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分づき米を食べて見ませんか?  製薬会社や医者が真っ青になるその実力とは

2017-06-02 22:33:28 | 日記


Mohan et al. Effect of brown rice, white rice, and brown rice with legumes on blood glucose and insulin responses in overweight Asian Indians: a randomized controlled trial. Diabetes Technol Ther. 2014 May;16(5):317 より

横軸 CGM:continuous glucose monitoring (連続グルコース測定)の日時 5日分
縦軸 組織の糖濃度(15名の平均)単位についての説明は論文で見当たらず。

赤い線が白米、黒い線が玄米、青い線が豆と炊いた玄米。順に体液の糖の変動が小さくなる。白米と玄米とでは変動度合いは20%玄米の方が小さい(有意水準P=0.004)
腹にセンサー電極を留置して測定している(15名の平均)。 組織の糖濃度を連続測定しているわけだが、これは血糖値に追随することが知られている。 [広告: 当クリニック 血糖連続測定できます]

 朝食と昼食を指定した物でとった。ご飯の量は自由に食べて、後で報告して、カロリー計算。
玄米食の方がカロリーが4%少なかったが、統計的有意差なし(P=0.06)。 玄米食の方が脂肪摂取が有意に多かった(P=0.03)。

コメント:大切な図の説明が抜けている点、脂肪摂取や糖摂取量の量が平均値ではなく、中央値で発表されているなど、ざっとした印象はまぬがれないが、玄米食に挑戦してみたら糖の変動が改善した、というメッセージは間違いないようだ。




分づき米が優れている点
 油分が豊富なので、脂こいものがあまり欲しくなくなる。

 食物繊維が豊富

 ビタミンB群やタンパク質などが白米より多く含まれ、栄養面で優れている。

 オリザノール(下に解説)など、まだよくわかっていない、健康に役立つ成分を持っている。

 消化吸収に時間がかかるので、血糖上昇速度が白米よりゆるやかで、しかも糖の供給が長く続くので、満腹感も長続きする。


分づき米の欠点;
 傷みやすい。精米したら、小分け、密閉して、冷蔵保存。2週間を目標に食べきる。
 流通業者の立場としては、混ぜても、変えても、古くなっても、農薬が残留していても、おいしくなくても、わかりにくい白米の方が都合がよかったので、普及に力を入れたのではないだろうか?

 フィチン酸というぬかに含まれる成分が、カルシウム、鉄などのミネラルをくっつけて(キレートして)、吸収しにくくする。

 味に個性があるので、主食の地位を占めてしまい、おかずを引き立てる役とはなりにくい。



なぜ、玄米ではなく、分づきがお勧めなのか。
 玄米は火が通りにくい。油の量が多いせいか、消化しにくい。胃もたれすることもある。

 長期保存により、表面が劣化している可能性がある。

 昔の人が食べていた黒米(くろ=玄)とは分づきのことである(下記)。

 玄米を少し精米することで、ぬかづけ用のヌカができる。こうして、お米を余すことなく利用するのが、古来よりの知恵にしたがった方法と思われる。玄米にたくあんをのせたら、ヌカをとった後の白米があまってしまう。



分づき米の入手方法;
 近所の魚とおそうざいの店から北へ、小さいパン屋さんを過ぎた所にあるお米屋さん。 以前、好みの精米度にして分包して届けてもらっていたことがある。 
 自然食品店で、その場で精米したてを買える所もある。 
 玄米を買ってコイン精米。 同じ5分づきでも、場所によって、かなり精米度が違うので注意。 



調理方法;
 私は安い圧力なべに、カムカムなべ(製造:オーサワジャパン)というふたつきの土鍋をいれて、外と中に水を入れて(外は土鍋が浮かない程度、内は米が数センチかぶる程度) 30分間、高圧で、蒸気が一定に、なるべく少なく吹き出す火力で電磁調理。
 安い圧力なべはパーツが2年ともたない。販売していないパーツがあり、危ないからということで、なべごとメーカーに送らないと直せなくなる。予備のなべをもっておけばよい。

