KEITH【133】
こちらの地形は『Golden wheat』の屋敷を挟んで西に大型船の出入する港、東は浅瀬と岩場がるので海水浴場、サーファーもくる。
海で儲かることは何でも手に収めているといった感じだ。
ダイアンは『Golden wheat』に近づくにつれて見えてきた空と隣接する線のような海面に、あれ何?!海?海なのっ初めて!と感激してはしゃぎだした。
夏になったら海水浴に連れて行くかと思っていたが、夏を待たずに海に出会えた。
「パパの農場と同じだ、この辺は全ておじさんの土地だ
ウェットスーツ着たなら泳げるよ?海に入ってみるか」
「入るっ、海っ海っ!!」
車内で、さっきまで、ママは私のお手紙読んで元気になったかな?と言っていたが、もうダイアンの頭の中は海だけになっていた。
俺の屋敷が緑と泥と天候に味わい深い農園らしく敢えてアンティークな外装と内装の装飾、設備ハイテク に比べて、トルニアの屋敷は白と銀で統一された無機質でスタイリッシュな豪邸、庭には大きなプール。南国に別荘 と言うより、都心の豪邸のソレ。
配置図はうちと殆ど変わらない。
パールが住むこの母屋から北東に子供たちの住む寮がある。
それもまた公共施設かと思えるほどの大きな建物だった。
寮といっても個室はなく、皆で助け合うように机は広間の端一列にずらっと並んで夜は雑魚寝。
本のぎっしり詰まった壁のある図書館みたいな部屋や楽器の部屋や絵画部屋、工作室、化学実験室などもあり―それぞれが広い部屋。
ひとりになって集中して勉強したいコは反省室という個室に篭る。
その部屋を見てダイアンが過剰に反応したが、鍵なんてないよ。と言われて、よかったあ。と言った。
けど、鍵がないなら。とダイアンが質問し掛けてパールが笑った。
「沢山子供がいるんだから喧嘩したり悪戯したり悪いことするコは
いるよ、そして怒られる。その後皆自分からここに入るよ。てか
いじけて篭る。んで、お腹が空いたら出てくる。そんな感じだ」
「叩いたりしないの?」
「おじさんたちが叩いたら死んでしまうよ。怒るだけ」
「わあ...おじさんが怒るの?」
「そうだね。ダイアンみたいに皆にはパパがいないからおじさん
だったり他のおじさんだったりお姉さんだったり...ダイアンの
うちみたいに沢山の大人の人が居るから皆がパパママ代りだ」
「そうかあ... 」
俺たちには判らないが、ダイアンなりに考えている様子だった。
子供の姿が見えないので、いるんじゃなかった?と訊くと、ダイアンが来ると聞いて先に海に行って待っている。とパールが言った。
すると直ぐダイアンは、いくいく直ぐ行くう!と言って黒服たちにスーツを着せて貰って―皆の待つ海に連れて行って貰った。
喜んで消えて行ったダイアンを見送ってパールが、ひゃひゃ...。と笑う。
それがパールの地の笑なのか―妙に気になる。
「俺にまでその威圧的な笑、しなくていいぞ」
「はひゃ、人分けて笑えるか。王様やってるときに身に付けた」
「王様?」
「そらまあ古代の話だ...しかしパパか。突然でよく遣れる」
「クルーに負けるつもりはない。何でもやる」
「そうか。ユリウスもいい目利きだ」
床から天井まで総ガラス張りの透明壁から青い海が全貌出来る。
白い大理石のリビング―ソファに座って海を眺めながらパールと話していると見目美しい若い女性がボディコンシャスな原色ドレスを纏って珈琲を持って来た。
そして、向かい合った俺とパールの真ん中のテーブルに置いた。
「あ、紹介しよう。アスカだ。俺の嫁。っても嫁のひとり」
女性は嬉しそうに笑って、こんにちは。と言って下がっていった。
「嫁のひとり?」
また俺の知識や概念にまるでない話が始まるのか―。
「ここにはお前んとこみたいな純心メイドはいない。皆 俺の女だ
俺は死に掛けていた元娼婦だけを拾い上げてここに置く。お前ん
とことはわけが違う。彼女たちは競わせるほどいい子になってく
今もじゃんけんして勝ったんだ。ひははっ」
「じゃんけん...平和だな。いいなそれ」
「阿呆う、掴み合いの喧嘩もやってるよ、俺は無関知。兵も見てる
気が済んだら収まるから。掃除すんのは自分らだしな?てなこと
でこの屋敷にはモノがない」
「はああ?そういうことで?」
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