【甘露雨響宴】 The idle ultimate weapon

かんろあめひびきわたるうたげ 長編涅槃活劇[100禁]

GALE【258】婉然才媛

2010-07-12 | 5-1 GALE




 GALE【258】 


「わ、起こした?ごめ、」

言い終わる前にセシルが軽くキスをして来て、今まで...ごめんなさい。と言った。

何が?と思ったが、そんなことはどうでもいい。

驚き歓喜して即キスを返して抱き寄せた。

セシルが、痛っ!と腕の傷を庇ってゲイルは慌てて身を引いた。

「うあ、ごめん」

焦ったゲイルにセシルがくすくす笑う。

「子供みたいね?ふふ」

「君を抱きたくてしょうがない...わ、失言か。ハハ」

「そういうゲイルが好きだよ」

言ってセシルはゲイルに凭れ掛るかるように抱きついた。

「セシル.......何かあった?」

「やだなあ何も?思ったより大きいんだな...腕が回らない」

「ハハ、今まで俺を異性として観てなかったけどもう違う」

「くく...そうね?そういうことだ」

「しかし何故?あんなに俺を否定してたのに...だって何か怖い」

「ふふ。裏があるかって?何もない、訓練中ゲイルのこと考えてた
 それで...私の..していたことは半端で酷いことだと...なら、いっそ
 別れようかと思ったんだが」

「はあっ?!」

「あはは、ほらそんなんだから無理だろうなと...ふふ」

「セシルは俺を愛してるからここに来た。俺と一緒に
 暮らすことに君は何の迷いもなかったじゃないか!」

「そうだ。だから誤解しないで聴いて。でもこれから離れて...他の
 人たちのようにいつも一緒にはいない。誰もが日常の中で近くに
 いる人を求めるそれを考えると...前向きになれなかった」

「セシルも?日常にいるザクロー1曹を求める?それ違うだろ?
 誰を求める?俺は離れていてOKだと言ったよ...聴いてないな」

「怒るなよ...聴いてたけどゲイルを知らなかったからそれは
 甘んじられないと思って...けど、今は前向きに考えたと、」

「俺を求める?単なる声掛かけられたときの堤防ではないと」

「ふふ...違う、よくわからないけど最初からゲイルをそうは思え
 なかった。自分の感情が分らない。感覚が狂って...あの日に、」

「あの日って、はあっ?!...最初に俺に声掛けてくれた日?!」

「よく判らない。自分の感情を掴み損ねている間にゲイルが雪崩の
 ようにやって来て...ゲイルを除外して自分を確認することに必死
 だった。ゲイルはそんな隙も与えてくれず...でも、否定していた
 ゲイルは調子いいばかりで私を好きだと思えず...否そうではなく
 何を言われても好かれているとは思わず...私は、これからずっと
 ソラで...それでもいいかと...等閑に...最後にゲイルが決める..から
 従おうと...、」

そんなことはどうでもいいっ!

ゲイルはセシルの話は遠景に押し遣ってセシルを抱き締めた。

「聞こえない。俺を愛しているという言葉しか受けつけん」

「ゲイル... 」

くそぅ...。

俺は.......俺が馬鹿だった。

手放したくない余りに保身が先に出て...馬鹿なことしていた。

「セシル...愛してる」






気を利かせていつもよりずっと遅く、夜中過ぎに戻ってアーサーはゲイルのベッドで熟睡―肩と背中に圧と重を感じて目を覚ました。

何だ?と思って体を動かし、後ろを見遣ると、ゲイルが背中に密着して自分を抱き締めている―アーサーは呆れて噴出した。

「な?結局俺の言ったとおりだ。今回はどうして追い返された?」

「違うのだ。わははっ!」

「 ...俺に抱きついて偉そうに。では何故お前がここ?」

「セシルと寝た!...んだが途中でやばいと思い出して6時間経つ前
 にセシルの熟睡見て抜けて来た。腕と足の負傷あるのに俺と寝て
 翌朝傷痕なくなるかも...を忘れてた」

「そんなの、今回は特別調合の薬草だとか何とか」

「幾ら何でも日数掛からず傷痕まで綺麗になくなる薬あるか」

「くっ...しかし...くく...そう上手くは行かんな?ハハ」

「俺は今天にも昇る思いでふわふわで甘い幸せに包まれている」

「俺を抱いてるからな」






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