斑点米について
玄米や分づきで食べる米は農薬がかかっていない物が望ましいが、無農薬だと、カメムシが吸った跡が黒くなった斑点米が混入している。 これは、カメムシが運んだアスペルギルスというカビが繁殖したものと報告されている(Rosmana 2014)。 この報告では、アスペルギルスの種類やカビ毒を同定していないが、斑点米がエサに混ざると家畜の食欲が落ちるという。 アスペルギルスの仲間には、酒やしょうゆを作るコウジ菌Aspergillus oryzae、 アフラトキシンという強力な発ガン物質を作るAspergillus flavus、 ヒトに病原性がある物など色々ある(加藤 2014)。 自然界のAspergillus flavus株の半分が毒素を作らないと報告されているが、 その1つが昔、家畜化され、コウジ菌として分家し( Chang and Ehrlich 2010)、 さらに、穀物を分解する力が、より強いものがヒトの手で選別されてきたとされる (Gibbons 2012)。
 国産米の調査で、斑点米や倒伏米、天日乾燥米などから、カビ毒のニバレノール類(NIV nivalenol、DONデオキシnivalenol)が検出されている(中島 2006)が、ニバレノールはフサリウム菌(fusarium)が作る毒素で、アスペルギルスによる物ではない。 ニバレノール類の発ガン性は確認されていないが(Zingales2021)、吐き気や頭痛をおこす。 乾燥が十分でない米に発生すると考えられる。
 アフラトキシンについても、国産米から検出されたことがあり、一般の米調整施設に産生菌が見つかることから、貯蔵方法に注意が必要だ(農林水産省 2012)。 その一方、厚生労働科学研究による調査(2004〜2006年)では、市販米93検体から1つも検出されておらず、標準的な管理がされた白米なら心配ないと考えられる(厚労省 2010)。 同時の調査で、輸入穀類からは、アフラトキシンが検出されており、ココアの7割、 チョコレートの半分以上、ピーナツバターやはと麦は3割、ビスタチオは2割、そば粉やコーンは1割が汚染されていた。 
 当院でも顕微鏡で斑点米にアスペルギルスのような菌を確認した(写真)。 フサリウム菌は見つからなかった。 カメムシが宿主となって運ぶアスペルギルスということは、アフラトキシンのように遺伝子破壊する、ひどい毒素は作らないのではないか。 確認が必要だが、市販されているアフラトキシン抗原検査キットは高額だ。 私は、取り除いて食べている。

アスペルギルスのような菌、大きなかたまり(つぶした斑点米の黒い部分)の周辺に大小の円形胞子が見える。 ズームブルー染色(KOH15%、DMSO25%、染色液)



米ヌカの薬効;有効成分 gamma-オリザノール
  
血中脂質を改善
Berger et al. Similar cholesterol-lowering properties of rice bran oil, with varied gamma-oryzanol, in mildly hypercholesterolemic men. Eur J Nutr. 2005;44(3):163-73. 
コメント:二重盲検法

胃炎に効果
並木正義 他 「二重盲検法によるγ‐Oryzanolの消化器心身症に対する臨床評価」 月刊臨床と研究 巻:61 号:1 ページ:222-230:1984年





血圧改善
Devarajan et al. A blend of sesame oil and rice bran oil lowers blood pressure and improves the lipid profile in mild-to-moderate hypertensive patients. J Clin Lipidol. 2016 ;10(2):339-49
コメント: オープン治験なのでプラセボ効果を否定できない。

更年期障害にも
石原 他 「更年期障害に対するγ‐オリザノールの臨床効果 血清過酸化脂質に関して.」日本産科婦人科学会雑誌 巻:34 号:2 ページ:243-251 :1982年
コメント: オープン治験なのでプラセボ効果を否定できない。

