【甘露雨響宴】 The idle ultimate weapon

かんろあめひびきわたるうたげ 長編涅槃活劇[100禁]

GALE【259】楽しい密着時間

2010-07-12 | 5-1 GALE




 GALE【259】 


「違うっ」

「 ...どうしたんだよ?」

「訊くな?セシルと寝たってことはそういうことだ」

「 ...しかし明日も大丈夫?」

「これから毎晩に決まってるっ!」

「そして6時間経つ前にこっそり抜け出して俺を抱く」

「やな表現だなそれ?そんなに俺とヤりたいのか?」

「違うっ」

「ザーインに行く前に女性を紹介してやろう」

「余計なお世話だ。お前のように器用にシゴトとデート両方出来ん
 あのな?お前もそうだったろ?運命の人は天から降って来るんだ
 待ってる。余計なことするな」

「 ...運命の人...くふふ」

「密着して気持ち悪い笑いするな。直で振動が伝わる!」






「おはようっ!今日も晴天だっ」

セシルの部屋に入るなり、天井高くから下がっている3つの大きな遮光カーテンをシャッと開けてゲイルは、まだ眠っているセシルに抱きついて嬉しがってその頬にキスをする。

カーテンを全部開けたものの冬の早朝の外はまだ真っ暗。

「 ...何時だ?...ゲイルは早いなあ?う。その臭いは...。」

「そんな傷とっとと治したいからな?薬の塗布時間は守る!」

セシルの布団を剥いでガーゼを取って―作業しているゲイルを見つめてセシルがくすっと笑って、元気だなあ。と言った。

「そんな、夕べから晴天しかない人生に変わったのに?」

「あはは...うん.......私も嬉しい」






その日その瞬間から、アーサーがそこに居合わせたなら両手で目を覆ってしまいたくなるようなゲイルの実に子供っぽいセシルを寸分も離さない密着沿行(見ている側は実に閉目!)が始まった。

セシルはゲイルのそれを最初は慣れず照れて戸惑っては笑いながら撥ねていたが、ゲイルの我慢強さと執拗さに根負けしたのか、時間が経つなら、嫌がらなり、寧ろ一緒に愉しみ始めた。

ママに付き纏う時期の幼児のようにゲイルはセシルから離れない。

セシルの個人用事、トイレもシャワーも扉前で待つ3日間の始終。

それはセシルの養生休暇のお陰。

もし、負傷してなかったら帰還して即翌日から軍出仕だった。

ゲイルにセシルは自分の天使、婉然才媛にしか見得ない。

傍にいるだけで脳がとろとろに蕩けてしまいそうなほどセシルとの輪郭線がもどかしい。

ああ...永遠密着してられたらいいのに!

それを口にするならセシルは笑って、私もそう思う。と返した。

あ。

フとエヴァの言葉を思い出す。

「俺を愛しているから離れてても平気?」

セシルはゲイルに抱かれ寄って―そう!と言って笑った。

ふたりソファに座って―足元にアリアが寝ている。

アリアはセシルが戻って来た夜にリビングに来た。

やっと安楽の地に落ち着いた、かのように 安心して。

その日からどこにも行かず、飼犬 のように家に居た。

首を上げて自分を見遣り、感謝しろ?というような目をしたアリアにゲイルはセシルを抱いたまま視線を落として―にっと笑った。

薬もしつこく送った写メールも...ああ、お前のお陰だ。

アリアもにっと笑ったかのようにゲイルを見て首を床に落とした。

しかし、その顎はセシルの足の上。

そして耳を垂れて目を瞑った。






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