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鬼頭径五/Soulshineのスタッフの日々のメモ。

やわらかく自由な魂。

2013-12-23 17:24:22 | 日記


木曜日の夜に、仕事から帰って玄関の鍵を開けようとしたら、
ドアの向こうから「R&R パラダイス」が聞こえてきた。

ああ、逝っちゃったんだ。
慌てて靴を脱いで家に入ると、
るびはリビングのソファの上で、
昼間私が出かけた時とまったく同じ様子で
そのまま冷たくなっていた。


翌日、火葬場へ予約を入れる。
運ぶための棺代わりの箱を探すも、
ちょうどいい大きさのものがなく、
アメリカからの引っ越しに使ってそのままになっていた
箱がひとつあったので、
ちょっと深過ぎるけれどそれにタオルを敷いて寝かせた。
NYのクロネコヤマトの段ボール。
そういえば向こうのアパートで荷造りをしているとき、
よくこの箱の中にちょこんと入っていて、
「そんなことしてると、一緒に船で運ばれちゃうんだよっ」
なんて声を掛けたっけ。

花を一緒に入れてあげようと思って近所の花屋さんへ。
あれやこれや、明るい色の花をたくさん選ぶ。
「どれくらいの長さに切りますか?」
と聞かれたので、ちょっと困って
亡くなったネコに添えるので…と答えると
その女性の店員さんは
「それは寂しくなりますね」
と言って、一番たくさんとったスイートピーを
すべてサービスしてくれた。


車で火葬場へ向かう。
係の初老の男性が出てきて、箱を覗いて
「アメリカンショートヘアだね。いくつ?」
と聞くので、「たぶん18歳くらいです」と言うと、
「それは頑張ったねぇ。ここへ来るコたちはたいてい10歳くらいだよ」
と言った。
そして、花屋の女性のように「寂しくなっちゃうね…」と言った。

告別式っぽいところ(祭壇みたいなのが設置してある)でお別れの時間を、
と言ってくれたのだけど遠慮して、炉に直行してもらった。
炉の前で、係の方々がるびを銀色のテーブルに移して、
神妙に頭をさげてくれた。
私はるびの狭いおでこを撫でて、
「またあとでね」と軽く挨拶をした。
るびはお花ごと厚い扉の向こうにすべっていった。



40分ほどで呼ばれて、集骨をした。
小さくて細かい骨だったけど、
さっきの方とは違う、やはり初老の男性は
「お骨がしっかりしている」と言って、
骨の説明をしてくれた。
お盆の上でしっぽの骨をつなげて並べて、
こうしてしっぽはなめらかに動くんです、とか、
のど仏をちょこんと見せて、
ほら、仏様が手を合わせているように見えるでしょ?とか、
それらはなかなか興味深い話しだった。
特に小さな小さな指の骨にはちゃんと爪(といっても爪の中の骨)もついていて、
大きな箸ではつまめないくらい。
すべてを自分で納めたかったけど、
足の骨2本だけ入れて箸を返した。





庭に埋めるので骨箱ごと土に還るように、
とわざわざ木の骨箱にしたのに、
いざ持って帰って来ると、
これがなかなか埋める気になれない。
毎日1回は手に取って、
耳にあてて揺すっては、カサカサ鳴る音を聞いている。





今回のことをFacebookに書いたら、
たくさんの人がコメントをくれた。
わざわざメールをくれた友人もいる。
励ましてくれたり、一緒に悲しんでくれたり。
先に向こうへ行った自分の家族を、
るびに紹介してくれた人たちもいた。
本当に、ありがとうございます。


花屋の店員さんも、
火葬場のおじさんも、
そしていま私のまわりにいるたくさんの人も。
るびのおかげで、私は優しい人たちに出会えてる。


私もそういうふうに生きたいと思う。






*タイトルは、東良美季さんの著書「猫の神様」より。
ライターの東良さんと、2匹のネコとの出会いから別れまでを綴った記録です。
東良さんは、「TRAIN」のPVの監督さん。
「SOLO SOLO」のジャケット中の、あのあったかい写真も東良さんの撮影です。
実はこの本の中にも、ほんの少しだけバンドとともにツアーを回ったエピソードが出てきます。