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エッセイ3人3様

橋本弘・松本愛郎・加藤榮子の3人が毎月それぞれ交代でエッセイを掲載してまいります。ぜひご閲覧ください。

Vol.32【 なんでやねんパート2~ぼやき漫才風に~ 】 松本 愛郎

2019年02月01日 00時00分00秒 | 【松本愛郎】作
男 世の中、なんでやねん、てつっこみとうなることようけおまんなあ。

女 正月明けてまだ一月しかたたんのに何憎まれ口叩いてんの。このアンケラソウッ。

男 だまらっしゃい。私が世間をぼやくんやない。世間が私をぼやかすんですわ。

女 何わけわからんこと言うてんの。この天王寺のドロガメ―ッ。

男 日本の昔話みたいなもん、子供にきかせられまっか。

女 急に何言うんか思たら何アホなこと言うてるのん。日本の昔話、夢があってええやないの。

男 浦島太郎の話知ってまっか。

女 知らいでかいな。子供にいじめられてた亀助けて竜宮城連れて行ってもらうええ話やないの。

男 ほな、アクアラングもなしにどうやって海入って、なんで溺れへんかったんや。

女 子供の夢壊すようなこと言いな。

男 ほな一寸法師はどや。

女 指に足りへん一寸法師が鬼からお姫さんを守るええ話やないの。

男 ほいで、鬼が忘れていった打出の小槌勝手に使うて。遺失物横領やないか。

女 ええやないの。ええことしてんからご褒美やんか。

男 ほいで、その打出の小槌振って体大きいなったて。

女 そやんか。それの何が悪いの。

男 ほな、なにかえ。一寸法師の体が大きなったんはええわい。着物も大きなったんかえ。着物、ゴムみたいに伸びたんかい。おとぎ話だけやおまへん。昔の漫画もたいがいええかげんでしたな。

女 まだ、文句あんのかいな。もう、早よ言うて早よ終わらしてまい。

男 鉄人28号知ってまっか。あれ、子供がリモコンで動かしまんねん。

女 そやがな。それがどないしたん。

男 レバー2本しかついてないリモコンでなんであんな複雑な動きができるねん。

女 そら加減して動かしてんねんがな。あんたがごちゃごちゃ言わんでええの。

男 巨人の星いう漫画おましたな。あの漫画もええかげんでっせ。

女 なんでやのん。少年が一生懸命練習して名選手になるええ話やないの。

男 主人公の星飛雄馬はまだええわい。あのライバルの花形満いうのんなんや。

女 どこがあかんの。

男 小学生が大人乗して車運転するやなんて世の中なめとったら承知せんぞ。

女 うちもあれおかしい思ててん。なんで小学生やのに運転免許もってんの。警察に捕まれへんのんて。乗ってるのんあれ車ちゃうねん。車の形した自転車やねん。

男 あんな大きい自転車あるかい。お客さんの前で何ちゅうええかげんなことをいうんや。

女 車体に見えたあんのあれボール紙で出来たある張りぼてやねん。車の中に自転車仕込んだあんねん。ほいで、乗ってる人皆でこいで走ってんねん。せやから運転免許いらんねん。

男 そうか、ほなそういうことにしとこ。

女 この人、単純でっしゃろ。

男 なんか言うたか。日本だけやおまへんで。アメリカの映画もええかげんでんなあ。皆さんジョーズいう映画見ましたか。

女 見いでかいな。鮫の出てくるあの怖い映画やがな。

男 最後覚えてまっか。あの大きい鮫が空気のボンベくわえて主人公の警察署長めがけて突進してきまんねん。そこで空気のボンベを署長がライフルで撃ってボンベごと鮫爆発さしまんねん。

女 スリルのあるシーンやねえ。

男 けどやで、あの鮫、ボンベくわえたまま一回海ん中潜って行きよったで。なんであんなくそ重たいもんくわえたまままた上がって来よったんや。

女 知らんがな。そこは畜生の浅ましさ。言うてもあれ魚やもん。

男 ターミネーター2いう映画見ましたか。

女 あれこそ名作やないの。何を文句言うことあんのん。

男 最後のとこ知ってまっか。

女 悪役のターミネーターと死闘の末、ジョンとサラを守りきったターミネーターが自分はこの時代に生きられないと溶鉱炉の中に沈んでいくんや。人間がなぜ泣くのかわかったとか言い残して。涙なしにみられへん。グスン。

男 おまはんが泣かんでもええがな。そうやった。鎖に繋がれてなあ溶鉱炉に降りて行って溶かされていくんや。けどや。ターミネーターは溶けるのにターミネーター繋いでる鎖なんで溶けへんねや。

女 あれはターミネーターは溶けてへんねや。ターミネーターに内蔵してるマイクロチップが溶鉱炉の熱で損傷したんやて何かに書いたあったわ。

男 この前、孫連れてUFJ行って来ましてん。

女 それも言うならUSJ。UFJは銀行。ベタなボケしな。

男 どっちでもええんや。そのUSJのモンスターロックンロールショーいうのん見とったらフランケンシュタインいうのが出て来よりましてん。

女 あの顔がつぎはぎだらけの怪物やねえ。

男 黙れ。ばかもの。あのフランケンシュタインいうのはあの怪物を作った博士の名前やねんぞう。あの怪物はフランケンシュタインやなんて名前ついてへん。あんまりええかげんなことばっかりやってたら承知せんぞう。責任者出て来~い。

女 あんた、そんなアメリカの映画とか催し物の悪口ばっかり言うて責任者出て来~い。とか言うて。アメリカの大統領でも出て来はったらどないすんのん。

男 謝ったらええやん。ごめんちゃい。

女 なんでやねん。もうええわ。


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2 コメント

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Unknown (白戸四郎)
2019-02-01 04:08:40
物語や映画の穴探しという いつもながらに作者様の分析力 洞察力に裏打ちされた内容で大変楽しく拝読致しました。往年の『人生幸朗・生恵幸子』のボヤキ漫才を彷彿させる構成も面白いです。平成の元号も無くなる本年ですが、作者様のエッセイには、昭和ノスタルジーを禁じ得ません。
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Unknown (ぼたん)
2019-02-02 23:21:55
まあ(*_*)次から次へと溢れるネタに驚嘆です。落語・漫才の名脚本作家でいらっしゃいますね。これからも楽しみにしています。
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