ALLION【126】
自分の好みのお酒をアリオンが知るはずないのに、何て気の利く!と歓喜した途端、クリスティーナが座敷好き日本料理好き日本酒好きとあの夜に我侭放題言った。とアリオンが笑って言った。
記憶のないあの夜の話は避けたいエヴァは別の話を振った。
「それで?どうしてこんな時間?」
「お腹空き過ぎで機嫌悪い?もうマリアに戻るから方々で捕まって
カレフが助けてくれなかったら夜も越してた。本当に悪かった」
「まあ、いいわ、これで夜になっても連絡なかったら
3日くらい口効かなくて、あの家から追い出したわ」
「それは勘弁願う、どっちも辛い」
「いいわよ、冗談よ」
「いや、本当にしそうだ?」
「するわよ、でも仕事なら邪魔しない。カレフが助けた?」
「あ...君が僕とマリアに一緒に行くことは話した
でも君の正体や家のことは何も...言っていない」
「それはいいけど、私カレフに会いに行く」
「一緒に明日の夜はどう?僕は明日のマチネ招待演奏があってそれ
に出ればディノウヴォウは終わり。その...よかったら、マチネも
来て欲しいけど。退職済んだんだろう?アパートの引越しは?」
今朝早々アパートは引払ってマリアの自分の部屋は直ぐ住めるよう住居空間を整え―『オズ』に行ってセレスタインに会った。
まだ仕事があるはずのアリオンより先にマリアに戻るつもりでいたが、これでは引越し手伝うとか一緒に帰るとかになりそう。
「アパートはイーギンたちがやってくれる。荷物ないし
私は明日マリアに戻るの。『シシィ』の準備もあるし」
と言ったものの、この先を考えてカレフに会うのはアリオンと一緒の方がいいのかも。と思った。
「そうか...なら、カレフとは明日の朝に?僕も朝にしようかな」
「無理あるでしょ?リハもあるのに。いいわよ、マチネも
付き合う、カレフのところも夜に一緒に行きましょう?」
「クリスティーナ...ありがとう」
「だから、付き合う よ?観に行く じゃないわ」
「え...チケットはあるよ」
「いいわよ、私は控室にいる」
アリオンは思いがけず嬉しかった。が、エヴァは、アリオンの演奏聴くもんですか!と思っていた。
お酒に酔うもんですか!と思っていたことと同じように、またアリオンのヴァイオリンに包まれればどうなるかくらい、判っている。
今もカレフのことで少し譲歩したのにこれ以上譲れない。
「それじゃあ、今夜はホテル?だったら」
「だったらアリオンの部屋に?」
「あ、まあ、そう」
アリオンが切なそうな表情で見詰めて来て、それに、一瞬見蕩れてエヴァは途端胸の奥が痛くなった。
「やだ~だって襲われる」
アリオンは呆気に取られて―思い出して笑った。
そう言えば、あの日からこういう子だった。
「難しいね?襲うといっても襲わないといっても
そこは角が立つ ようだ?クリスティーナには」
「うふ。難しいわよね?同居人だからはっきりしとかないと」
「それは...何の話?」
「生活よ。アリオンは私に干渉しないって言ったわ」
「しかし、君は僕の気持ちを知ってる」
「あら、生殺しはしないわよ」
「そういうことじゃないよ」
「そお?それ大問題でしょ?広い屋敷よ、メイド雇ってる
でしょ?仕事で忙しいと掃除も食事もひとりで出来ない」
「え...ああ」
「何人いるの?」
「男性8人。庭も含めて雇ってるから」
「たった8人?そんなんで済んでるの?え、男性だけ?」
「独身でこんな仕事、女性を雇ったら...女性集まれば色々揉めるの
知っている。あ、クリスティーナには、男性だけは考えモノか」
「いいわよ、気にしなくて。でも彼らも私に干渉しないで欲しいの
私は勝手にやるわ。私は自分の部屋以外は使わない...トイレバス
あるし。食事はダイニングに出るけど自分でやる」
「待って?僕も毎日家で食事するわけじゃないけど
家に居たなら一緒に食事くらいしていいだろう?」
|
|
|
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます