。少なくとも、日本国内にある米軍基地の防衛力を強化しておく必要があります。