ALLION【49】
リツコもギーガに恐れは感じなかったものの今になってこのヘンな服装の人たちが彼を悪い心で狙っていると気が付いて必死。
「社長!助けて下さいっ!」
「あ...うん、」
イーギンはリツコの味方―漂流してきた男、船長のエモノなんて『FALCON』社長としては関わりたくもないが。
「あ、おい、社長、うん、って何だ?俺に引き渡せ!」
ギーガがイーギンとリツコとは充分距離を取って―言った。
「船長、中を取ろう。この男をクリア機使わずフツウに健康に戻す
それまで俺が預かる。それでリツコの 助けた が完了。その後
はこの男が好きに行動するだろ?」
イーギンの言葉にギーガはにこりとした。
「いいだろう。それまで待とう」
一体何がしたいのか、リツコの前では自由に喋れないので、結局イーギンにはさっぱりわからない。
それでも、こいつが元気になったら関係ねえし。とイーギンは昏睡のように眠っている彼の体を抱き上げようとしたそのとき、ギーガが、社長。と呼んだ。
「何だ?」
「社長はいつになったらリツコと結婚するのだ?」
「!」
イーギンとリツコは同時に驚いて―ギーガを見た。
その後ろでクルーたちがやっと納得してくすっと笑った。
本当は腹を抱えて倒れ転がって笑いたい。
イーギンはリツコの前で下手に返答出来ない。
無言でギーガに問うように笑って―固まった。
ギーガもまた無言でイーギンににこりと笑う。
リツコはひとりでドキリとしてカッと火照っていた。
「社長がバアルでリツコを見かけて、リツコを是非にと言ったから
今リツコは『FALCON』に今いるんだ?もう直ぐ産まれるという
のにまだ結婚しないのか?いやいや、兵隊たちの間ではリツコは
既に社長夫人と言っていてふたりは結婚していると俺たちは聞い
たが、書類はまだなんだよね?」
な...何を.........船長!
「リツコも社長に愛されていることは判っているのだろう?リツコ
からそれに気づいて言わなければ、社長はどうも恥ずかしがって
いるようだ。自分からは...晩熟のようだからね」
リツコは更に頬を紅潮させて気持ちは慌てていた。
そんなリツコも目に入らず、イーギンはリツコの前ではギーガを取っちめ攻め問質すこと出来ず、ただ無抵抗にギーガの独占指揮の法螺が続くのにイラつく。
「いや、これは失礼。本人が言わないのに
横から言うは無粋かな。許されよ、フフ」
く...このっ...!
ギーガに向いて今にも牙を剥き出しそうなイーギンの顔はリツコにはすっかり照れている社長の顔に見えて―自分も恥ずかしくなる。
「さて、早くそれ持ってってくれないと塀から兵隊、海から連絡船
見つかって今度はあっちに取られては困る。我々もここ、社長の
愛するリツコに免じて、さっさと暇致そう」
ギーガはにこりと笑って従えたクルーを連れ、わざわざ王様のような偉そうな身振りをしてレンガ塀の左ゲートへ歩いて行った。
イーギンは噴火しそうな気持ち抑えてじっと見送る。
ここで...今から...リツコに何と言えばいいのだ...?
船長の、それで得たい目的は何なんだ...?!
イーギンは彼を抱き上げてリツコに、戻ろう。と声を掛けた。
リツコはイーギンの顔が見れないままイーギンに付いて歩く。
「あ、病院は俺が車で送る...ひとりでバスがいいのか?」
「いえ、あの、お願いします。すみません」
淡々と何の抑揚もなく話すイーギンの言葉にリツコは社長は照れていると感じて―嬉しく思えた。
途中、イーギンが転がした安全第一ヘルメットをリツコが拾う。
そしてイーギンの腰辺りのツナギの布を握って足元の砂でバランス崩しそうになるたびにそっと縋った。
イーギンはこっち(リツコ)もわけがわらない。
リツコの場合、話をして聞き出せたとしてもそれが本当の気持ちかどうかも定かじゃない。
参る...。
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