ALLION【341】
「 ...あっ、のろまとんま...あれ何だっけ?」
エヴァがリッツに訊ねて―リッツはぶんぶん顔を横に振った。
「何よ其れ、あ、うすらとんま!」
ギーガは何か意味不明を言ってくるエヴァをスルーして纏わりつくアリアを他所に、徐にカウンターに寄って―椅子に座った。
「会いたかった、そこに居るのはリッツじゃなくて俺のはず」
「ギーガ、愛してるわ、だから会う必要もない」
それはわかる。わかるけど今はそんなものは除外したい。
「 ...アリオンは」
「まだ帰らない。帰りたいけど、違うの」
何が?とギーガもリッツもエヴァを見た。
エヴァは照れ臭そうに微笑んだ。
「 ...だから、リッツの家を訊いたの」
「え」
「アリオンは許したわ、判るから。でもまだ溶けないの。気持ちが
だからアリオンに戻ること考えたけどやっぱりまだ無理だって」
「 ...それでリッツは何?」
「リッツはいつも他所向いててくれるから」
「おお、船長、俺は構わない」
ギーガはリッツを一瞥してエヴァに、どうしたい?と訊いた。
「 ...わからない」
ギーガもリッツもそれは想定内だったが、アリオンの気持ちの方に覆い襲われる。しかし、気持ちがまだ溶けていないというエヴァに何を急いても、何も聞こえない。
「リッツ、付き合ってくれる?」
リッツがギーガを見遣るとギーガは静かに頷いた。
「しかし条件。マリアに住んでいつでもアリオンに会える
距離だ。リッツと同居も何も全部、アリオンには教える」
エヴァは異論なく頷いた。
「俺だったら疑う!」
「疑うも何もアリオンは何をした?」
「リッツ、ギーガの言う通りなの、私フェアになりたいの」
「え...浮気したから浮気すんの?」
「そうじゃなくて、贖罪に覆われているならそれを払拭して欲しい
でないと、今後フェアに付き合えない。ずっと私に負い目感じて
ごめんなさいばかり思って...老人になるまでずっとそんな関係?
それ嫌。自分を棚上げにしてくれるなら私だってリッツと暮らす
なんて言わないで直ぐ帰れる」
「ああ.......日干しの上に獄門」
「それが厭ならエヴァと別れることを選択しろ だな」
「私の気持ちは今言ったことが全て。今アリオンがどう思ってるか
判らない、リッツが派遣されてブリッジ皆、ギーガがこうやって
私に構うの見てるとだいたい判るわ....今のアリオンと一緒に居て
何が見えてくるか考えたら それでは.何も...上昇しない。戻った
戻って..きてくれたって...ただ一緒に居て幸せ は違う...1から愛
したいの。フェアになって...時間が欲しいアリオンが好きだから
アリオンに戻っても私の中のアリオンが霞んだままではまた何度
も出て行くと思うの」
「 ...船に...そうだったように?」
「 ...うん」
「わかった。それ、俺も付いて行くよ」
「リッツ...ありがとう」
「足はどうする?」
ギーガが訊いた。
「これ、逃げないって印にならない?不自由だけど動けない
わけじゃない。アリオンの許に戻りたいのよ、だから人質」
「はは、その足先が人質に捕られたと?誰に?」
「ユリウス」
「え、俺?」
「ユリウスはアリオンの味方なの。悪いのは私」
「 ...エヴァ」
ギーガとリッツはエヴァが何を考えているのかさっばりわからないが、いずれはっきりすると思ってそれ以上を訊かない。
エヴァは実のところ、リッツよりアリアだった。
しかし、アリアと共に居るには自分は許容量が小さいと思えた。
動物と共に居るのは難しい。
アリオンも何もかも無条件に包めるような本当に優しくて強い人間にならないと...今の自分では動物と居られる器はない。
エヴァは渋々―アリアを連れて行くギーガを見送った。
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