穀物せんいで長生き
穀物由来の食物繊維が不足すると、腸内細菌が腸の粘液を食べてしまい、粘液層が薄くなる。 腸の粘液層の厚さは、穀物のせんいが豊富なエサを与えたマウス、せんいを含まないエサを与えたマウスでそれぞれ100ミクロン、20ミクロンと、5倍違った(Desai et al.2016)(赤血球の大きさは8ミクロン)。 せんいが不足すると、粘液による防御ができなくなり、感染症やアレルギーにかかりやすくなると考えられる。
 疫学研究でも、全粒の米や麦などの摂取が多いと、長生きすることが示唆されている(Reynolds et al.  2019)。

Reynolds et al.   Lancet. 2019;393:434 より
横軸: 1日に食べる全粒穀物の量(g)  縦軸: 死亡確率 
実線・破線はそれぞれ、異なる数学モデルによる予想グラフ。 いずれも全粒穀物が多いほど 死亡確率は低くなった(上グラフ)。
心臓の冠状動脈疾患、糖尿病、大腸がんについても、全粒穀物が多いほど 病気の確率は低くなった(グラフ省略)。

Desai et al.  A Dietary Fiber-Deprived Gut Microbiota Degrades the Colonic Mucus Barrier and Enhances Pathogen Susceptibility.  Cell. 2016 Nov 17;167(5):1339-1353.

Reynolds et al.  Carbohydrate quality and human health: a series of systematic reviews and meta-analyses.  Lancet. 2019 Feb 2;393(10170):434-445.


昔の人は分づき米を食べていた
 奈良時代 下級の官員には黒米 正倉院文書には白米と黒米の併記がある。

 平安時代 なしらけ、しらけ、ひらしらけ(玄米)の精米段階 和名抄
 
 鎌倉時代 木曾義仲と猫間中納言が同席した時 「毛立ちしたる飯の黒く籾交なりける」 (もみの交じった玄米ご飯) がでてきた所、 木曾は箸をとったが、猫間は興醒めして食べなかった。 源平盛衰記

  室町時代 食は黒飯たるべし (加藤)清正記
  尹良親王(ゆきよし/これなが/ただなが) の食事  「伊勢蛤を羹とす。 御飯は半白米也。 汁物は尾張大根の輪切り】 永享7年(1433)12月 浪合記

 室町時代以降、京都より、それまでは蒸し米(メシ)を食べてきたのに代わって、炊いた米(ヒメ)が広がった。時代末には蒸し米は儀式の時だけになった。  海人藻芥[あまのもくず](1420年)「公家御膳飯は強飯也。  姫の飯全分略の儀也。」

桜井・足立 共著 『日本食物史』 平成6、12月 雄山閣出版 
原典しながら昔の食事を解説


孔子の論語 郷党第十の八
(君子)食は精を厭わず、膾は細きを厭わず
(精白されている米を好み、膾の肉は細かく切っているものを好み) 
コメント: 黒米では食べなかったということで、現在のような完全精白ではなかったと思われる。 日本の皇族が食べていたような半白米ではないだろうか。

今の玄米と昔の黒米との違い
 今の玄米は蒸しても、やわらかくなりにくい。 餅屋さんへ無農薬もち玄米をもちこんで、ついてもらったことが、あるが、つぶつぶで、ぼろぼろた米を固めたようなものが仕上がり、大量で、人にもあげられないような物で困ったことがある。 昔の玄米はついて、脱穀したものだから、玄米の皮に傷がたくさんついていて、水分が浸透しやすかったのだろう。 ここで改めて確認しないといけないのは、 昔の玄米つまり、庶民や武士がたべてきた黒米と今の玄米とは違うということだ。 今の玄米を2、3分ついたものが、黒米ということになるだろう。


他参考資料;
加藤直樹 ほか「麹菌においてマイコトキシン生産を防ぐセーフガードとシクロピアゾ
ン酸生合成機構」 JSM Mycotoxins, 2014;64:197
https://www.jstage.jst.go.jp/article/myco/64/2/64_197/_pdf/-char/ja
 コウジ菌Aspergillus oryzaeはアフラトキシン類を作るAspergillus flavus が家畜化し、アフラトキシンを作らなくなった物。

