GALE【313】
軍のクレアからソラ港に移動してラプチアナ隊専用船に乗り込む。
隊員たちが続々と乗り込む中、セシルも入って行った。
隊員(と補佐)用コンパートメントの扉を開けるとデスクについていたロディリウス・ザクロー1曹が立ち上がって、おはようございます。と言って一礼した。
「おはよう...何か変更あったの?」
PCを弄っていたロディリウスにセシルが訊いて、モニターを覗き込むとリータスの顔。
セシルの顔の見えたリータスが、おはよう!ロディリウスにセシルはまだかと聞いてた、今。と言った。
セシルは、ああ。と言ってロディリウスと代わり―彼はセシルから荷物を受け取ってその場を離れて行った。
『今回は同じ任務じゃなくて残念だった!』
「はは、まあそうだが、」
『近くに居るんだよっ!あいつが。だから、もしかして』
「え...どういうことだっ?!」
『しっ。コンパートメントだろうが声は外に漏れる。静かに聞けっ
今は第7アサイラムの近海だ。第2アサイラムまで自国輸送船の
護衛の護衛ってヤツで隠れながら護衛して無事完了。したが帰還
に舵向けたときザーインに冥土持ち込む海賊がいるそれをソラ中
で駆逐しろと言われてここまで追ってきた。らっ!あいつが俺の
目的の海賊がっ!目の前...突然姿現して冥土海賊を木っ端微塵に
っんで、直ぐ姿を消したんだが、指揮官がそいつを追う.と...今っ
追跡している。ラッキィだ。だから...俺... 』
「本気かっ?!」
『運よかったら...な。このままさよならだ』
「リータス... 」
『まあそう簡単にいかないだろうよ。けど連絡取る暇もないかも
だから...で呆気なくディノウヴォウに戻ったらまた宜しくっ!』
「あ...はは。どちらを願っていいのか悩むね」
『そういうことだ。俺が蒸けたら補佐はディノウヴォウに戻る
詳しいことは彼に訊いてくれ。じゃあな、お前も頑張れよっ』
そして、モニターからリータスの顔はふっと消えた。
「セシル」
ラプチアナ隊に入ると軍位では呼ばない―皆名前で呼び合う。
「リータスは何て?」
「聞こえていただろ?」
「でも意味がわからない」
「ソラに散るかも だと」
「え」
「何を驚く?私だってそれは有り得る」
「それはそうだが...セシルがその気なら俺も戦闘機に乗り込む」
「おお、ではロディが便乗できない方法を取ろう」
「? ...何その本気。ゲイルが泣くだろ」
「ふふ。死にはしない」
「大気圏内飛行機じゃないんだからソラ中で撃破され
たら御終い。悪い冗談はよしてくれ。洒落にならん」
「私を見縊っているのか?不利になったら逃げ切るは知ってる」
「頼むよ、出発前にヤな電話しやがって」
「はは。それがヤツのいいところだ」
ラプチアナ隊の指示は陰王だが、現場の総指揮は第1番隊隊長でもある柔和な面持ちの初老の男ビルジニ・ムジノイ将軍。
ジークの重臣武官のひとり。
重臣ならギーガとレッディ王が同一人物、敵か味方かわからない【真夜中の騎士】の存在に海賊抗争の意味の全てを知るラキス。
目下、彼はリータスの番隊も乗せた第1番隊艦で突然、遭遇した【真夜中の騎士】を追跡中。
【真夜中の騎士】は移動するときも襲撃するときも救助するときも殆ど不可視であり、その姿を可視状態にすることは滅多にない。
のに、先程は可視で現れた。その上、その後直ぐに姿を消したのにこちらに存在位置の探知が出切る古典的な発光をしている。
追え。と言うことか?そう思ったムジノイ将軍は発光源を追う。
そして3日後―【真夜中の騎士】の位置に辿り着いた。
決して人の目前に可視で現れない【真夜中の騎士】が、その真っ白の流線型輪郭に巨大な5本のマストを飾りのように備えた帆船の姿を、ムジノイ将軍以下、ラプチアナ艦の前に、悠然凛然と立ち阻むように突然、見せて来た。
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