【甘露雨響宴】 The idle ultimate weapon

かんろあめひびきわたるうたげ 長編涅槃活劇[100禁]

FIND【339】今ご覧の通り

2009-10-16 | 3-3 FIND




 FIND【339】 


「ありがとう。ふふ。フツウ!まだ酔ってないもんん」

「酔ってるよ。眠そうだ。二日酔いでスキーできなくなるよ?」

「出来るわ。私はいいから向こうに行って踊ってきたら」

「自棄酒だろ?何かヤなことあったの?」

「そんなことないわ?楽しい旅行、明日からスキー!」

「そうは見えないけど、」

「 ...そういうことじゃないのよ」

何で飲み進めたか貴方に言えるわけ無い。

クリスティーナは段々鬱陶しくなって愛想笑も面倒になって来る。

他の話題に替ようとしたが、今まで散々ニコルのプライベートの(一般に質問出来る範囲の)隅まで訊き捲って会話していたので、何も思いつかない。

スキーの話を深めるのもそんなものは喋るものではなくスルものだから話は馬鹿、お酒とか経済の話振って薀蓄垂れ出されたら逃げられなくなるし―と思って、あ。と思いついた。

「クミエルとルコについて考えてたの」

「え?」

「ずっとディノウヴォウだから他の区や国、地方のことはよく判ん
 ないけど、何で領主は領主指名?それとも血族統治?クミエルは
 血族統治でしょ?で、ルコも町長は血族統治?」

「あ...ガイドだからそれを説明してくれって?そうだね!
 それ最初に解説もいい!そうかそれって知らない人も」

「そんな話題最初にされたら興醒めよ?スキーに着たのに」

「ハハ、何?俺にアドバイスくれたんじゃないの?」

「アドバイス?そんな殊勝なこと...私が知りたいだけ」

「やっぱり酔ってる。大丈夫?」

「話逸らさないでよ?知らないの?説明出来ないの?」

出来ないでしょ?尻尾巻いてとっととどっか行って!

思って切り出した話題だったが、ニコルは解説を始めた。

「最近、クミエル領は変わってね。ここまで安泰治安になった領は
 珍しいんだ。領主の力の差らしい。だから他の領は知らないけど
 クミエルはディノウヴォウ王の軍が領主に従う」

「え゛そうなんだ。あ、観光客が多いから外交頑張った?」

「はは。そうだね。かもしれない。昔はその全く逆だったよ」

「逆?」

「ドラッグに売春、そういうの沢山あったから沢山の人が寄ってた
 清潔になった途端、客が急激に減った。ところが、クオラたちの
 ような健全で美しいスキー客徐々に増え出して今ご覧の通り」

「じゃあ...悪い人たち、いないんだ?」

「昔は警察汚職も酷かった。けどそれも一掃された。今は昔の
 ようにそんなことしようと密談だけで不思議と声掛けられる」

「誰に?」

「特殊部隊。3年前から取締が厳しくなった。それ専門の」

「専門って...マフィアに関わるようなことしちゃダメって?」

「そうそれ。人攫いも多かった。こうやって夜に繁華街に出た
 旅行者は男女関わらず軟派されて暗闇で体か臓器が売られて」

「それ... 」

「だから俺たちみたいなガイドの会社が沢山出来て配備されたけど
 お客さんに口喧しく夜出歩くなと言っても一面銀世界の夜の街は
 楽しそうで...そんなこと言わなかったのは、今はそんな心配ない
 から。旅行者同士のトラブルは防げないけど」

「わあ...ぞっとする.......そうだったの。安心の町なのね。旅行
 ガイドに描けばいいのに。どこよりも安全なスキー名所って」

「いいんだよ。クミエラは金持つ領だから。これ以上客が増えると
 地元の人数が小になって治安は行き届かず自然が荒らされる心配
 が出て来る。現状で何とかセーフ」

「成程...お金持ってるって?」

今日案内したじゃないか。

諾威中クミエル領は突出して羊毛とチーズで潤っている。

それだけじゃなくて、産油している。雪降温度の海藻から上等
石油。製油工場は秘密地下室。そこは軍人が沢山いて厳重警戒。

ここは3年前から至れり尽せり富の領だ。

辺境町ルコはスキーで稼げてるし他も産業ひとつに絞って熱入。
今の血族5代目領主になってからね。

父親時代は特に酷かった。生産向上なく消費ばかりで失業者や
自殺餓死、さっき話した事件は山のようにある危険な観光田舎。

俺はそのとき移住して来たんだけど、それはどこに住んでも同じ
と思ってたから...こんな天国みたいになるとは思ってなかったよ。

ラドミール...凄い。融資必要ないじゃない。現金で潤ってる。

「スキー出来て色んな人と友だちになれて治安よくて...幸せね」

「でも、大きな厄介問題が...領主も町の人も解決出来ない」

「え...何?」






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