厚労省 「食品中のアフラトキシンに係る規制について(案)」 2010年
https://www.mhlw.go.jp/shingi/2010/05/dl/s0518-10c.pdf
 厚生労働科学研究による調査(2004〜2006年)によれば、アフラトキシンが輸入穀類から検出されており、ココアの7割、 チョコレートの半分以上、ピーナツバターやはと麦は3割、ビスタチオは2割、そば粉やコーンは1割と報告されている。 その一方、米は93検体から1つも検出されてない。

中島隆「穀類かび毒低減のためのGAPの役割」植物防疫2006年60巻11号p539
斑点米などから、カビ毒のニバレノール(NIV,nivalenol)や、デオキシニバレノール(DON)が検出されている。 これらのカビ毒の発ガン性は確認されていないが(Zingales2021)、吐き気や頭痛をおこす。 また斑点米の混入は家畜の食欲不振の原因ともなり、カビ毒の影響が考えられる。
コメント:
・ 論文中の「我が国では農産物のアフラトキシン汚染は確認されていない」は古い情報(農水省 2012参照)
・ アスペルギルスが作る毒素としては、アフラトキシンとシクロピアゾン酸 (Cyclopiazonic acid, CPA、低毒性) が知られている。 ニバレノールはフサリウム菌の毒素。

農林水産省 米のカビ汚染防止のための管理ガイドライン(2012年2月29日公表)
https://www.maff.go.jp/j/syouan/seisaku/risk_analysis/priority/kabidoku/
日本でも、2011(平成23)年に、国内で生産された米が毒性の強いかび毒であるアフラトキシン類(アフラトキシンB1)によって汚染された事例が確認されています
農林水産省が実施した穀類乾燥調製施設の調査で、塵の中に、アフラトキシン類を作るかびが存在した。

論語
http://www5f.biglobe.ne.jp/~mind/knowledge/classic/rongo010.html

 

渡辺昌監修 『医師たちが認めた「玄米」のエビデンス』 キラジェンヌ, 2015.2


Aspergillus flavus株の半分が毒素を作らないと報告されているが、その1つが昔、家畜化され( Chang and Ehrlich 2010)、 さらに、穀物を分解する力が、より強いものがヒトの手で選別されてきた(Gibbons 2012)と考えられている。

Chang and Ehrlich.  What does genetic diversity of Aspergillus flavus tell us about Aspergillus oryzae?  Int J Food Microbiol. 2010 Apr 15;138(3):189-99.
氷河時代は腐敗菌として、他の菌と激しく競合しながら生活していた Aspergillus flavusが、草原や農耕時代となって、毒素産生の重要性が低下して、毒素なしの物の割合が増え、それを人が家畜化したという仮説。

Gibbons et al.  The evolutionary imprint of domestication on genome variation and function of the filamentous fungus Aspergillus oryzae. Curr Biol. 2012 Aug 7;22(15):1403-9.
コウジ菌Aspergillus oryzaeと有毒なAspergillus flavusの分化について。  人の手による継代培養で、穀物を分解する力が、より強いものが選別されたと考えられる。

Rosmana et al.  Fungi associated with Paraeucosmetus pallicornis causing apparent symptoms of toxicity in rice grains and rice seedlings.  Int.J.Curr.Microbiol.App.Sci.2014.3(2): 407-414
https://www.ijcmas.com/vol-3-2/Ade%20Rosmana,%20et%20al.pdf
斑点米にカビのAspergillusやGliocladium が見つかった。

Zingales et al.  Occurrence, mitigation and in vitro cytotoxicity of nivalenol, a type B trichothecene mycotoxin - Updates from the last decade (2010-2020).   Food Chem Toxicol. 2021 Jun;152:112182.  
ニバレノールの発ガン性を支持する十分な証拠はなく、IARC group 3に分類されている。
コメント: 2021年の知見

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