【甘露雨響宴】 The idle ultimate weapon

かんろあめひびきわたるうたげ 長編涅槃活劇[100禁]

FIND【352】海(そら)に集う輻(や)

2009-10-16 | 3-3 FIND




 FIND【352】 


「アラン、船長、だったらあれ、キーワード。100年後の表記」

「見付かるのが100年後だと?」

「100年眠り姫 とか」

「勝手な憶測を口にするなっ100年なんて!」

「俺たちにはたいした時間じゃねえ」

アランとミュラーが言い合っていると、ギーガが、有り得る。と言った。

「船長、」

「違う21日!俺の戴冠のとき、不老不死の始まるとき21日
 眠った。再生のための体の総入れ替えみたいな意識不明」

「クリスティーナもそれだと?」

「リリーがそれを?クリスティーナは不老不死になってる」

「そうだが...言い切れないが...これだけ捜しても..見付からないなら
 放っておいても21日後にはネックレスが反応したりGPSが勝手に
 動き出すかもと...思った。21日間は何をしても見付からない」

「 ...クリスティーナの方から信号を送ってくる?」

「クリスティーナは連絡取りたがっている。この前..連絡してきた
 ときのログは..デグがSPを修理したではない。クリスティーナが
 手に取ったことでSPが治った。俺と同じ。連絡したいと..念じた
 意識が完成させた。だから...今連絡がないのは...眠っている」

「しかしもし水中の岩に嵌って 死んで蘇生を繰り返してたら?
 船長だって俺たちだって有り得るその可能性有で捜さないと」

「俺たちがそうなった場合どうするよ?ラギする。クリスティーナ
 だってそんなことになったら必死で連絡を取ろうとするっ!何か
 信号出す。それは俺にではなく...アランかニコルだろうが」

4月16日までクリスティーナ捜索を一旦打ち切る。

ギーガの決定は捜索に関わっていたクルー全員に通達された。






捜索休止を知ったアレックたちが、ラドミールの許に戻った
アランを捕まえて、どういうことだっ?!と食って掛かった。

アランはアレックを睨んで凄み返す。

「よく聴けっ俺は王直下兵だ。何で俺がクリスティーナを預かった
 か!王直々護衛しろ命令受けていた。王は『リーベ・フロッス』
 同様『シシィ』も大切に思ってる。今回は王命だ。王はみすみす
 捜索を止めろと言ってない。王の考えが我々に解るかっナールで
 ある君たちにラキスの俺が事実を言う必要などない。だが君たち
 のクリスティーナ嬢の思いに免じて話した。以上。17日から再び
 捜索開始。君たちがここで待っても仕方ない。キシャンに帰れ」

アレックは失言を謝罪して避難所を手伝って待つと言った。

アランは了承して避難所までの案内をつけて8人を送った。

アランだってギーガの決定に納得したわけではなかった。

クルー皆そうだった。その上、ラドミールもアランに反論した。

しかし、船長命令は絶対―確かにそれ以外は考えられなかった。

皆まんじりともしない気持ちを抑えた。

16日間を洪水現場の復旧と避難所の手伝いをして遣り過した。






ギーガはキシャン城に戻り―ガルーラの常務を送る。

毎夜Nクルーの瞑想室でクリスティーナを思った。

21日眠りについたとき、先王が心尽くして導いてくれたように。

丸く滑る笑と感覚素直の憤怒の元に慈雨と晴天を呼ぶ龍牙晒さず
清濁合わせて量となす水の如く、姿形は、環境に順応して変容し
我意を持たず、浮遊する光の玉の自由を叡智りて
天地四方に造られた壁を柔く擦り抜け山から谷に水の落ちるよう
真実も女の乳房の谷に男の顔を埋めて理の広まる。

車軸に無数の輻(や)の寄る如く
理はその肉体に無限の旅から戻りくる。






クリスティーナは温かい泥渦に包まれていた。

誰かが―またあの男の人が私を呼んでいる。

誰...その顔を知ってる。心地よく酔ってしまう甘いその声も。

気付いたときは陸地の上―真っ白い雪が一面覆った草叢。
相変わらず素っ裸―ぞくっと寒気が走って身震いをした。
目前には大きな川があって未だ激しい速度で流れている。

打ち上げられた...?






FINDもくじ FIND【353】につづく。





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